深い森の彼方に

とも茶

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第十三章 もう一人の指導者

13-4

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市街地に入った。自宅まではいかず、商業施設のある地下街の入口で下してもらった。
「お疲れ様でした。ご利用であれば、およびください。すぐ参上いたします。」
走りさる軍用ジープを見送り、地下街に降りた。
あの地下街の管理人が・・・ 
信じられなかった。本当にそうなのか、あの将校はひょっとしたら全くの別人で、管理室にはいつもどおりの管理人が居眠りをしているかもしれない。むしろそうであることを半分期待しながら、薄暗い地下街を歩いて行った。
ドアが開けっ放しの薄汚い管理室を覗いた。誰かと話す管理人の声が聞こえた。「やっぱり別人だ」ほっとしたような気になり、部屋に入った。私に気付いた管理人は立ち上がり振り返った。
服が変っていた。セーラー服だった。スカートのプリーツは手が切れると思われるほどパリッと折れ目が入っていた。上衣のセーラーの襟は濃緑の3本線、そしてタイは美しく
濃緑に輝いていた。
「お戻りでしたか。」
管理人が声をかけてきた。やはり、あの将校は管理人だったのか。
「私より早かったんですか。」
「報告したいことがあると地下街から連絡があったので、ちょっと急いで近道をしてきました。城郭に行ってきたのですか。」
「はい。」
「我が国はあのような状況です。一端をご理解いただけたようで。」
「でも、あなたは。」
「この服装ですか? びっくりされたかと思いますが、まあ世間でいう昇進というか、出世というか・・・」
管理人は苦笑いした。
「軍人としての職務以外はこの恰好で。今も軍務といば軍務ですが、一般人の大勢行きかう街中で軍服はあまりよくないんでね。」
私はあまりの状況の変化に頭が混乱し、そうそうに地下街を引き上げ、冷たい風に吹かれて頭を冷やそうと地上に出た。
地上の公園のベンチはほとんど人影もなく、珍しくわたしと同じようなスーツ姿の初老の女性がぽつねんと座っているだけだった。

私は公園のベンチでぽつねんと座っている初老の女性の傍らのベンチに腰を下ろした。
「基地に行ってきたんだね。」
突然隣にいた初老のスーツ姿の女性が話しかけてきた。
「え・・・」
いったい誰? なぜ突然? 何で知っているのだろうか。
「城郭にも行ってきたようだね。」
初老の女性は顔を正面に向けたままだった。
「なぜそんなことを知っているのですか?」
私はびっくりして立ち上がり初老の女性の顔を覗きこんだ。
え、まさか。ひょっとして。
私と同じようなダークグレーのスーツ。薄化粧の美しい顔、でも歳相応に皺が寄っている。たっぷりとした髪後ろで濃緑色のリボンで纏めている。しかし、既に白いものがかなり交っている。
そして、その顔立ち。もう50歳代、いや60歳ぐらいに見えるが、忘れるはずもない、リーダーだ。
「リーダーですか?」
「・・・」
「なんで、こんな姿に。」
「・・・」
暫く声が出なかった。確かにリーダーに違いない。なんでこのように老けてしまったのか。
私はリーダーの座っているベンチの隣に腰を下ろした。
「いったい、何で。今まで、どうしていたのですか?」
「私のことなどはどうでもいい。それより、基地の司令官の言っていることはわかったか。」
「よくわかりませんでした。あまりに予想外の対応をされて。」
「運転手から詳しい話を聞いたか。」
「まあ、それなりに。」
暫く沈黙が続いた。
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