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記録三十五:アジト内にて〜試練三
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アジトの中は、リーダーが言っていた通り、冷んやりと涼しく、外のジャングルとは真逆の環境でした。
ピチョン…ピチョン…
天井からはしずくが垂れ、通路を湿らせます。
壁には、所々に光る虫の入ったランタンが掛けられており、仄かに青く洞窟内を照らします。
『足下に気をつけろ。
野郎どもはしょっちゅう転んで骨を無くしてる。見ろ。』
リーダーはキノクニの目線を通路の右側に導きます。
「これは…海水か。」
『おう。その通りよ。この水路は海まで続いていてなぁ。
小舟で釣りに出ることもできる。
だがさっきも言った通り、野郎どもが骨をじゃんじゃか落とすもんだから、そこには骨がうじゃうじゃ溜まってやがるぜ。
もしオッサンが骨を無くした時は、探したら合うのが見つかるかもなぁ。』
「私が骨を無くすなどあり得ん。」
『ケタケタケタケタ!ちげえねえ!』
リーダーとキノクニはどんどん地下に潜っていきます。
そして、長い通路を抜けると…
『ようこそ。我らが"亡者海賊団"のアジトへ…
歓迎するぜ。期待のオッサン。』
そこはドーム状の居住空間になっていました。
岩を切り崩して作られた家々が立ち並び、骸骨達が酒を飲んだり肉を食べたり、惰眠を貪ったり、思い思いに過ごしています。
真ん中には大きな塩湖があり、そこでタコやイカの養殖も行われているようです。
『さあ。次の試練の時間だぜ。
オッサン。つかそろそろ名前を教えてくれてもいいんじゃねぇか?』
「…」
『ケタケタケタケタ!
恥ずかしがり屋、ここに極まれりってなぁ!!まぁいいぜ!
それより次の試練だ!早くお前を俺達の仲間にしたくてウズウズしてるぜ!』
「…そうか。」
『ケタケタケタケタ!
そう緊張すんなよ!なるようになる!
お前は海賊に向いてるぜ!
…あっ、おいお前!』
リーダーはそこら辺に寝そべっていた海賊達のうちの1人に声をかけます。
『メガネくんはどこいった?!
オッサンに次の試練を出すにゃあ、アイツが必要不可欠なんだ。』
『ヘェ…そいつが噂の……生きの良いイカタコをありがとうな!オッサン!
ヒック!!』
『礼なんぞはどうでも良い!
メガネくんはどこ行ったんだ!?』
『んが?ああ、ああ、科学者か…リーダー、こっちにゃ居ねえよ。
アイツァ確か地下の研究室で新しいエンジン機構を開発してるはずだからな。
ヒック!』
『地下か…おいオッサン!』
「…なんだ。」
『俺はこの居住区でやることがある!
オッサンはこっから更に地下に潜って、メガネくんの話を聞いてやってくれ!
