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第二話 愛しの呪われた令息
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エイデンは、陶器のように白い肌をしており、美しい顔には皹が入っている。
心ない人は、そんな彼に壊れた人形のようだなどと言う。
そんなことないのに。
「マデリーン?また怖い顔してる。ほら、リラックス。眉間にシワがよっているよ。」
私の眉間をぐりぐりと押してくるエイデンとどうして婚約出来たのかは未だに謎である。
あのお茶会の後すぐに公爵家より婚約の申し出があり、うちが大騒ぎになったのが懐かしい。そして公爵家からの申し出を断ることも出来ず、また、勲章をもらうほど勇敢なエイデンとの婚約を断ることも外聞が悪く、婚約を受ける事となった。
両親は最初こそ心配していたが、エイデンの呪いを解こうと私が魔法に熱中する様子を見てほっとしたと、言っていた。
だが、言いたい。
わ、私がエイデンの呪いを解きたいと思ったのは婚約者だからとかそんな理由ではなく、エイデン自身が・・その・・・好きだからだ。
いや、ゲームのキャラクターとして・・・・
「ほーら。マデリーン?また、眉間にシワが寄っているよ。」
ぐりぐりとまた眉間のシワを伸ばされる。
そんな事でさえ顔を真っ赤にしてしまう私を見て、エイデンは優しく微笑むと幸せそうな顔で笑うのだ。
「ふふ。マデリーンは可愛いなぁ。」
「かっ!可愛くなどありません!」
思わず大きな声が出てしまったが、そんな様子を見てエイデンはクツクツと笑い声を漏らしている。
はっきり言っておこう。私、マデリーンは魔女令嬢と言われるくらいに外見が根暗だ。
おばあ様からの隔世遺伝によって髪の毛は直毛の真っ黒。瞳は濃い紫。体系はほっそりとしていると言うよりも痩せすぎていて、胸も・・・・ない。まったいら・・・まな板・・・・・・うぅ。
それに比べてエイデンは美しい。
顔に皹が入っていても私はとても美しいと思う。
陶器のように白い肌に、若草色の優しい瞳。髪の毛はふんわりとしていて、精霊からの守護をなくしてしまったために真っ白になっている。
この国の人々は精霊と共に生きている。
エイデンも呪いを受ける前は精霊に愛されていたという。
けれど、精霊は穢れを嫌う。
呪われて穢れてしまったエイデンの元にはもう、精霊は訪れないだろうと言われている。
それなのに、この人は、そんな事はどうでもいいんだと言うように笑う。
「エイデンは意地悪だわ。」
「ごめんごめん。許して。キミがあまりに可愛いから。」
「可愛くなどありません。」
「はいはい。まぁ僕にとっては可愛いからいいじゃないか。あ、そう言えば、今日はいつも通りでいいのだよね?」
「あ、はい。そうです。いつも通り、私の家でお願いします。」
「はい。分かりました。ではまたね。愛しいマデリーン。昼からの授業に遅れないようにするんだよ。」
「遅れませんよ。」
「うん。ではね。」
そう言うと、エイデンはマデリーンの頭を優しく撫でてから立ち去って行った。
撫でられた頭が熱を帯び、私は両手で顔を覆うとしばらくの間悶えた。
あんな風に触れるのはやめてほしい。愛されているのかと勘違いしてしまいそうになる。
けれど、マデリーンはしばらくしてからため息をつく。
立ち上がり、近くの池に映る自分を見てさらに大きくため息をついた。
池に映るのは、真っ黒な魔女のようなみすぼらしい娘。
一つも可愛い所はなく、令嬢だと言うのに令嬢らしさのかけらもない。
きっと、エイデンの呪いが解けてしまえば自分など婚約者ではいられなくなるであろう。
あれだけの美貌を持つエイデンだ。
家柄もよし、美貌もよし、性格もよし、そんなエイデンが呪いが解けても自分などを婚約者にしておくとは到底思えなかった。
だからこそ、マデリーンは心に境界線を引く。
絶対にエイデンを好きにならない。
私はゲームのキャラクターのエイデンが好きで、だからこそ救いたいだけだ。
だから、この、胸がドキドキしているのは、勘違いだ。
