魔法が使えない魔女は、侯爵令嬢に拾われてメイドになりました ~結婚を嫌がるお嬢様を攫って旅に出ます!~

響城藍

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【ep.16】神様になるという事

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 水属性のドラゴンと契約を終えた後、休息も兼ねて数日間街に滞在していた。
 みんなの心身共に傷が癒えて、美味しいご飯も食べて、次のドラゴンとの契約へ進んで行く。

 今回の道中はモンスターも強くなっていて、みんなのレベルもどんどん上がって行った。
 きっと次の火属性のドラゴンは水属性のドラゴンより強いのだと、2回契約をして来て感じた事。
 だから少しでも強くなっておきたくて、私はいつもの様に先頭を歩く。

「あれ……?」

 気持ちに比例して早く歩きすぎてしまっていた様で、みんなと少し距離が開いてしまっていた。私に追いついたマリアが隣に並んで手を握ってくれた事に思わず肩を揺らしてしまった。

「焦らなくてもダンジョンは逃げませんわ」
「ごめんね、気持ちが先走っちゃって……」
「エマはどんどん強くなっていますわ。だから少し心配ですの」

 私の頬にモンスターと戦った時のかすり傷があって、マリアは握っていた手を私の傷に添えると眉を下げて見つめて来た。
 マリアだって強くなろうと必死に戦い方を覚えて行って、十分戦える位に強くなっている。私の背中を預ける相手がマリアだからこそ、私は全力で戦えるの。
 だけど、それを素直に言うのは照れてしまう。私の中でマリアという存在がどんどん大きくなって行って、だからこそ守りたいと、幸せにしたいと思うの。

「やっと追いついた。エマ歩くの早いんだよねぇ」
「急ぎたくなる気持ちは分かるけど、なるべく離れない様に行動しようか?」
「エマくん、おてて、つなぐ」
「じゃあわたしはシャルルの手を繋ぎましょうか?」
「……こっちの、おてて、レアさまの」
「シャルル……はぁ、仕方ないな。ほら手を出して」
 
 残りの4人も私たちに追いついて、シャルルが私の手を握ってくれた。どっちが子供なのか分からなくなってしまうけど、シャルルはしっかり者だから頼りになる。それにレアの事が大好きなのだというのがいつも伝わってくるの。右手はレア専用みたいなので、レアは呆れながらも手を繋いであげていた。
 
「エマ、わたくしとも手をつないでくださいますか?」
「うん! もちろん!」

 控えめに聞いてきたマリアの手を繋ぐと、マリアは嬉しそうに笑った。
 
「じゃあ僕はマリアの手を」
「姉様……っ」
「ふふっ、わたしの手で我慢して下さい」
「……ソフィアなにその顔」

 ノアがマリアの手を握った事にショックを受けているレアをなだめる様に手を差し出したソフィアは、成長した子供を見る様な顔をしていた。子ども扱いされている気になったのか、不満な顔をしつつもレアはソフィアの手を握る。

 みんなで手を繋ぐだけでとても気分が上がっていく。
 このメンバーだから問題なくここまで来れたんだ。だからあと2つの契約も問題ない位に私は自信を持てた。

「次のダンジョンまでまだ長いけど、みんなで力を合わせて進んで行こう!」

 私の言葉にみんなはそれぞれ頷いた。
 いつまでも手を繋いでいたい。それ位に大切で大好きな仲間と過ごせる日々は幸せだ。

 *

 草原を進んで行って数日。日が暮れる前に野営の準備をする事になった。テントを張って、ノアが作る料理が出来上がるのを待つ。
 誰かのお腹が鳴る音が聞こえて、私は羨ましくなってしまった。

 私は数日前から空腹を感じなくなっていたから。

 それだけじゃなくてモンスターと戦って傷を負っても痛みを感じなかった。
 体調を崩してしまったのかもしれないと様子を見てたんだけど、変わらずに無くなっていくものが少しずつ増えている気もする。
 それに私は歩く速さを含めて、身体能力が今までと比べ物にならない位に上がっているのも感じている。

 それが何を意味するかなんて、聞かなくても解かってしまう。

 ノアが料理をよそってみんなに配っていく。美味しそうな匂いのするシチューを食べて美味しいと感じるけれど、空腹時に食べる美味しさはもう感じないのかなって、少し悲しい様な気持ちになる。

 でもこれが、神様になるという事。

 ノアのシチューは温かくて、美味しい。前にリュシーが私の料理を2番目に美味しいと褒めてくれた事があったけど、1番はノアなのだと初めてノアの料理を食べた時に思ったな。
 またリュシーにノアのご飯を食べさせてあげたい。
 
 神様になれば私の力で幸せにできる人が増えるはず。人間の力では叶えられない願いや夢だって叶えられる。
 それにマリアのこの先の人生を幸せにする事だって、神様になればずっと叶えられる。一生マリアを幸せにできる。

 だから私は、失ってもいいから、神様になるんだ。

 *

「エマ……大丈夫ですか?」

 旅は続いていて、今日はモンスターと戦う事が多くてぼーっとしてしまっていた。
 痛みが無いという事に慣れて来てしまったから、少し考えてしまっていたのかもしれない。

「大丈夫! もうすぐ日が暮れそうだし、今日はここで休もう。今日は私が料理当番だからみんなは休んでいて」
「……はい。手伝えることがあったら言ってくださいな」

 そうして野営の準備をして、私は料理を作って行く。リュシーが認めてくれた料理の腕を存分に振舞って、みんなを笑顔にしたい。そう思いながら出来上がった料理をみんなに渡す。
 私も自分の分をよそって食べ始めると、みんなの様子がおかしかった。私の料理を持ったまま不安そうな目を私に向けてくる。

「あれ……? みんな、どうしたの……」
「エマ……」
「……マリア?」

 マリアは私を心配そうに見つめてから優しく抱きしめてくれた。

「一人で抱えないでください」

 震えながら私を抱きしめるマリアの顔は見えないけど、泣いているのだと判ってしまった。
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