それが試練三だ!よろしく頼むぜ!』
そう言うと、リーダーは軽く敬礼し、どこかへ走り去ってしまいました。
「…どうする?また逃げるか?」
「…私の存在が知れ渡ってしまっている…ここでは小舟を見つけても目立って逃げられまい。地下に向かう。」
「…せやな。それっきゃ無いな…」
こうしてキノクニは、思惑とは裏腹に、骸骨海賊達を尻目にして、地下へと進んで行くのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
地下は更に暗く、通る海賊もまばらです。
光るキノコが足下を照らしてくれているので、なんとか通路に沿って進んでいます。
「なんや上とは違って陰気な場所やなー。メガネくんこんなとこおったらますます目ぇ悪くなるんちゃう?」
「知ったことか。
それより船か小舟を探せ。この階層にも海へ繋がる水路があるのだ。
それを使って抜け出すぞ。」
キノクニもグリモアも、僅かな明かりを頼りに懸命に船を探します。
そのうち、なにやら広い場所に出ました。
「…あ!あれ!あそこ見てみ!」
グリモアの見る方向には、ヘンテコな機械が搭載された小舟が、山ほど並べてありました。
「ふむ。これは使えそうだ。」
よく見ていくと、それぞれ微妙に違う形の機械が搭載されています。
それに、焼け焦げたような小舟や、残骸、機械が破裂している小舟もあります。
その中でも、キノクニは一番頑丈そうな小舟を選び、引っ張り出すことにしました。
機械も真新しくてコンパクトです。
「よっしゃ!これで晴れて清々しいお天道様の下に…」
『何してるの…?』
「!」
「おぎゃああああああ!!!!」
キノクニが半ば引っ張り出した機械から、ひょろひょろの骸骨がぬぅっと出て来ました。
グリモアは何度目かの恐怖と驚きに、心臓が縮み上がる思いでしたが、今回は気絶せずに済みました。
「な…なんやこの骸骨…」
その骸骨は、両眼窩がつながり、ヒビ割れ、その亀裂が頭まで繋がっているのをバンダナで隠していました。
頭には眼鏡が乗っています。
「…お前がメガネか。」
『…オジサン誰…?』
キノクニは剣に手をかけ、居合斬りをしかけようとします。
しかし…
『…あー!分かった!
今、話題の超人オジサンでしょ!
試練のためにここに来たんだね!
それで僕の舟を見てたんだー!』
「ぬっ…」
「またこのパターンかいな!」
『オジサン鋭いね!今オジサンが引っ張り出したのが最新のジェットエンジンだよ!!』
「科学の国で開発されたという、燃料を燃やして推進力を得る機関か。」
『そう!すごいねオジサン!
機構国家ギリムに行ったことあるんだ!
僕は自力で作ったんだけど、やっぱり本場はすごいんだろうね!』
「そうだな…化石燃料という地中から掘り出される特殊な石を燃やして、莫大なエネルギーを生み出していた。」
『あ!知ってるよ!石炭って奴だよね!この島では取れないんだ…』
「そうか。無い物は仕方ない。
あるものでやりくりするしかない。
旅にも人生にも、戦いにも、似通っている。」
『そうだね…この開発室が、僕の戦場だよ!ありがとうオジサン!
これで試練三は終了だよ!』
「なんだと…」
『それと…オジサンのポーチ、ちょっと見せてね!』
メガネくんはキノクニの腰のポーチを見ると、横の小ポーチをイジり、腰横にずらしました。
『はい!チューニング完了だよ!
これでこの小ポーチに手を突っ込めば、ポーチの中の武器をすぐに手で持って使うことができるし、ポーション類も使いやすいはずさ!
お礼だよ!』
「そうか…
お前のその魔導の知識を併せれば、更なる機構が生まれるだろう。」
『あぁっ!そっか……
革新的な考え方だ!
魔法と科学の融合…うん!いいのが生まれそう!
ホントにありがとう!オジサン!!』
メガネくんはブツブツと呟きながら、奥の部屋に戻って行きました。
何はともあれ、こうしてキノクニは、試練三も攻略してしまいました。
「はぁ…お前…今度のは不合格になれたんとちゃうのん…?」
「…あのメガネは戦士だった。同胞の行き詰まった戦いに、助言をせんわけにはいかん。」
「あちゃー…いつものやつかぁ…
まぁメガネくん喜んでたし、良かったんちゃう?
