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記録三十六:備蓄庫にて〜最後の試練、アル中の話
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キノクニはウンザリした雰囲気を醸し出しながら、居住区でリーダーを探し歩いていました。
『オッサーン!一緒に呑もーや!
腐れ酒~!ひっくぅい!』
『お前口くせぇんじゃ!
腐っとるもん呑むなぁ!』
『オッサンも物好きだなぁ!
海賊になりたいなんてさぁ!』
『ああ…ごめんなさい……許して…
ひゃあ。…夢か…』
海賊達は好き好きに騒ぎ、キノクニに絡んできます。
それを無視して進んでいくと、トントンと背中を突かれました。
「…?」
『おい、オッサン!本気かよ?!』
「…何がだ。」
『しーっ!声がデカイ!…
こっちに来い。』
1人の海賊が話しかけてきて、キノクニを住居と住居の間の物陰に引っ張りこみます。
『オッサン、海賊になるってのがどういうことか分かってんのか?
俺らの仲間になるってことだぞ?』
「…どういうことだ。」
『それは…つまり……そのだな…』
『おおい!オッサン!そんなところにいやがったのか!…何してんだ?』
『あああ!り、リーダー!い、いえ、俺っち、オッサンとヤバイクスリでもやろうと思って…』
『てめぇ!!アル中!まだシビレクラゲの粉末なんざスーパッパしてんのか!!
いい加減、てめぇの頭蓋骨かち割ってやろうか?!』
『ひいいい!!許してリーダー!』
アル中と呼ばれた海賊は、悲鳴を上げ、一目散に逃げてしまいました。
『ったく…アイツは酒が死ぬほど好きでな。
あまりに呑んで仕事しやがらねぇから、酒を禁止にしたら、今度はヤク中になっちまった。
アイツの言うことはまともに聞くなよ。』
「…そうか。」
『そんなことより、試練三を無事合格できたみてぇだなぁ!!
最近行き詰まってやがる、メガネくんの刺激になればと思ったが、思った以上にいい刺激だったらしい!
ケタケタケタ!!試練も残すところ、あと2つ…』
ウーーーーーーーーーーー!!
その時です。
アジト中にサイレンの音が響きわたり、赤い光が随所で点滅し出しました。
『このサイレンは…
A級の敵か!?』
わー!きゃーー!!
海賊達は、ドタバタカタカタ逃げまどっています。
___ザザッ…ピー…ガッ…うっうん…総員に告ぐ!ただ今、最下層備蓄庫において、脅威度A級の危険生物が、クルーを襲っているとの報告が上がった!
総員、直ちに臨戦態勢、もしくは避難態勢をとれ!繰り返す…___
『なんてこった…おい、オッサン!お前ぇは最下層に行ってくれ!
俺はここで混乱している野郎どもを収める!!
仲間を救ってやってくれ!
この窮地を突破すれば、残りの試練は全て合格ということにして良い!
キャプテンもきっとお許しになられる!』
「なんだと?!」
『ふっ。良いってことだ!
特例だぜ!』
リーダーは逃げまどっている海賊達を叩いて落ち着かせながら、眼窩を狭めて器用にウインクをしてきました。
しかし、そんな特例などは全く望んでいないキノクニは、リーダーを睨みます。
『わかるぜ…さすがのオッサンでも、A級の危険生物なんざ怖えだろう。
だが、勇気を見せろ!海賊に一番必要なのは勇気だ!
後で必ず、会おうぜ!!』
そう言うと、リーダーは人混みならぬ骨混みに、怒鳴りながら消えて行ってしまいました。
「…どないすんの?」
「…こうなれば正々堂々と試練とやらを突破し、あの頭蓋骨をすり潰し、真正面から船を貰う。」
キノクニは骸骨達がギュウギュウに詰まった出口を見て、この負のループから抜け出すことを諦めていました。
「わしゃしゃしゃ!人生、腹をくくるんも大事や!」
「人でも無い本に言われたくなど無い。」
「おっ!良いツッコミやな!
