のっぺら無双

やあ

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記録四十:山頂〜死の灰谷

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 キノクニは斧を構え、周囲を見回します。

 すると、散らばっていた全ての骨の残骸が、渦巻き始めました。

 シュオオオオオオオ…

 そして、それはやがて海賊船に向かって飛んで行きました。

 そちらに目を向けると、青服のリーダーや、メガネくん、元アル中の戦士や、他のクルー達が大きな紫色の壺を抱えてこちらへ向かって来ていました。

 巨大な大腿骨や、骨片、フックは、その壺に吸い込まれ、綺麗に…いえ、フックや大腿骨は飛び出ていますが…収まりました。

 キノクニは斧を構え、応戦しようとします。

 しかし…

 『おーーーい!オッサン!見てたぜ!
 凄え儀式だったなぁ!
 ケタケタケタケタ!!!
 …そんな怖え顔すんなよ。悪気は無かったんだ…
 まぁ、殺そうとしたけどな!』

 リーダーは近づいてくると、キノクニの肩を叩き大笑いしました。

 キノクニは思わず斧を落としそうになりますが、斧が吸い付き、それを回避します。

 「…私は奴を殺したのだぞ…
 …何故笑っている…」

 『ギャハハハハハハハ!!
 そりゃオメェ、死んでねえからだよ!
 そうですよねぇ!キャプテン!!』

 リーダーが壺に話しかけると、壺がカタカタと揺れます。
 そして、声さえ出しました。

 『イキテルヨ。シンデルケドネ。』

 「何…だと…」

 「マジかいな!!ビビるわほんま!!
 あんだけ粉々にされて、核砕かれて、まだ冗談言うとる!」

 『ワー。ビックリシタ。ソノホンカ。
 ボクノグリモアトイッショダネ。』

 『ギャハハハハハハハ!
 いい声じゃねえか!本なのになぁ!?
 ケタケタケタケタ!!』

 グリモアはつい、全員に聞こえるように喋ってしまいました。

 キノクニはもう怒りませんでした。

 今回の一件の、全てに呆れていたからです。

 「…はぁ…それで、なんだ?」

 『……キャプテン、頼みがあります。
 やはりこのオッサンを、俺らの仲間にしていただけやせんでしょうか?』

 「なんだと…!!!?」

 「わしゃしゃしゃしゃ!!」

 リーダーはとんでもない事を言い出しました。
 しかし、返答は意外にも、拒否でした。

 『ナラン…
 ギシキハシッパイニオワッタ…ニクガアルモノハ、カイゾクニハナレナイ…』

 『やはりダメですかい…』

 『……デモ…』

 『お?』

 『トモダチナライイヨ。』

 『キャプテン!』

 「なんだそれは…」

 「わしゃしゃしゃしゃ!!
 良かったなキノクニ!!
 初のお互い公認のダチやないかい!」

 「私はそんなもの…」

 『アレアゲチャッテ!』

 『ケタケタ…へい!キャプテン!
 おい、オッサン!良かったなぁ!
 これ持ってんのは、今の時代はオッサンだけだ!』

 そう言うと、リーダーは懐から頭蓋骨を模した筒状の物を手渡して来ました。

 「なんだこれは…」

 『まぁ聞け。
 そいつは"亡者の汽笛"っつう縦笛だ。
 それをピューイと鳴らせば、俺らはどんな場所にも現れる。
 極端に過酷な場所や、犬を売る店とかじゃなけりゃあな!
 オッサンが俺たちの力を欲した時に吹いてくれ!
 まぁ、"ダチの証"って奴だな!』

 「…」

 「ええやん、ええやん!貰っとき!
 困った時はお互い様や!」

 「おい、余計な事を…」

 『おぉ!いい言葉だな!
 ケタケタケタ!
 俺らも困ったらオッサンを頼らせて貰うぜ!!』

 「わしゃしゃしゃしゃ!
 ええってこっちゃ!
 なあ?キノクニ!」

 「…もういい。」

 「わしゃしゃしゃしゃ!
 差し当たってリーダーさん?俺ら魔族領に行きたいんやけど、運んでくれへんかいな。」

 『なんだと…そりゃ本当か?
 オッサン。』

 「…そうだ。」

 『そうか…メガネ!
 どうだ?船の調子は?』

 『はい!リーダー!
 オジサンがくれた助言で作った、魔導ジェットエンジンはすこぶる好調だよ!
 キャプテンのグリモアが無くなって、魔力の流れが良くなったみたい!』

 『ギャハハハハハハハ!
 おいおい運が良いなオッサン!!
 オッサンがやったことで、オッサンの道が拓けたぜ!ケタケタケタケタ!』

 「そうか…」

 「なんでエンジンの調子なんぞ聞くんや?」

 『ん?ああ。
 ま、そりゃおいおい話そう。
 キャプテン、号令、俺がかけても?』

 『イイヨ。』

 『野郎どもおおおおおお!!!
 航空用おおおお意!!』

 『『『ウィーーーーー!!!』』』

 さっきまでの賑やかさとは違った賑やかさを醸し出し、全員が船で準備を始めます。

 キノクニも、最初とは良い方向へ変わった印象を心に抱き、船に乗り込んで行きました。

 柔らかな朝日が、みんなを包んでいました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

__________________
 名前:"終"のグリモア

 分類:魔法書 Lv.3

 数値:攻 100
   :守 50
   :魔 5000
   :運 5

 特性:永久記録
   :発語
   :全方位視覚
   :夜目
   :言語理解
   :所持者選定(キノクニ)

 技能:万物鑑定 Lv.3
   :突っ込み Lv.7

 説明
 言わずと知れた最後のグリモア。黒い
 外装は永久の印か無力の烙印か…
 所有者にあらゆる物の知識を与えると
 され、グリモアの中でも一際饒舌。
__________________