試練はあと2つあるからな。」
「…なんとしても、不合格にならねばならん…」
キノクニは、彼にしては珍しく、後ろ向きな決意を抱きつつ、再び上の階層を目指し、歩を進めるのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
巨大な頭蓋骨が、山の頂に着地した船の上で、オオボケイカタコを咀嚼していました。
青い炎のようなオーラを纏った巨大な頭蓋骨…キャプテンは、黙りこくって2種のゲソを食べ続けます。
『………海賊に肉はいらない…
…海賊の掟は、絶対だ…』
そう呟くと、キャプテンはジュワッと溶け消えるのでした。
続きは次回のお楽しみです。
ピチョン…ピチョン…
天井からはしずくが垂れ、通路を湿らせます。
壁には、所々に光る虫の入ったランタンが掛けられており、仄かに青く洞窟内を照らします。
『足下に気をつけろ。
野郎どもはしょっちゅう転んで骨を無くしてる。見ろ。』
リーダーはキノクニの目線を通路の右側に導きます。
「これは…海水か。」
『おう。その通りよ。この水路は海まで続いていてなぁ。
小舟で釣りに出ることもできる。
だがさっきも言った通り、野郎どもが骨をじゃんじゃか落とすもんだから、そこには骨がうじゃうじゃ溜まってやがるぜ。
もしオッサンが骨を無くした時は、探したら合うのが見つかるかもなぁ。』
「私が骨を無くすなどあり得ん。」
『ケタケタケタケタ!ちげえねえ!』
リーダーとキノクニはどんどん地下に潜っていきます。
そして、長い通路を抜けると…
『ようこそ。我らが"亡者海賊団"のアジトへ…
歓迎するぜ。期待のオッサン。』
そこはドーム状の居住空間になっていました。
岩を切り崩して作られた家々が立ち並び、骸骨達が酒を飲んだり肉を食べたり、惰眠を貪ったり、思い思いに過ごしています。
真ん中には大きな塩湖があり、そこでタコやイカの養殖も行われているようです。
『さあ。次の試練の時間だぜ。
オッサン。つかそろそろ名前を教えてくれてもいいんじゃねぇか?』
「…」
『ケタケタケタケタ!
恥ずかしがり屋、ここに極まれりってなぁ!!まぁいいぜ!
それより次の試練だ!早くお前を俺達の仲間にしたくてウズウズしてるぜ!』
「…そうか。」
『ケタケタケタケタ!
そう緊張すんなよ!なるようになる!
お前は海賊に向いてるぜ!
…あっ、おいお前!』
リーダーはそこら辺に寝そべっていた海賊達のうちの1人に声をかけます。
『メガネくんはどこいった?!
オッサンに次の試練を出すにゃあ、アイツが必要不可欠なんだ。』
『ヘェ…そいつが噂の……生きの良いイカタコをありがとうな!オッサン!
ヒック!!』
『礼なんぞはどうでも良い!
メガネくんはどこ行ったんだ!?』
『んが?ああ、ああ、科学者か…リーダー、こっちにゃ居ねえよ。
アイツァ確か地下の研究室で新しいエンジン機構を開発してるはずだからな。
ヒック!』
『地下か…おいオッサン!』
「…なんだ。」
『俺はこの居住区でやることがある!
オッサンはこっから更に地下に潜って、メガネくんの話を聞いてやってくれ!