わしゃしゃしゃ!!」
「…もう黙れ。」
こうして、キノクニとグリモアは、最下層を目指し、通路を下降して行ったのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最下層はかなり暗く、暗さなど関係ないグリモアが地形を鑑定しながら、慎重に進んでいました。
キノクニが光魔法で照らすこともできたのですが、それでは危険生物とやらに見つかる可能性があるので、やめました。
「…うん。ここは左右に分かれとる。どっち行く?」
「…左だ。」
キノクニは左に行きました。
話し声や足音は、音魔法で消しているので、響かず、聞こえません。
もちろん、気配も外套とフードのおかげで消えています。
「あ、なんか広い部屋が見えるで…もうじき着くで!」
キノクニは双剣を構えてゆっくりと部屋に入っていきました。
「…何か見えるか。」
「いや、食いもんの山だけや…他にはなんも…」
『ああああ…』
「!」
「山の向こうや!」
キノクニが足早に食料山の向こうに回りこむと、明かりがほんのりと灯った机があり、その机の下に頭蓋骨が落ちていました。
『ああああ…やめて…やめてくれ…』
「気ぃつけや、キノクニ。」
「…」
そして、キノクニはゆっくり近付き、その危険生物の正体を見ました。
「キャン!」
犬でした。
どこから紛れ込んだのか、小さな白い、雑種犬です。
「…」
キノクニは思わず双剣を落としそうになりましたが、鎖が巻きついてくれてなんとか落とさずに済みます。
「キャン!キャン!」
「ちっこいな~。可愛いな~。
犬コロちゃん!
なんでこんなとこおるん?」
「キャン!スンスンスンスン…」
ペロペロペローッ
『ぎゃああああああ!!やめてくれ!
俺の肋骨!食わないで!!嫌だあああ!!』
「…おい。鑑定だ。」
「よしよしよしよし…ん?おう!」
__________________
名前:なし
種別:雑種犬 幼体 Lv.5
__________________
「子犬や。紛れも無い子犬。」
「…なんなのだコイツらは…」
「キャンキャン!」
すると、子犬は満足したのか、キノクニの脇を通って、部屋から出て行ってしまいました。
しばらくして、放送が流れます。
___ガガッ…ピー…うんっ…総員に告ぐ!ただ今、A級危険生物がアジトから出て行ったことが確認された。
総員、厳戒態勢を解け。繰り返す…___
『あ…あああ…ありがとう!オッサン!アンタは命の恩人だ!
本当にありがとう!!』
「…そんな大げさなことでは無い。」
『なんて奴だ!自分の偉業を当然のごとく思ってやがる!
アンタこそ本物の勇者だ!
あんな奴ら勇者じゃねぇ!』
「…何?勇者がいたのか?」
『おおよ!俺たちの空飛ぶ船を寄越せと言って来やがったから、キャプテンがボコボコにしちまったんだ!
まぁ…俺らは勇者どもにボコボコにされたけどな。』
「いつの話だ…」
『1週間ぐらい前か?
消耗が激しかったから、最近は良く船を襲いに行くんだよ。
ああ…オッサンが仲間になったら心強いぜ~…』
「…」
『おーい!大丈夫かー!?』
『あっ!リーダー!』
ガシャガシャと、赤服を数人引き連れたリーダーが、慌ただしく駆け寄ってきました。
『おいオッサン!まさか無傷か!?
無傷で犬を追っ払ったのか!!
さすがは期待の超新星!!』
『ひぃっ!リーダー!その名をあんまり叫けばねぇでくれ…』
『ああん?!犬は犬だろうが!気持ちから負けてんじゃねぇよ!!
おい野郎ども!コイツを医務室まで運んでやれ!
肋骨がかじられてやがるからな!』
『『ウィーーー!』』
『そ、そっとだぞ?!そっとだ!
…本当にありがとうな!オッサン!
俺、オッサンのこと、死んで灰になるまで忘れねーよ!』
「…」
キノクニは黙って怪我人骸骨を見送ると、リーダーに向き直りました。
「貴様らを勇者が襲ったらしいな。」
『ん?ああ。まぁ、野郎どもは蹴散らされてたが、俺は1人腕を斬り飛ばしてやったぜ。
まだまだ未熟な連中だった。
最後はキャプテンが一発よ。
…まぁ、そんなことよりだ。』
リーダーはキノクニの手に何かを握らせます。
それは、海のように青い宝石でした。
『これで試練は全て合格だ!
それを持って、今夜はお前の海賊になる儀式だ!
ケタケタケタケタ!まさかたった1日で全ての試練を突破するとはなぁ!