 「どや!これがオレやで!」

 「無力の烙印か…」
  
 「そこだけに引っ掛かんなや!
 役に立つやんけ!時々!!」

 「…それよりお前のレベルが3ということは…」

 「せや!
 ブックカバーの力を使えんねん!
 とくと見よ!
 空飛ぶ本の摩訶不思議な様を!!」

 『『『なんだなんだ!?』』』

 現在、海賊とキノクニ一行は空の上です。天気は快晴。航路は順調です。

 「はあああああああ…!」

 『『『お、お、お~!?』』』

 「…」

 グリモアの自己鑑定の結果、レベルが上がっていたため、空を浮かべるか挑戦しているところです。

 海賊達の注目が集まりますが、キノクニはどこか嘲笑気味です。

 「ああああああああああああっ!!」

 『『『お~~~~~!!!!』』』

 ふわっ…ポスン。

 『『『しょべぇ。』』』

 「嘘~~~~~ん!?」

 「無力の烙印か…」

 「やめて!キノクニ!
 捨てないで~!!!」

 グリモアは涙ちょろちょろです。

 キノクニはグリモアを掴み、何かを見ています。

 「…ふむ。
 魔力操作がまるでなっていない。
 そこら辺の子供よりひどい。」

 「…魔力操作…?…なにそれ…」

 「魔力の循環を感じ、魔力の理を無の中で意識し、魔力を手足と同様に使う…
 魔法の基礎中の基礎だ。
 …魔法書であるお前が知らんのか。」

 「…知らへん。」

 「…」

 「なんやその感じは!!絶対憐れんどるやろ!!知らんもんは知らんねん!!教えろや!」

 「…ふん。私は厳しいぞ…」

 「…お、おう。
 メールちゃんやマリアンちゃんの時によう見とるわ…」

 「では魔力が切れるまでひたすら浮遊しろ。使う感覚を覚えることからだ。」

 「よっしゃあああああああ!!」

 ふわっ…ポスン。

 ふわっ…ポスン。

 『ギャハハハハハハハ!!ったく、本当に面白いオッサン達だぜ!
 なぁ、本当に魔族領なんかに行くのか?
 あそこはおっかねぇ奴しかいねぇんだぜ?』

 「…他のグリモアを探しに行く。
 …私の記録を知るためにな。」

 『どういうこった?』

 キノクニは記憶が無い事をリーダーに話しました。
 キノクニなりに心を許している証拠ですね。

 『ほ~…なるほどなぁ。
 しかしそんなに記憶や過去が大事か?
 俺は俺だし、オッサンはオッサンだと思うんだがなあ…』

 「ふん…大事か小事かなど、人それぞれだろう…」

 『まぁ…そうだなあ。』

 『オジサン。イッコイイ?』

 そこへ、後ろにある壺から、キャプテンが話しかけてきました。

 『ソロソロ"シノハイコク"ニツク。
 ボクタチハソコニハハイレナイ。
 ソコマデシカオクッテアゲレナクテゴメンネ。』

 「どういうことだ。」

 『ああ。"死の灰谷"っつってな。
 生命力の弱い奴が近付くと、谷に命を吸われて死んじまうんだ。
 俺らは死なねえが、死んで生き返ってを繰り返しちまうから、着地できねぇ。
 魔族領には入れるが、魔王の目が光っている内は違法入国できねぇんだ。』

 「構わん。そこまでで良い。」

 『良し…そろそろだな。
 準備しとけよ!オッサン!』

 「わかった…」

 地上に目を向けると、海賊達の言う通り、灰色の谷が見えました。

 「ふん!ふん!ふん!」

 「グリモアよ。到着だ。」

 「ふん!…あ?ああ!早かったな!
 魔族領か!
 よっしゃ!やったるでー!」

 「…」

 『野郎どもおお!
 錨をおろせええ!!』

 『『『ウィーーーーー!!!』』』

 ガラガラガラガラガラガコン!

 錨を下ろして船が止まります。

 いよいよ海賊達と別れの時です。

 「さらばだ。」

 「ほな、ありがとさん!」

 『またなオッサン!
 なんかあったら呼べよ!!』

 『オジサンありがとう!
 また会おうね!』

 『オッサン…
 道を示してくれて感謝するぜ…
 またな…』

 『寂しいわん。オッサン…
 次来た時はチュウしてねん!』

 『またイカタコを狩ってタコパするでごわす!
 今度はみんなで狩るでごわすよ!』

 『オジサン。マタネ。』

 『総員!敬礼!』

 ザッ!!

 リーダーの号令で、海賊達が敬礼します。

 キノクニとグリモアは、それを見ながら錨を降りて行きます。

 太陽が高く昇り、キノクニ達の出発を祝福しているようです。

 死の灰谷では、一体何が
 「キャンキャンキャン!」

 『『『ぎゃあああああ!!
 オッサン助けてええええ!!』』』

 『オッサン!行ったぞおおおお!』

 「あ。」

 「む。」

 ぽむん!

 キノクニの頭に、白い塊が着地しました。

 勢いづいたキノクニは、そのままスルスルと滑り落ちて行きました。

 『『『じゃーなーーーー!!
 オッサーーーーーーーン!!!』』』
  
 海賊達の声を聞きながら、キノクニは灰色の谷に落ちて行きます。

 前途多難とは、このことでしょう。

 こうして、勘違いから開幕した海賊騒動は、奇妙な絆を生み、騒がしく幕を閉じたのでした。

 海賊達のその後は…?

 キノクニはこの後、どうなるのでしょうか…?

 続きは次回のお楽しみです。
 
 

 
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