深い森の彼方に

とも茶

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第九章 深まる疑問

9-1

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私たちは店を出ると分かれた。20~30mくらい離れて、なおかつお互いに姿を見失わないように町を歩いた。私がブティックに立ち寄ると彼女は向かいのコンビニで雑誌を眺めた。彼女がドラッグストアで化粧品を眺めていると、私は向かいのタバコ屋の前のベンチでしばらく様子をうかがった。公園で離れた場所に腰をおろした。でもリーダーは現われなかった。
翌日も長身の娘とコーヒーショップで打ち合わせたあと、同じように離れて町を歩いた。やはりリーダーは現われなかった。
「全然現れないじゃない。」
「私たちがこうして行動してるってことお見通しなのかしら。」
「ひょっとしたらそうなのかもしれないけど・・・」
「明日もしてみる?」
「どうせ、仕事もなくなっちゃたしね。」
「じゃあ、今日と同じ時間に。」
彼女と別れた。地下街に降りたが特に寄るところもないので、地上に出て公園を横切って家に向かおうとぶらぶらと歩いていたときだった。
「元気かい?顔色がよくなったね。」
リーダーだった。
「こんにちは、あの・・・」
言葉が出なかった。何でこんなところで急に会ったのかというより、この前別れたとき感じた「抱かれたい」という意識が急に頭の中に溢れてきてしまって、思わず赤面してしまった。
「どうしたんだ。急にもじもじして。」
今まで彼女と色々話していた疑問をぶつけようと思ったが、薄化粧をした美しいリーダーの顔を見るとどうしてもリーダーに対する意識が湧き出してきて言葉が出せなかった。
「ちょっとそこのベンチで休んでいこうか。」
リーダーに促されて公園の噴水前にあるベンチに並んで座った。本来であればカップルが愛を語るのに最も相応しいような場所だったが、女性しかいないこの世界では、女性一人で、あるいは女性同士で何組かが腰をおろしていた。
袖が触れ合うばかりのスレスレの位置関係で、なおかつリーダーの体の温もりが微かに伝わってくるような微妙な距離で、もちろんリーダーの顔を正視できない状態の私はリーダーの黒のタイトスカートに包まれた太ももをじっと見つめていることしかできなかった。
「最近、お友達ができたようだね。」
「ご存知なんですか。」
「お前らのことは全てわかっている。今日も、色々相談してたようだね。」
「見ていらしたんですか?」
「見ているとか見ていないとかは関係ないな。どんなことをお前らは調べようとしていたんだ?」
「ええ、あの、この町のことを・・・」
「だいたい、調べがついたのかい。」
「いえ、まだなかなかわからなくて。」
「まだ、他に調べることがあるのかい。」
「ええ、いろいろと。」
「そうか、色んな人たちとか、調べることは多いからな。」
「はい。」
「なるほど、で、あの友達のことは調べたのかい?」
「え・・・」
「何ていう娘なんだい?」
突然我に返った。よく考えるとあの長身の娘は、長身の娘であって名前を知らなかった。彼女も名乗らず私も名乗っていない。お互いに呼びかけるのに名前を使っていない。そもそも呼びかけることすらしていないではないか。
名乗るどころか自分の名前はどうすればいいのか。今は女なんだから女の名前を用意しておくべきだったのか。あの深い森の向こう側で男だったころの名前はあったけど、名のほうはともかく苗字くらい仮に使っていてもいいのかもしれない。じゃあ、その苗字は・・・ 思い出せない。向こうの世界で男だったときの自分の名前は・・・ 記憶からすっかり消え去っていた。
「お前らは、少しだけこの世界のことを掴み始めたみたいだけど、まだまだだな。」
「あの、私はいったい・・・」
リーダーは立ち上がると私の肩に手をおき、
「あまり無理をしないことだ。せっかく女になったのに。」
リーダーは向こうを向くと去っていった。
私はリーダーの後姿、括れたウェストと豊満なヒップ、タイトスカートから伸びる美しい足に見とれていた。頭の中で疑問に感じたり色々考えていたことは、リーダーの姿をみるとすっかり思考停止に陥ってしまい、頭の中はリーダーのことで一杯になってきて、股間がまた潤ってきたのだった。
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