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第七話 王城に舞い降りた悪魔エイデン
しおりを挟むその日は、通常であれば王城の一室にて教師達による講義を受ける予定であった。
だが、一通の手紙によりクリストファーとセドリックの顔に緊張が走る。
【親愛なる王子様方へ。本日、そちらへ参ります。貴方の学友となるエイデンより。】
あの悪魔の呪いの一件から、エイデンは国王陛下から絶大なる支持を受け、クリストファーとセドリックの話し相手としてよく城に招かれることがあった。
最初こそエイデンにかけられた呪いに恐怖していた二人であったが、その後に悟る。
恐ろしいのは呪いではない。このエイデンという人間そのものである、と。
クリストファーとセドリックが王族として奢ることなく、自分という人間の器を把握して成長できたのはエイデンの功績が大きい。だが、その反面、二人は幼いうちから様々な事でエイデンという人間の恐ろしさを植え込まれていた。
友と言えば聞こえはいいだろう。
そう。二人だってエイデンの事を友だとは思っている。
だが、一つ間違えば国を滅ぼしかねない悪魔だとも思っている。
「おい。セドリック、お前何かしたのか?」
恐る恐るクリストファーがそう尋ねると、セドリックはブンブンと何度も首を横に振った。
「何もしていない!兄様ではないのか?!」
「私か?いや・・・・していないと思うが。」
二人は青ざめる顔で、何か自分達がしでかしたのではないかとここ最近の事を頭の中でめぐらせるが、どうにもエイデンの逆鱗に触れるようなことはしていないと判断する。
ならば、と二人は思う。
エイデンという人間の一番の逆鱗はその婚約者しかない。
二人が青ざめてその考えに行きついた時であった。執事からエイデンが到着したとの知らせを受け、そして部屋へとエイデンが通されてやってきたのである。
表情は笑顔。
だが、その笑顔が顔に張り付けられているだけの仮面だという事は二人にはよく分かっている。
「王子様方、本日は時間を作っていただきありがとうございます。」
クリストファーとセドリックは気を引き締めてエイデンに笑みを返すと言った。
「な、何。友達だろう?口調もいつも通りでかまわんさ。さぁ、座れ。今日はどうしたんだ?」
席に着いたエイデンに執事が紅茶を入れる。
それを一口エイデンは飲み、顔を上げた瞬間、クリストファーもセドリックも全身の鳥肌が立つのを感じた。
「僕のマデリーンが、何故かキミたち二人と隣国の王子について調べていたんだ。何でかな?」
そんなのこっちが知りたいわ!と、二人の王子は内心で叫んだ。
「お、おそらくだが、キミの呪いを解くためだろう?」
「そ、そうでないと、キミの婚約者が俺達を調べる理由なんてないだろう?」
「ふむ。確かに。でも、隣国の王子が来るなんて、僕は知らなかったけれど、来るのかい?」
その言葉に王子二人は目を丸くすると頷いた。
「あぁ、まだ内々にしか聞いてはいないが・・・どうしてそれを知っている?」
エイデンはふむと息をつくと、昔からマデリーンには未来が見えているような発言をする事を思いだし頭の中で思案していく。
そして、エイデンはマデリーンに悪い虫が憑かないように、にっこりと笑みを浮かべると言った。
「じゃあ、取りあえず、その王子の事を教えて。あと、二人とも分かっていると思うけれど。」
王子二人は両手を上げて言った。
『キミの婚約者には、必要以上に近づかない。』
エイデンは満足そうに頷いた。
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