夜まで休んでろ!じゃあな!』
そう言うと、リーダーは戻って行きました。
「…少し話を聞かねばならん骸骨かわいる。」
「せやな…」
そう呟くと、キノクニは宝石を懐に仕舞い込み、居住区に登っていきました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その骸骨は塩湖のほとりに佇んでいました。
グリモアの鑑定を使いに使って、やっと居場所を突き止めたのです。
「おい。お前がアル中か?」
『オ、オッサン!…試練、無事合格したんだってな。お、おめでとう…』
「お前の話の続きを聞きにきた。」
『えぇっ!?何のことだ!?』
「とぼけるな。物陰で声を潜めて話そうとしたことだ。今夜、儀式とやらを受ける前に、お前の話を聞いておかねばならん。」
『…オッサンは、海賊になりたいんじゃねぇのか…?』
「…何故そんな疑問を持つ。」
『いや、そのぅ…オッサン、ほとんど喋らねえだろ?んで、一言も海賊になりてぇとは言ってねぇ……
もしかしたら、なんか別の目的があってここに来たんじゃねぇかと思ってな…
例えば…キャプテンの魔法書とか…』
「なんだと!!?」
『うひぃいっ!!』
キノクニは、思わずアル中に掴みかかってしまいました。
アル中は悲鳴をあげますが、周りの海賊達はいつものことだと気にも止めません。
「…こっちに来い。
そこで話の続きを。」
『ま、待って…殺さねぇでくれ…』
キノクニは、アル中を物陰まで引きずっていくと、思い切り詰め寄り、グリモアを見せて言います。
「殺さん。そんなことより話をしろ。
その本はこんな本か…」
『ああ…綺麗な本だなぁ…
…宝石がハマってる…』
「そらおおきに!」
『ひゃああああ!?ほ、本が喋ったあああ!?』
「わしゃしゃしゃ!!これでお相子やでー!オレもあんたら骸骨が動いとんのを見た時は、驚かされたんやからな!」
「無駄な話をするな。しっかり見ろ。
こんな本か?」
『…あ、ああ。これほど黒くはなかったけど…灰色の本だったよ…この本とおんなじような宝石がハマってた…』
「そうか…」
キノクニはグリモアを腰のホルダーに戻しました。
一体、この海賊団はなんなのでしょう?
皆、骨だけの体で、不死かと思えば子犬に怯える始末…
どうやら話は長くなりそうです。
続きは次回のお楽しみです。
『オッサーン!一緒に呑もーや!
腐れ酒~!ひっくぅい!』
『お前口くせぇんじゃ!
腐っとるもん呑むなぁ!』
『オッサンも物好きだなぁ!
海賊になりたいなんてさぁ!』
『ああ…ごめんなさい……許して…
ひゃあ。…夢か…』
海賊達は好き好きに騒ぎ、キノクニに絡んできます。
それを無視して進んでいくと、トントンと背中を突かれました。
「…?」
『おい、オッサン!本気かよ?!』
「…何がだ。」
『しーっ!声がデカイ!…
こっちに来い。』
1人の海賊が話しかけてきて、キノクニを住居と住居の間の物陰に引っ張りこみます。
『オッサン、海賊になるってのがどういうことか分かってんのか?
俺らの仲間になるってことだぞ?』
「…どういうことだ。」
『それは…つまり……そのだな…』
『おおい!オッサン!そんなところにいやがったのか!…何してんだ?』
『あああ!り、リーダー!い、いえ、俺っち、オッサンとヤバイクスリでもやろうと思って…』
『てめぇ!!アル中!まだシビレクラゲの粉末なんざスーパッパしてんのか!!
いい加減、てめぇの頭蓋骨かち割ってやろうか?!』
『ひいいい!!許してリーダー!』
アル中と呼ばれた海賊は、悲鳴を上げ、一目散に逃げてしまいました。
『ったく…アイツは酒が死ぬほど好きでな。
あまりに呑んで仕事しやがらねぇから、酒を禁止にしたら、今度はヤク中になっちまった。
アイツの言うことはまともに聞くなよ。』
「…そうか。」
『そんなことより、試練三を無事合格できたみてぇだなぁ!!
最近行き詰まってやがる、メガネくんの刺激になればと思ったが、思った以上にいい刺激だったらしい!
ケタケタケタ!!試練も残すところ、あと2つ…』
ウーーーーーーーーーーー!!
その時です。
アジト中にサイレンの音が響きわたり、赤い光が随所で点滅し出しました。
『このサイレンは…
A級の敵か!?』
わー!きゃーー!!