マデリーンは必死にそう思い込もうと胸を押さえた。
愛しいと感じる心を圧し殺した。
心ない人は、そんな彼に壊れた人形のようだなどと言う。
そんなことないのに。
「マデリーン?また怖い顔してる。ほら、リラックス。眉間にシワがよっているよ。」
私の眉間をぐりぐりと押してくるエイデンとどうして婚約出来たのかは未だに謎である。
あのお茶会の後すぐに公爵家より婚約の申し出があり、うちが大騒ぎになったのが懐かしい。そして公爵家からの申し出を断ることも出来ず、また、勲章をもらうほど勇敢なエイデンとの婚約を断ることも外聞が悪く、婚約を受ける事となった。
両親は最初こそ心配していたが、エイデンの呪いを解こうと私が魔法に熱中する様子を見てほっとしたと、言っていた。
だが、言いたい。
わ、私がエイデンの呪いを解きたいと思ったのは婚約者だからとかそんな理由ではなく、エイデン自身が・・その・・・好きだからだ。
いや、ゲームのキャラクターとして・・・・
「ほーら。マデリーン?また、眉間にシワが寄っているよ。」
ぐりぐりとまた眉間のシワを伸ばされる。
そんな事でさえ顔を真っ赤にしてしまう私を見て、エイデンは優しく微笑むと幸せそうな顔で笑うのだ。
「ふふ。マデリーンは可愛いなぁ。」
「かっ!可愛くなどありません!」
思わず大きな声が出てしまったが、そんな様子を見てエイデンはクツクツと笑い声を漏らしている。
はっきり言っておこう。私、マデリーンは魔女令嬢と言われるくらいに外見が根暗だ。
おばあ様からの隔世遺伝によって髪の毛は直毛の真っ黒。瞳は濃い紫。体系はほっそりとしていると言うよりも痩せすぎていて、胸も・・・・ない。まったいら・・・まな板・・・・・・うぅ。
それに比べてエイデンは美しい。
顔に皹が入っていても私はとても美しいと思う。
陶器のように白い肌に、若草色の優しい瞳。髪の毛はふんわりとしていて、精霊からの守護をなくしてしまったために真っ白になっている。
この国の人々は精霊と共に生きている。
エイデンも呪いを受ける前は精霊に愛されていたという。
けれど、精霊は穢れを嫌う。
呪われて穢れてしまったエイデンの元にはもう、精霊は訪れないだろうと言われている。
それなのに、この人は、そんな事はどうでもいいんだと言うように笑う。
「エイデンは意地悪だわ。」
「ごめんごめん。許して。キミがあまりに可愛いから。」
「可愛くなどありません。」
「はいはい。まぁ僕にとっては可愛いからいいじゃないか。あ、そう言えば、今日はいつも通りでいいのだよね?」
「あ、はい。そうです。いつも通り、私の家でお願いします。」
「はい。分かりました。ではまたね。愛しいマデリーン。昼からの授業に遅れないようにするんだよ。」
「遅れませんよ。」
「うん。ではね。」
そう言うと、エイデンはマデリーンの頭を優しく撫でてから立ち去って行った。
撫でられた頭が熱を帯び、私は両手で顔を覆うとしばらくの間悶えた。
あんな風に触れるのはやめてほしい。愛されているのかと勘違いしてしまいそうになる。
けれど、マデリーンはしばらくしてからため息をつく。
立ち上がり、近くの池に映る自分を見てさらに大きくため息をついた。
池に映るのは、真っ黒な魔女のようなみすぼらしい娘。
一つも可愛い所はなく、令嬢だと言うのに令嬢らしさのかけらもない。
きっと、エイデンの呪いが解けてしまえば自分など婚約者ではいられなくなるであろう。
あれだけの美貌を持つエイデンだ。
家柄もよし、美貌もよし、性格もよし、そんなエイデンが呪いが解けても自分などを婚約者にしておくとは到底思えなかった。
だからこそ、マデリーンは心に境界線を引く。
絶対にエイデンを好きにならない。
私はゲームのキャラクターのエイデンが好きで、だからこそ救いたいだけだ。
だから、この、胸がドキドキしているのは、勘違いだ。
マデリーンは必死にそう思い込もうと胸を押さえた。
愛しいと感じる心を圧し殺した。
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