のっぺら無双

やあ

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記録三十八:儀式〜舞闘

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 パァン!

 破裂音が響き、スポットライトがキノクニを照らします。

 海賊船から降り注ぐライトは、光虫を黒いバケツに詰め込み、ガラスで蓋をして作られたものです。

 パァン!

 次にスポットライトが照らしたのは、キノクニの目の前にいるキャプテンでした。
 闇が割れ、その不気味な風貌があらわになります。

 『…よ~く~ぞぉ…うぇっ…
 よくぞ試練をくぐり抜け、この儀式の間まで来たな。
 食料を調達し、はびこる蟲どもを殲滅し、人徳を見せ、ついには犬まで追い出した…
 手下どものわがままを、よくぞここまで聞いたものだ…』

 目の前のキャプテンから声が響いているのではありません。

 それはただの抜け殻だと、キノクニは最初から気付いていました。

 『……今宵、新たな仲間が生まれる。
 貴様の生きたまま肉を剥がされる悲鳴が、新たな海賊誕生の産声となるのだ。
 …野郎どもぉ!!総員集結!!!』

 パパパパパパァン!!

 山頂を、大量の光虫のライトが照らし尽くします。

 周りを見ると、キノクニと空っぽの骸は、骸骨のコロシアムで囲われていました。

 『『『わあああああああ!!』』』

 『『『オッサン頑張れよー!』』』

 『『『痛えのは最初だけだー!』』』

 『『『ウィー!ウィー!
 ウィーー!!!』』』

 観客席には大量の海賊骸骨達が列挙し、酒や食べ物を両手にお祭り騒ぎです。

 『ケタケタケタケタ…どうだ。これが貴様への手下どもの期待だ…
 この期待の中で、貴様は生まれ…
 いや、死に変わる!』

 ボジュワッ!

 キノクニの背後からあの溶けるような音が聞こえます。

 キノクニがゆっくりと振り返ると…

 『泣き喚き叫び…踊れ。
 ショウ・タイムだ。』

 ガキィイイイイン!!!

 同時に巨大なフックが、キノクニを吊り上げようと襲ってきました。

 "Ready,Fight."

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 キノクニは双剣でフックを防ぎ、素早くその場から飛び退く。

 キャプテンはフックを操りキノクニを追撃。

 しかし、キノクニは慌てずフックを双剣をかむ鎖で絡めとり、動きを封じる。

 『ケタケタ!ギャハハハハ!! 
 流石だな!!
 この程度では驚きもせんか!!
 大抵の人間は、これでくたばる!』

 「グリモア!鑑定だ!」

 「あかんねん!おそらくどっかに灰色のグリモアがおるんや!
 鑑定がジャミングされとる!」

 『ケタケタケタケタ!
 何を企んでいる!?
 余裕じゃねぇかぁ!!!』

 鑑定が出来ず、焦るグリモアに対し、キャプテンは浮かぶ巨大な頭蓋骨でケタケタと笑い、キノクニの鎖をリズミカルに鳴らしたてる。

 『『『ウィー!ウィー!
 ウィーーー』』』

 その鎖のリズムに合わせ、観衆達は足を踏み鳴らし、踊り狂って馬鹿騒ぐ。

 キノクニは鎖を伸ばし、更に巻きつけ、拘束を強固にし、スイングの体制に入る。

 「ぬうううううう…」

 『ケタケタケタケタ!力比べか!?
 我輩、"骨"があるぞ!?ギャハハ!』

 「死体ジョーク!縁起でも無いわ!」

 「ぬああああああああああっ!」

 ブォンッ!

 鎖の音は途切れ、観衆の足は止まる。

 フックが浮いて巨大な頭蓋骨に迫り…

 ゴガンッ!!!

 頭蓋骨に衝突し、乾いた音を響かせた。

 「よっしゃ!やったったで!」

 『『『…』』』

 観衆達は静まりかえり、暗い眼窩でキノクニを見る。

 キャプテンを殴られ、切れたのか?

 いや、違う…

 『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』』』

 『『『スゲェぜオッサン!!!』』』

 『『『キャプテンに一撃入れやがった!!!』』』

 『『『酒を!肉を!持って来い!!こいつは2世紀ぶりで、しかも今までで一番の儀式だああああああ!!!』』』

 観衆達は熱狂し、更に空気が震え出す。

 それが、キノクニに、まだまだ終わっていないことを感じさせた。

 事実、その感覚は的中していた。

 『野郎どもおおおお!!ケタケタケタケタ!!コイツァてめぇらよりよっぽど"骨"があるぜぇぇええ!?
 ギャハハハハハハハ!!!』

 キャプテンはブワリと一回転し、フックをひるがえして体勢を立て直した。

 「テンドン!?高等テクや!笑いの高等テクや!!死体ジョークかぶせてきおったど!あの巨骨!!」

 「知ったことか。」

 キノクニもあれで終わりとは思っていない。

 ジャラリと手から双剣を垂らし、グルグルと鎖鎌よろしく振り回す。

 ヒュン!

 そして勢いそのままに、キャプテンの眼窩を狙って投擲した。

 『ギャハハハハハハハ…
 んあっ!?』

 ジャラララララララ…
           ジャキン!

 鎖は眼窩に入り、眉間に巻きつきしっかりと掴む。

 『ギャハハ!今度は頭と力比べか!?
 我輩、頭はいい方だぞ!』

 「ぬうううううっ…」

 「死体関係無いジョークや!」

 「うりゃあああ!!!」

 グンッ!!

