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僕の婚約者は世界で一番可愛い
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最初にはっきり言っておこう。
僕の婚約者は世界で一番可愛い。
知らない人がいるかもしれないから、教えておくけれど、僕の婚約者はアリサ・リンバース。
この国の第一王子である僕アランの婚約者だ。
美しい黒羽色の髪に、アーモンド形の大きな黒曜石のような瞳。
貴族社会では、社交界の黒薔薇と言われ、学園内では完璧令嬢と呼ばれている。
そんな僕の婚約者は本当に可愛らしい人で、出会った時から、僕の一番は全部彼女になった。
アリサももちろん僕を慕ってくれたし、僕もそれに答えてきたつもりだった。
けれど最近、僕はリリー・フランシス男爵令嬢が現れたことで悩んでいる。
最初は他の令嬢と同じように、王族に群がる蝶の一人だという認識だった。王族たる者、令嬢相手に礼節を保ち、愛想よくするのは当たり前の事だ。
僕も最初は、愛想良くしていた。
フランシス男爵令嬢も、僕に気があるそぶりをしながらすり寄ってきたから、僕も愛想よく、それでいてアリサに失礼のない程度にあしらっていた。
そこまではよかった。
問題はここからだ。
フランシス男爵令嬢と、アリサが出会ってから、どんどんとおかしくなっていった。
アリサは僕に見せないような笑顔をフランシス男爵令嬢に見せるようになって、そしてスマホなる箱に夢中になった。
「ねぇアリサ。何見ているの?」
アリサは疲れると、いつも一人になれる裏庭へと向かう。そして以前はそこで本を読んでいた。
けれど今手に持っているのは、スマホなる箱である。
フランシス男爵令嬢から貸してもらっているらしく、それにも少し腹立たしい。
同じものを国中探したけれど見つけられず、それに気づいたフランシス男爵令嬢が、僕に勝ち誇った顔でにやりと笑った時には、女性に対して初めて殺気を抱いた。
「アラン様」
僕に気付いたアリサは、ぱっと顔を赤らめると、さっとスマホを隠した。
何故隠すのか、それに僕は少しいらだたしくなる。
「何で隠すの?」
「え、あの……その」
アリサは耳まで真っ赤になると、僕の事を見上げて言った。
「あの……アラン様」
「ん?」
その上目使いは、卑怯だなぁと思いながらも、僕はそれだけでいらだちを消してしまう。
アリサは静かに言った。
「もし……リリーと結婚しても……私、ちゃんと祝福します」
「は?」
意味が分からない。突然の事に頭が追いつかず、眉間にしわがよる。
そこに、フランシス男爵令嬢が駆けこんでくると、アリサの体をぎゅっと抱きしめて言った。
「もう! アリサ! 私は誰とも結婚しないわ! 私はずっとアリサの傍にいるって決めたの!」
「え?」
「は?」
フランシス男爵令嬢はにっこりと笑うと、僕に勝ち誇った顔で言った。
「私、いずれアリサの侍女になろうと思っているの。だから、これからもずーっと一緒よ」
「え?」
「は?」
僕は顔を引きつらせるが、アリサはぱっと顔を明るくさせると、僕の方を見た。
「本当ですか!?」
何が本当なのだろうかと思い、ふと、気づく。
「まさかとは思うけれど、アリサは、僕とフランシス男爵令嬢との間を疑っていたのかい?」
そう告げると、アリサは視線を少し泳がせたのちに、こくりと、頷く。
可愛いか。
いや、アリサは可愛いのだ。けれどその疑惑については顔を引きつらせてしまう。
これはダメだと、僕は小さく息をつくと、アリサのことを抱き上げて、横抱きにすると言った。
「フランシス男爵令嬢。君とはまた今度話をする。今はアリサと話させてくれ」
フランシス男爵令嬢はその言葉に、少しだけ顔を歪ませるものの美しく一礼して下がる。
