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第一話 モブ魔女令嬢
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「あ、ご覧になって。噂の魔女令嬢ですわ。」
「まぁ、本当。あの方、あれでも侯爵家の令嬢なのかしら。」
「本当にねぇ。なんでも、侯爵様には見限られたらしいですわよ。」
「まぁ!」
「学園を卒業した後結婚できるのかしら。」
「どうかしらねぇー。」
ひそひそとこちらを見ながら令嬢らの声が聞こえ、居心地の悪さにため息が出そうになる。
わざわざ人気のない裏庭で一人ボッチ飯をしているのにどうしてここを通るのだ。
それに、どこからそんな変な噂が流れたんだろうか。確かにお父様には、”お前には本当に困らされるねぇ”なんて事を言われるけど、愛されているし、見限られたってことはないと思う。
お母様なんて、私が魔法ばかりに夢中になっていると精霊達とクスクスと笑いながら”貴方ってば、本当に好きねぇ”なんてことを言われる。
やっと立ち去ってくれた令嬢らの背を見ながら、堪えていたため息を吐き出す。
はんっ!
魔女令嬢じゃないわよ!
私は、モブよ!
モブ中のモブで、貴方達だってモブよ!
そう。私はこの魔法や精霊なども出てくる乙女ゲーム【夕闇のキミ】のモブ令嬢である。
乙女ゲームだと気づいたのは、私が八歳の時。
私は、その日、同じ年くらいの令嬢や令息の集まる顔見せのお茶会で、一人の男の子に出会った。
彼は、この物語で幸せになれない唯一の人。
エイデン・ローシェン。ローシェン公爵家の跡取り息子であり、悪魔の呪いを受けた少年だ。
あの日、お茶会の席にて大人達から見えない位置で子ども達は習ったばかりの魔法を内緒で見せあっていた。その中には、二人の王子もいた。
魔法を習い始めたばかりの令嬢や令息のこうした行動は、この国ではままあることであり、執事らも内々でそれぞれの両親に報告しながらも、暗黙の了解として黙っていた。
「俺はこんな魔法も使えるぞ!」
「俺だってー!」
「まぁ、男の子達はまだまだ子どもねぇ。」
「そうですわねぇ。」
そして、過ちが起こる。
何と、王子が魔法を失敗し、その魔力量の多さに引き付けられたのか、恐ろしい悪魔を呼び出してしまったのである。
このようなことは前代未聞であった。
そして、その中で、冷静に動いたのが、エイデンであった。
最優先すべきは王子らの安全と考え、王子らを守るためにエイデンは悪魔に立ち向かう。
そして悪魔は勝てないと気付くと笑い声をあげ、消される瞬間に守られる王子らに呪いをかけようとした。
エイデンは悪魔は消し去ったものの防げないと悟ると、自らが盾となりその呪いを受けてしまう。
エイデンの顔には皹のような傷痕が右上から左下へと走り、その日からエイデンは精霊からの守護を失った。
それでもエイデンは王子二人を守ったことにより勲章を授与され、公爵家と王家の仲も深まった。
だがしかし、この呪いは卒業式の時に消したと思っていた悪魔が甦り、暴走してしまう。
ヒロインがハッピーエンドルートならば暴走をエイデンただ一人の犠牲だけで防げる。
バッドエンドならば国が滅びる。
私は、ハッピーエンドなのにハッピーではないと泣いた。
何故彼を殺す必要があるのだと制作者に涙で滲んだ手紙を出した。
私はゲームの中のどのキャラクターよりもエイデンが好きだった。
死んでほしくなかった。
なのに、どのルートでも彼は死んでしまう。
だから、この世界に転生出来て、そして記憶を取り戻せたのはきっと運命だ。
私は、だからこそ、令嬢らしさなんてものは全て投げ捨てて魔女令嬢と呼ばれながらも魔法を極めている。
全てはエイデンを救うためである。
そう。
なのに、どうしてなのだろうか。
「ちょっと、マデリーン?何でまたここで一人なの?」
「エイデン・・・。」
私はモブで魔女令嬢なのに、そんな彼の婚約者になっていた。
「まぁ、本当。あの方、あれでも侯爵家の令嬢なのかしら。」
「本当にねぇ。なんでも、侯爵様には見限られたらしいですわよ。」
「まぁ!」
「学園を卒業した後結婚できるのかしら。」
「どうかしらねぇー。」
ひそひそとこちらを見ながら令嬢らの声が聞こえ、居心地の悪さにため息が出そうになる。
わざわざ人気のない裏庭で一人ボッチ飯をしているのにどうしてここを通るのだ。
それに、どこからそんな変な噂が流れたんだろうか。確かにお父様には、”お前には本当に困らされるねぇ”なんて事を言われるけど、愛されているし、見限られたってことはないと思う。
お母様なんて、私が魔法ばかりに夢中になっていると精霊達とクスクスと笑いながら”貴方ってば、本当に好きねぇ”なんてことを言われる。
やっと立ち去ってくれた令嬢らの背を見ながら、堪えていたため息を吐き出す。
はんっ!