海賊達は、ドタバタカタカタ逃げまどっています。
___ザザッ…ピー…ガッ…うっうん…総員に告ぐ!ただ今、最下層備蓄庫において、脅威度A級の危険生物が、クルーを襲っているとの報告が上がった!
総員、直ちに臨戦態勢、もしくは避難態勢をとれ!繰り返す…___
『なんてこった…おい、オッサン!お前ぇは最下層に行ってくれ!
俺はここで混乱している野郎どもを収める!!
仲間を救ってやってくれ!
この窮地を突破すれば、残りの試練は全て合格ということにして良い!
キャプテンもきっとお許しになられる!』
「なんだと?!」
『ふっ。良いってことだ!
特例だぜ!』
リーダーは逃げまどっている海賊達を叩いて落ち着かせながら、眼窩を狭めて器用にウインクをしてきました。
しかし、そんな特例などは全く望んでいないキノクニは、リーダーを睨みます。
『わかるぜ…さすがのオッサンでも、A級の危険生物なんざ怖えだろう。
だが、勇気を見せろ!海賊に一番必要なのは勇気だ!
後で必ず、会おうぜ!!』
そう言うと、リーダーは人混みならぬ骨混みに、怒鳴りながら消えて行ってしまいました。
「…どないすんの?」
「…こうなれば正々堂々と試練とやらを突破し、あの頭蓋骨をすり潰し、真正面から船を貰う。」
キノクニは骸骨達がギュウギュウに詰まった出口を見て、この負のループから抜け出すことを諦めていました。
「わしゃしゃしゃ!人生、腹をくくるんも大事や!」
「人でも無い本に言われたくなど無い。」
「おっ!良いツッコミやな!
わしゃしゃしゃ!!」
「…もう黙れ。」
こうして、キノクニとグリモアは、最下層を目指し、通路を下降して行ったのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最下層はかなり暗く、暗さなど関係ないグリモアが地形を鑑定しながら、慎重に進んでいました。
キノクニが光魔法で照らすこともできたのですが、それでは危険生物とやらに見つかる可能性があるので、やめました。
「…うん。ここは左右に分かれとる。どっち行く?」
「…左だ。」
キノクニは左に行きました。
話し声や足音は、音魔法で消しているので、響かず、聞こえません。
もちろん、気配も外套とフードのおかげで消えています。
「あ、なんか広い部屋が見えるで…もうじき着くで!」
キノクニは双剣を構えてゆっくりと部屋に入っていきました。
「…何か見えるか。」
「いや、食いもんの山だけや…他にはなんも…」
『ああああ…』
「!」
「山の向こうや!」
キノクニが足早に食料山の向こうに回りこむと、明かりがほんのりと灯った机があり、その机の下に頭蓋骨が落ちていました。
『ああああ…やめて…やめてくれ…』
「気ぃつけや、キノクニ。」
「…」
そして、キノクニはゆっくり近付き、その危険生物の正体を見ました。
「キャン!」
犬でした。
どこから紛れ込んだのか、小さな白い、雑種犬です。
「…」
キノクニは思わず双剣を落としそうになりましたが、鎖が巻きついてくれてなんとか落とさずに済みます。
「キャン!キャン!」
「ちっこいな~。可愛いな~。
犬コロちゃん!
なんでこんなとこおるん?」
「キャン!スンスンスンスン…」
ペロペロペローッ
『ぎゃああああああ!!やめてくれ!
俺の肋骨!食わないで!!嫌だあああ!!』
「…おい。鑑定だ。」
「よしよしよしよし…ん?おう!」
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名前:なし
種別:雑種犬 幼体 Lv.5
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「子犬や。紛れも無い子犬。」
「…なんなのだコイツらは…」
「キャンキャン!」
すると、子犬は満足したのか、キノクニの脇を通って、部屋から出て行ってしまいました。
しばらくして、放送が流れます。
___ガガッ…ピー…うんっ…総員に告ぐ!ただ今、A級危険生物がアジトから出て行ったことが確認された。
総員、厳戒態勢を解け。繰り返す…___
『あ…あああ…ありがとう!オッサン!アンタは命の恩人だ!
本当にありがとう!!』
「…そんな大げさなことでは無い。」
『なんて奴だ!自分の偉業を当然のごとく思ってやがる!
アンタこそ本物の勇者だ!