引き際が上手い女だと思いながら、僕はアリサを抱き上げたまま歩くと、裏庭のガゼボへと移動し、そこのベンチに腰掛ける。
アリサは顔を赤らめており、すぐに僕の膝の上から降りようとするけれど、僕は後ろからぎゅっとアリサを抱きしめながら言った。
「伝わっていなかったようだから、ちゃんと宣言しておくよ」
「ひゃっ……はい」
アリサの心臓の音が伝わってくる。
「僕は、アリサのことを世界で一番愛しているし、君以外を愛したことはない」
「え?」
驚いた顔で振り返られ、僕は、ちっともアリサに自分の気持ちが伝わっていなかったことにがっくりとしてしまう。
好意を伝えるのがこんなにも難しいことだとは思ってもみなかった。
「アリサ」
「は、はい」
顔を赤らめながら視線を泳がせるアリサは可愛い。
「僕が結婚したいと思うのも、僕が可愛いと思うのも、僕が愛おしいと思うのも、全部君だけなんだ」
「え!?……あ……えっと」
これまで誕生日に選んでいたプレゼントも、花も、言葉も、何一つ伝わっていなかったのだと寂しく思うけれど、これからちゃんと伝えていけばいいと、気持ちを切り替える。
「フランシス男爵令嬢には感謝だね。僕は今まで、君にちっとも気持ちが伝わっていないなんて、思いもしなかったよ。」
「え?……あの、アラン様」
「なに?」
「本当に、私のことを?」
これまで言っても伝わらないとは。
「愛してる」
僕はまっすぐに言葉を返す。
アリサには、ちゃんと伝えていかないとダメなのだなと考えながら、会う回数も増やしていこうと思案していた時、洋服をアリサがちょいちょいと引っ張る。
「?」
「私も、愛してます」
はい。
可愛い。
僕の婚約者は世界で一番可愛いと、僕は今日も叫ぶしかない。
★★★★
読んで下さる皆様、ありがとうございます。
つい、短編なのですが、つい、のろけが書きたくなりました。
ただのアランの、戯言にお付き合いいただき、ありがとうございました。
作者 かのん ← 名前覚えてもらえたら、作者は飛び跳ねて喜びます。
僕の婚約者は世界で一番可愛い。
知らない人がいるかもしれないから、教えておくけれど、僕の婚約者はアリサ・リンバース。
この国の第一王子である僕アランの婚約者だ。
美しい黒羽色の髪に、アーモンド形の大きな黒曜石のような瞳。
貴族社会では、社交界の黒薔薇と言われ、学園内では完璧令嬢と呼ばれている。
そんな僕の婚約者は本当に可愛らしい人で、出会った時から、僕の一番は全部彼女になった。
アリサももちろん僕を慕ってくれたし、僕もそれに答えてきたつもりだった。
けれど最近、僕はリリー・フランシス男爵令嬢が現れたことで悩んでいる。
最初は他の令嬢と同じように、王族に群がる蝶の一人だという認識だった。王族たる者、令嬢相手に礼節を保ち、愛想よくするのは当たり前の事だ。
僕も最初は、愛想良くしていた。
フランシス男爵令嬢も、僕に気があるそぶりをしながらすり寄ってきたから、僕も愛想よく、それでいてアリサに失礼のない程度にあしらっていた。
そこまではよかった。
問題はここからだ。
フランシス男爵令嬢と、アリサが出会ってから、どんどんとおかしくなっていった。
アリサは僕に見せないような笑顔をフランシス男爵令嬢に見せるようになって、そしてスマホなる箱に夢中になった。
「ねぇアリサ。何見ているの?」
アリサは疲れると、いつも一人になれる裏庭へと向かう。そして以前はそこで本を読んでいた。
けれど今手に持っているのは、スマホなる箱である。
フランシス男爵令嬢から貸してもらっているらしく、それにも少し腹立たしい。
同じものを国中探したけれど見つけられず、それに気づいたフランシス男爵令嬢が、僕に勝ち誇った顔でにやりと笑った時には、女性に対して初めて殺気を抱いた。
「アラン様」
僕に気付いたアリサは、ぱっと顔を赤らめると、さっとスマホを隠した。
