深い森の彼方に

とも茶

文字の大きさ
46 / 95
第九章 深まる疑問

9-4

しおりを挟む
翌朝、実際に行って確認しようとするところ整理した。
まず、私が最初にこの国に入った城郭と城門。城郭の一部だった小部屋、それは私の男性のシンボルを切断された場所だ。その後、軍事施設の傍らを抜け、住宅地、商業地を経て市街地の外れの学校、そこから下町風の町を通り外れの宿舎。宿舎の向こう側には川が流れ森があった。そのあと、市街地の中心の地下街、地下街の周囲の繁華街、私の暮らすマンション、暫く通ったオフィスだ。
宿舎だけはどこにあるのか分からなくなってしまった。その向こうにある森もだ。学校はどうなのだろう。そして城郭は。
城郭自体、市街地の風景とは似ても似つかぬ構築物だ。それを現在も使っているとは。雰囲気からすると明治、大正時代の大陸の風景か。それに隣接している軍事施設など、昭和初期のイメージだ。ひょっとしたら、もう見つけることは不可能かもしれない。あの宿舎と同じように。

城郭の向こうの深い森は鬱蒼とした原始林だった。恐らく城郭よりも遥かに高い樹木が密生していたはずだ。まず、高台に上がって森を探し、探索に向かう方向を決めることだ。
自宅の一応マンションだ。他のフロアに行ったこともないが、最上階に登れば何か見えるはず。
自室のある5階からエレベーターにのり11階のボタンを押した。ギシギシと不気味な音をたてながら上昇し11階で止まった。扉が開いた。一歩踏み出したがいつもの5階と構造はまったく同じだった。通路は外に面しているが隣のマンションに遮られ全く見通しが利かない。恐る恐る通路を進んだ。各部屋の扉はシンと静まり返り人の気配もない。表札もない。思えば、このマンション内で居住者に会ったこともなかった。そもそもこのようなワンルームマンションの居住者は隣人との付き合いはおろか、住んでいるのかどうかすら関心がない。私も、隣人がどのような人なのか全く興味もなかったが、マンション中の居住者の姿を見たこともなかったというのも不思議だ。
11階のフロアからは全く廻りの風景はわからなかったが、通路の隅にある非常階段が上に続いているのに気付き、上ってみることにした。隣のマンションとの間の隙間にはみ出したような非常階段は鉄板敷きで階下は丸見えのうえ埃だらけ、掃除をしている気配もない。恐る恐る上ると屋上に繋がる鉄の扉があった。ノブを回すと意外なことに開くことができた。
屋上は水道タンクやTVアンテナのメンテナンスにしか利用しないようで、建物の縁は50cmほど高さのヘリがついているだけ。私は隣のマンションとは反対側に目を向けた。何も見えなかった。上空を見ると晴れている。しかし、地平線はぼんやりと霞んで花曇りのような景色、街並みは見えるがその先は全く見えなかった。
何となく予想したとおりの結果だった。
それでもビルの合間に覗くわずかな緑を見つけ、その方向に行ってみることにした。
何度も方向を確認し、そのまま1階に降り向かった。町を500mほど進むとかなり高層のビルがあった。最上階には飲食店が入っているようなので、上って方向を確認することとした。
最上階には、鉄板焼き、中華料理などの店舗が入っていたが、店内はいずれも閑散としていた。店に入らないと外が見えない造りになっているので、方角を確認し洋食店に入り窓際の席を確保しコーヒーだけを頼んだ。
ついさっきまで一応晴れだった天気がにわかに掻き曇りビルはガスに覆われてしまった。25階のフロアなので、ガスに覆われることは不自然ではないがあまりのタイミングにむしろ恐怖を覚えた。それでも、ガスが晴れることを期待し1時間ほど待ったが晴れることはなかった。
やむなく精算して店を出た。レジの店員は私の話しかけることには答えたが、おつりを手渡しするような肌を接触させるようなことはなかった。エレベーターで1階に戻り外に出て空を見上げるといつのまにか晴れていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...