あんな奴ら勇者じゃねぇ!』
「…何?勇者がいたのか?」
『おおよ!俺たちの空飛ぶ船を寄越せと言って来やがったから、キャプテンがボコボコにしちまったんだ!
まぁ…俺らは勇者どもにボコボコにされたけどな。』
「いつの話だ…」
『1週間ぐらい前か?
消耗が激しかったから、最近は良く船を襲いに行くんだよ。
ああ…オッサンが仲間になったら心強いぜ~…』
「…」
『おーい!大丈夫かー!?』
『あっ!リーダー!』
ガシャガシャと、赤服を数人引き連れたリーダーが、慌ただしく駆け寄ってきました。
『おいオッサン!まさか無傷か!?
無傷で犬を追っ払ったのか!!
さすがは期待の超新星!!』
『ひぃっ!リーダー!その名をあんまり叫けばねぇでくれ…』
『ああん?!犬は犬だろうが!気持ちから負けてんじゃねぇよ!!
おい野郎ども!コイツを医務室まで運んでやれ!
肋骨がかじられてやがるからな!』
『『ウィーーー!』』
『そ、そっとだぞ?!そっとだ!
…本当にありがとうな!オッサン!
俺、オッサンのこと、死んで灰になるまで忘れねーよ!』
「…」
キノクニは黙って怪我人骸骨を見送ると、リーダーに向き直りました。
「貴様らを勇者が襲ったらしいな。」
『ん?ああ。まぁ、野郎どもは蹴散らされてたが、俺は1人腕を斬り飛ばしてやったぜ。
まだまだ未熟な連中だった。
最後はキャプテンが一発よ。
…まぁ、そんなことよりだ。』
リーダーはキノクニの手に何かを握らせます。
それは、海のように青い宝石でした。
『これで試練は全て合格だ!
それを持って、今夜はお前の海賊になる儀式だ!
ケタケタケタケタ!まさかたった1日で全ての試練を突破するとはなぁ!
夜まで休んでろ!じゃあな!』
そう言うと、リーダーは戻って行きました。
「…少し話を聞かねばならん骸骨かわいる。」
「せやな…」
そう呟くと、キノクニは宝石を懐に仕舞い込み、居住区に登っていきました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その骸骨は塩湖のほとりに佇んでいました。
グリモアの鑑定を使いに使って、やっと居場所を突き止めたのです。
「おい。お前がアル中か?」
『オ、オッサン!…試練、無事合格したんだってな。お、おめでとう…』
「お前の話の続きを聞きにきた。」
『えぇっ!?何のことだ!?』
「とぼけるな。物陰で声を潜めて話そうとしたことだ。今夜、儀式とやらを受ける前に、お前の話を聞いておかねばならん。」
『…オッサンは、海賊になりたいんじゃねぇのか…?』
「…何故そんな疑問を持つ。」
『いや、そのぅ…オッサン、ほとんど喋らねえだろ?んで、一言も海賊になりてぇとは言ってねぇ……
もしかしたら、なんか別の目的があってここに来たんじゃねぇかと思ってな…
例えば…キャプテンの魔法書とか…』
「なんだと!!?」
『うひぃいっ!!』
キノクニは、思わずアル中に掴みかかってしまいました。
アル中は悲鳴をあげますが、周りの海賊達はいつものことだと気にも止めません。
「…こっちに来い。
そこで話の続きを。」
『ま、待って…殺さねぇでくれ…』
キノクニは、アル中を物陰まで引きずっていくと、思い切り詰め寄り、グリモアを見せて言います。
「殺さん。そんなことより話をしろ。
その本はこんな本か…」
『ああ…綺麗な本だなぁ…
…宝石がハマってる…』
「そらおおきに!」
『ひゃああああ!?ほ、本が喋ったあああ!?』
「わしゃしゃしゃ!!これでお相子やでー!オレもあんたら骸骨が動いとんのを見た時は、驚かされたんやからな!」
「無駄な話をするな。しっかり見ろ。
こんな本か?」
『…あ、ああ。これほど黒くはなかったけど…灰色の本だったよ…この本とおんなじような宝石がハマってた…』
「そうか…」
キノクニはグリモアを腰のホルダーに戻しました。
一体、この海賊団はなんなのでしょう?
皆、骨だけの体で、不死かと思えば子犬に怯える始末…
どうやら話は長くなりそうです。
続きは次回のお楽しみです。
応援ありがとうございます!
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