魔女令嬢じゃないわよ!
私は、モブよ!
モブ中のモブで、貴方達だってモブよ!
そう。私はこの魔法や精霊なども出てくる乙女ゲーム【夕闇のキミ】のモブ令嬢である。
乙女ゲームだと気づいたのは、私が八歳の時。
私は、その日、同じ年くらいの令嬢や令息の集まる顔見せのお茶会で、一人の男の子に出会った。
彼は、この物語で幸せになれない唯一の人。
エイデン・ローシェン。ローシェン公爵家の跡取り息子であり、悪魔の呪いを受けた少年だ。
あの日、お茶会の席にて大人達から見えない位置で子ども達は習ったばかりの魔法を内緒で見せあっていた。その中には、二人の王子もいた。
魔法を習い始めたばかりの令嬢や令息のこうした行動は、この国ではままあることであり、執事らも内々でそれぞれの両親に報告しながらも、暗黙の了解として黙っていた。
「俺はこんな魔法も使えるぞ!」
「俺だってー!」
「まぁ、男の子達はまだまだ子どもねぇ。」
「そうですわねぇ。」
そして、過ちが起こる。
何と、王子が魔法を失敗し、その魔力量の多さに引き付けられたのか、恐ろしい悪魔を呼び出してしまったのである。
このようなことは前代未聞であった。
そして、その中で、冷静に動いたのが、エイデンであった。
最優先すべきは王子らの安全と考え、王子らを守るためにエイデンは悪魔に立ち向かう。
そして悪魔は勝てないと気付くと笑い声をあげ、消される瞬間に守られる王子らに呪いをかけようとした。
エイデンは悪魔は消し去ったものの防げないと悟ると、自らが盾となりその呪いを受けてしまう。
エイデンの顔には皹のような傷痕が右上から左下へと走り、その日からエイデンは精霊からの守護を失った。
それでもエイデンは王子二人を守ったことにより勲章を授与され、公爵家と王家の仲も深まった。
だがしかし、この呪いは卒業式の時に消したと思っていた悪魔が甦り、暴走してしまう。
ヒロインがハッピーエンドルートならば暴走をエイデンただ一人の犠牲だけで防げる。
バッドエンドならば国が滅びる。
私は、ハッピーエンドなのにハッピーではないと泣いた。
何故彼を殺す必要があるのだと制作者に涙で滲んだ手紙を出した。
私はゲームの中のどのキャラクターよりもエイデンが好きだった。
死んでほしくなかった。
なのに、どのルートでも彼は死んでしまう。
だから、この世界に転生出来て、そして記憶を取り戻せたのはきっと運命だ。
私は、だからこそ、令嬢らしさなんてものは全て投げ捨てて魔女令嬢と呼ばれながらも魔法を極めている。
全てはエイデンを救うためである。
そう。
なのに、どうしてなのだろうか。
「ちょっと、マデリーン?何でまたここで一人なの?」
「エイデン・・・。」
私はモブで魔女令嬢なのに、そんな彼の婚約者になっていた。
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