何故隠すのか、それに僕は少しいらだたしくなる。
「何で隠すの?」
「え、あの……その」
アリサは耳まで真っ赤になると、僕の事を見上げて言った。
「あの……アラン様」
「ん?」
その上目使いは、卑怯だなぁと思いながらも、僕はそれだけでいらだちを消してしまう。
アリサは静かに言った。
「もし……リリーと結婚しても……私、ちゃんと祝福します」
「は?」
意味が分からない。突然の事に頭が追いつかず、眉間にしわがよる。
そこに、フランシス男爵令嬢が駆けこんでくると、アリサの体をぎゅっと抱きしめて言った。
「もう! アリサ! 私は誰とも結婚しないわ! 私はずっとアリサの傍にいるって決めたの!」
「え?」
「は?」
フランシス男爵令嬢はにっこりと笑うと、僕に勝ち誇った顔で言った。
「私、いずれアリサの侍女になろうと思っているの。だから、これからもずーっと一緒よ」
「え?」
「は?」
僕は顔を引きつらせるが、アリサはぱっと顔を明るくさせると、僕の方を見た。
「本当ですか!?」
何が本当なのだろうかと思い、ふと、気づく。
「まさかとは思うけれど、アリサは、僕とフランシス男爵令嬢との間を疑っていたのかい?」
そう告げると、アリサは視線を少し泳がせたのちに、こくりと、頷く。
可愛いか。
いや、アリサは可愛いのだ。けれどその疑惑については顔を引きつらせてしまう。
これはダメだと、僕は小さく息をつくと、アリサのことを抱き上げて、横抱きにすると言った。
「フランシス男爵令嬢。君とはまた今度話をする。今はアリサと話させてくれ」
フランシス男爵令嬢はその言葉に、少しだけ顔を歪ませるものの美しく一礼して下がる。
引き際が上手い女だと思いながら、僕はアリサを抱き上げたまま歩くと、裏庭のガゼボへと移動し、そこのベンチに腰掛ける。
アリサは顔を赤らめており、すぐに僕の膝の上から降りようとするけれど、僕は後ろからぎゅっとアリサを抱きしめながら言った。
「伝わっていなかったようだから、ちゃんと宣言しておくよ」
「ひゃっ……はい」
アリサの心臓の音が伝わってくる。
「僕は、アリサのことを世界で一番愛しているし、君以外を愛したことはない」
「え?」
驚いた顔で振り返られ、僕は、ちっともアリサに自分の気持ちが伝わっていなかったことにがっくりとしてしまう。
好意を伝えるのがこんなにも難しいことだとは思ってもみなかった。
「アリサ」
「は、はい」
顔を赤らめながら視線を泳がせるアリサは可愛い。
「僕が結婚したいと思うのも、僕が可愛いと思うのも、僕が愛おしいと思うのも、全部君だけなんだ」
「え!?……あ……えっと」
これまで誕生日に選んでいたプレゼントも、花も、言葉も、何一つ伝わっていなかったのだと寂しく思うけれど、これからちゃんと伝えていけばいいと、気持ちを切り替える。
「フランシス男爵令嬢には感謝だね。僕は今まで、君にちっとも気持ちが伝わっていないなんて、思いもしなかったよ。」
「え?……あの、アラン様」
「なに?」
「本当に、私のことを?」
これまで言っても伝わらないとは。
「愛してる」
僕はまっすぐに言葉を返す。
アリサには、ちゃんと伝えていかないとダメなのだなと考えながら、会う回数も増やしていこうと思案していた時、洋服をアリサがちょいちょいと引っ張る。
「?」
「私も、愛してます」
はい。
可愛い。
僕の婚約者は世界で一番可愛いと、僕は今日も叫ぶしかない。
★★★★
読んで下さる皆様、ありがとうございます。
つい、短編なのですが、つい、のろけが書きたくなりました。
ただのアランの、戯言にお付き合いいただき、ありがとうございました。
作者 かのん ← 名前覚えてもらえたら、作者は飛び跳ねて喜びます。
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