 キノクニが引っ張ると、キャプテンの頭蓋骨は揺らぎ、墜落しそうになる。

 しかし、キャプテンも負けじと浮かび、鎖をジャラジャラ鳴らしている。   

 『『『ウィー!ウィー!
 ウィーーーーー!!!!』』』

 それで更に観衆はヒートアップし、風の流れすら作り出す。

 ブァアッ!!!

 キノクニの外套と編笠を、風が煽ったその時だった。

 『ギャハハー!!』

 「!」

 ゴシャンッ!!!

 キャプテンがワザとキノクニに引っ張られ、その勢いで頭突きを見舞う。

 キノクニはすんでのところでガードしたが、壁に叩きつけられた。

 『どうだ野郎どもぉ!!
 汚名挽回!名誉返上だあああ!
 ギャハハハハハハハ!
 ケタケタケタケタ!!』

 『『『ギャハハハハハハハ!!
 キャプテン逆だーー!!
 頭悪い方じゃねーか!!!』』』

 『馬鹿野郎どもめが!!
 それで良いんだよ!!!!
 海賊に名誉はいらねぇ!
 肉体もなぁ!!汚名で十分だ!
 あと酒と肴とタコとイカ!!』

 『『『結構色々いるじゃねーか!!』』』

 『ケタケタケタケタ!!
 ギャハハハハハハハ!!』

 キノクニは頭蓋骨を足で蹴り退けると、素早く抜け出し、双剣をどちらも逆手に構え直す。

 「キノクニあかん…
 コイツら集団ツッコミまでこなしおったど…こりゃ今まで以上の強敵や。」

 「妙な判断基準を唱えるな。」

 「あかんて!
 お前ツッコミが固すぎるわ!
 今の時代、ツッコミもウィットに富まんと…」

 キノクニはグリモアの声はいつも通り無視し、キャプテンに背を向け壁を見る。

 『ギャハハ!
 "ダルマさんが転んだ"か!?』

 その背に向けてキャプテンが牙を剥き出し噛みつきにかかる。

 しかし、キノクニはそれが狙いだった。

 ギャギャリン!

 『痛い!』

 コロシアムの壁となっている骸骨が叫ぶ。

 キノクニが、都の防壁にやったのと同じ要領で、逆手に持った剣を壁に突き立て、壁を駆け上がったのだ。

 『何ぃ!?!?』

 ドガラシャアアアアン!!!

 骨同士が激突する音が響き渡る。

 キャプテンが勢いを殺しきれず、思い切り突っ込んだのだった。

 「ふん!」

 ドンッ!

 キノクニは宙に浮いた状態から更に空を蹴り、高く舞う。

 そして双剣を収め、小ポーチに手を突っ込むと、そこから戦鎚を取り出した。

 「ぬりゃああああああああ!!!」

 ガイイイイインッ!!!

 戦鎚と頭蓋が衝突し、先程とは違う鋭い音が響く。

 ピシビキピキッ…
        バカンッ!!

 ついには頭蓋骨が割れてしまった。

 『がっ………!』

 「ふん…
 貴様は頭が固すぎたようだな。」

 「よっ!キノクニジョーク!」

 『『『ウィーーーーーー!!!』』』

 しかし、観衆の興奮は治らない。

 なぜ…?

 その時だった。

 スフィンッ…!!

 赤黒い剣筋のレイピアが、キノクニの服を掠めた。

 ジュジュウゥゥ…!

 キノクニはとっさに小ポーチから防腐薬を取り出し、服にかけることで、ことなきを得た。

 服は茶色くグズグズに腐蝕していた。

 「おいおいマジかいな…」

 キノクニが頭蓋骨から後ろへ目を移すと、そこには奇妙な光景が広がっていた。

 レイピアや銃、カットラスに大砲、それらを持った腕骨が乱れ飛び、肋骨や骨盤、大腿骨や脛骨、腓骨までもが踊り舞っている。

 『ケタケタケタ…よもや我輩の頭蓋骨を砕くとはな…』

 キノクニが頭蓋骨に視線を戻すと、割れたはずの頭蓋骨は綺麗に癒着していた。

 『大砲用ー意!』

 ギャキンッ

 『放て。』

 ドンドドドドドドン!!!!

 一門しかなかったはずの大砲が幾多にも分裂し、キノクニ1人に集中砲火を始める。

 すぐさま走り避けたキノクニだったが、外套とフードが舞い飛び、編笠も吹き飛ばされてしまった。

 「キノクニ!顔がっ…」

 「ぬぅっ…」

 『おやおや…ギャハハハハハハハ!!
 これは久方ぶりに見るな…
 野郎どもぉ!顔無しだああああ!』

 『『『ウィーーーーーー!!!』』』

 キノクニの、顔の無い顔が観衆に晒される。

 キャプテンは高らかに笑い、銃を天に乱射する。

 『悪名高き顔無しを!今宵我らは仲間にできる!!
 どうだ野郎どもおおおお!
 顔無しの頭蓋に、眼窩はあるのか気になるかああああ!?!?』

 『『『ウィー!ウィー!
 ウィーーーーーー!!!!』』』

 キノクニは舞い飛ぶ武器達を観察しながら、肋骨の行方と、灰色のグリモアを探す。

 「グリモアはどこだ。
 分からんのか。」

 「全く感じひん!それよりお前…
 顔…」

 「ふん。人でない者にどう言われようが構わん。」

 なんとかしてグリモアを探し、肋骨の中の宝石を破壊しなければならない…

 キノクニはそう目標を定め、双剣を構えた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 白熱するバトルに合わせ、口調を変えてお届けしました。

 果たして、キノクニは儀式を切り抜け、グリモアを奪取できるのでしょうか?

 "Follwing enjoy your next."

 

              


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