それが試練三だ!よろしく頼むぜ!』
そう言うと、リーダーは軽く敬礼し、どこかへ走り去ってしまいました。
「…どうする?また逃げるか?」
「…私の存在が知れ渡ってしまっている…ここでは小舟を見つけても目立って逃げられまい。地下に向かう。」
「…せやな。それっきゃ無いな…」
こうしてキノクニは、思惑とは裏腹に、骸骨海賊達を尻目にして、地下へと進んで行くのでした。
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地下は更に暗く、通る海賊もまばらです。
光るキノコが足下を照らしてくれているので、なんとか通路に沿って進んでいます。
「なんや上とは違って陰気な場所やなー。メガネくんこんなとこおったらますます目ぇ悪くなるんちゃう?」
「知ったことか。
それより船か小舟を探せ。この階層にも海へ繋がる水路があるのだ。
それを使って抜け出すぞ。」
キノクニもグリモアも、僅かな明かりを頼りに懸命に船を探します。
そのうち、なにやら広い場所に出ました。
「…あ!あれ!あそこ見てみ!」
グリモアの見る方向には、ヘンテコな機械が搭載された小舟が、山ほど並べてありました。
「ふむ。これは使えそうだ。」
よく見ていくと、それぞれ微妙に違う形の機械が搭載されています。
それに、焼け焦げたような小舟や、残骸、機械が破裂している小舟もあります。
その中でも、キノクニは一番頑丈そうな小舟を選び、引っ張り出すことにしました。
機械も真新しくてコンパクトです。
「よっしゃ!これで晴れて清々しいお天道様の下に…」
『何してるの…?』
「!」
「おぎゃああああああ!!!!」
キノクニが半ば引っ張り出した機械から、ひょろひょろの骸骨がぬぅっと出て来ました。
グリモアは何度目かの恐怖と驚きに、心臓が縮み上がる思いでしたが、今回は気絶せずに済みました。
「な…なんやこの骸骨…」
その骸骨は、両眼窩がつながり、ヒビ割れ、その亀裂が頭まで繋がっているのをバンダナで隠していました。
頭には眼鏡が乗っています。
「…お前がメガネか。」
『…オジサン誰…?』
キノクニは剣に手をかけ、居合斬りをしかけようとします。
しかし…
『…あー!分かった!
今、話題の超人オジサンでしょ!
試練のためにここに来たんだね!
それで僕の舟を見てたんだー!』
「ぬっ…」
「またこのパターンかいな!」
『オジサン鋭いね!今オジサンが引っ張り出したのが最新のジェットエンジンだよ!!』
「科学の国で開発されたという、燃料を燃やして推進力を得る機関か。」
『そう!すごいねオジサン!
機構国家ギリムに行ったことあるんだ!
僕は自力で作ったんだけど、やっぱり本場はすごいんだろうね!』
「そうだな…化石燃料という地中から掘り出される特殊な石を燃やして、莫大なエネルギーを生み出していた。」
『あ!知ってるよ!石炭って奴だよね!この島では取れないんだ…』
「そうか。無い物は仕方ない。
あるものでやりくりするしかない。
旅にも人生にも、戦いにも、似通っている。」
『そうだね…この開発室が、僕の戦場だよ!ありがとうオジサン!
これで試練三は終了だよ!』
「なんだと…」
『それと…オジサンのポーチ、ちょっと見せてね!』
メガネくんはキノクニの腰のポーチを見ると、横の小ポーチをイジり、腰横にずらしました。
『はい!チューニング完了だよ!
これでこの小ポーチに手を突っ込めば、ポーチの中の武器をすぐに手で持って使うことができるし、ポーション類も使いやすいはずさ!
お礼だよ!』
「そうか…
お前のその魔導の知識を併せれば、更なる機構が生まれるだろう。」
『あぁっ!そっか……
革新的な考え方だ!
魔法と科学の融合…うん!いいのが生まれそう!
ホントにありがとう!オジサン!!』
メガネくんはブツブツと呟きながら、奥の部屋に戻って行きました。
何はともあれ、こうしてキノクニは、試練三も攻略してしまいました。
「はぁ…お前…今度のは不合格になれたんとちゃうのん…?」
「…あのメガネは戦士だった。同胞の行き詰まった戦いに、助言をせんわけにはいかん。」
「あちゃー…いつものやつかぁ…
まぁメガネくん喜んでたし、良かったんちゃう?
試練はあと2つあるからな。」
「…なんとしても、不合格にならねばならん…」
キノクニは、彼にしては珍しく、後ろ向きな決意を抱きつつ、再び上の階層を目指し、歩を進めるのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
巨大な頭蓋骨が、山の頂に着地した船の上で、オオボケイカタコを咀嚼していました。
青い炎のようなオーラを纏った巨大な頭蓋骨…キャプテンは、黙りこくって2種のゲソを食べ続けます。
『………海賊に肉はいらない…
…海賊の掟は、絶対だ…』
そう呟くと、キャプテンはジュワッと溶け消えるのでした。
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