【完結】モブ魔女令嬢は絶対死んじゃう呪われた令息の婚約者!

かのん

文字の大きさ
10 / 10

第十話 最終話

しおりを挟む
 マデリーンが目を覚ますと、見慣れない天井がそこにはあった。

「あら・・・ここは?」

 体をゆっくりと起こすと、全身が気怠くて仕方がない。

 何故だろうかと、何度か瞬きを繰り返していくうちに悪魔との戦いを思いだす。

「エイデン・・・そうだ。悪魔を倒して。」

「そして君は倒れた。」

「え?」

 振り返ると、そこには嬉しそうに微笑みを浮かべるエイデンの姿があった。

 エイデンは持っていた朝食の乗ったプレートを机の上に置くと、ベッドに腰掛け、マデリーンの髪を優しく撫でた。

「やっと眠り姫のお目覚めだね。」

「エイデン、あの・・・ここはどこ?」

「ん?ここは僕の家だよ。キミは一週間も眠り続けていたんだ。そろそろ魔力も安定してきたから起きるだろうと思っていたけど、ふふ。安心した。ちゃんと目覚めてくれてありがとう。」

「え?一週間も眠っていたの?」

「うん。でも、キミが眠っている間栄養とかは僕の魔力を通してキミに送っていたからそこまでは辛くないでしょう?」

「えぇ?!・・えっと、はい。」

 マデリーンはエイデンの元に戻った姿を見て、ほっと息をついた。

 夢ではなかったのだ。

 ちゃんとエイデンは本来の姿を取り戻し、精霊の守護も戻っている。

 マデリーンは嬉しい反面、悲しみが胸の中に押し寄せてくるのを感じた。

 呪いが解けた今、もう自分が婚約者でいる必要はないのである。

 今のエイデンならば、きっとたくさんの求婚があるはずだ。

 自分なんかと結婚なんてしなくても、エイデンはもっと美しい令嬢と結婚できる。

 そう思うと涙がでそうになり、ぐっと堪えるとマデリーンは口を開いた。

「エイデンが元に戻って、良かったわ。これで、婚約はもういいわね。」

 エイデンはにっこりと笑うと、マデリーンの手を両手で包んで言った。

「うん。もう婚約はいいよ。」

 はっきりとしたその口調にマデリーンの胸は押しつぶされそうになり、やはりエイデンも自分なんかとは早く婚約破棄したかったのだと涙がぽとりとこぼれた。

 エイデンは目を丸くすると慌ててマデリーンを抱きしめた。

「どうしたの?僕のマデリーン。何故?涙が?!どこか、痛いの?」

「こ・・心が痛いの。」

「え?」

 マデリーンは本当は言うつもりのなかった言葉が口から零れ落ちた。

「す・・・・捨てないで。」

「はぁ!?」

 エイデンは今まで聞いたことのないような声をあげ、驚いた眼でマデリーンを見ると表情が変わり、怒っているように目を細めた。

「マデリーン・・・キミ、もしかして僕と婚約破棄するつもりでいたのかい?」

 背筋が急に寒くなり、マデリーンの涙は一瞬で引っ込んだ。何故エイデンが怒りだしたのかがマデリーンには分からない。
 
「え?だ・・・だって・・・婚約はもういいって。」

「はぁ。うん。もう婚約状態は嫌だから、はいこれ、署名して。」

「え?」

「ほら、ここ、名前を書いて。」

「え?え?」

「さぁ早く。」

「え?えぇ。」

 マデリーンは意味が分からないままに、取りあえずエイデンに言われた様に一枚の紙に署名を行った。

 エイデンはその瞬間破顔し、嬉しそうに笑うとマデリーンをぎゅっと抱きしめなおした。

「え?エイデン?」

「ふふ。これで僕達は夫婦だよ。」

「はぁ?!」

 今度はマデリーンが素っ頓狂な声をあげ、慌ててエイデンの手からその紙を取ると内容を読んだ。

 だが読み終えた瞬間固まってしまう。

「これ・・結婚の誓約書。しかも・・魔法が組まれているから消えないやつ。」

「うん。」

「あと何故か国王陛下らの許可の署名もされている。」

「ふふ。もちろん。キミは僕のものだからね。」

「え?・・・あの・・・私で・・・本当にいいの?」

 マデリーンは未だに信じられずに呆然としていると、エイデンはポケットから指輪を取り出しそれをマデリーンの指にはめながら言った。

「僕はキミを心から愛している。キミを他の誰かに渡す気はないし、僕もキミ以外を好きになる事はない。」

「え?・・・ほ、本当に?」

「もちろん。マデリーンは?僕の事が嫌い?」

「え?そんなわけない!私は、私もエイデンを愛しているわ!」

「本当に?僕達、両思いだね。」

 次の瞬間マデリーンはベッドに押し倒されてきょとんと首を傾げる。

「エイデン?どうしたの?」

「ふふふ。大丈夫だよ。キミの為に国王陛下も魔法教会も全て黙らせる手筈を取ったからね。隣国にキミの事が漏れないように緘口令も引いてあるから、キミが狙われる心配もないよ。」

「え?」

 いつの間にそんな大事になっているのだろうかと思っていると、次の瞬間エイデンの唇がマデリーンの唇に落ちた。

「へ?」

 マデリーンは一瞬で顔を真っ赤に染めた。

「ふふ。可愛いマデリーン。大切にするからね。」

「え?え?」

 顔に降り注ぐキスの雨にマデリーンが身をよじった瞬間に耳にふっと息をかけられマデリーンの口から甘い息が漏れる。



 こうしてマデリーンはエイデンにその身も心も捕まり、式を挙げる前に夫婦となった。

 それからほどなくして盛大な結婚式が行われる。

 エイデンはマデリーンをずっと屋敷に閉じ込めておきたかったけれど彼女は閉じ込められるほどおとなしい娘ではなく今も以前と変わらずに魔法の研究に没頭している。

 ただし、あまり夢中になるとエイデンによって足腰立たなくさせられるため、以前よりはほどほどにしているそうな。

 マデリーンの魔女としての才能を欲する国をエイデンが潰そうとしたり、利用しようとした商会を壊滅させたりしたことは二人の優秀な王子によって隠蔽された。

 ちなみに、ヒロインだったはずの少女はその才能を生かしマデリーンの部下になっている。

 マデリーンはヒロインはやはり王子とくっつくのだろうかと様子を見ていたのだが、まったく関係のない魔法協会のローワンと婚約をしたときには驚いた。

 いや、ローワンが女に興味があったこと自体に驚いた。魔法馬鹿だとマデリーンは思っていた。

 それはエイデンも同じだったようで、顔がかなり引きつっていたのを覚えている。

「エイデン、愛しているわ。」

「僕も愛しているよ。マデリーン。」

 そんなこんなでモブ魔女令嬢は絶対に死んじゃう呪われた令息の呪いを見事に打ち破り、幸せな結婚生活をおくることになりましたとさ。

 おーしーまい。



★★★★★★★★

 最後まで読んで下さりありがとうございました!
 これにて、マデリーンとエイデンのおはなしはおしまいとなります。
 二人が末永く幸せでありますように。


 かのん



しおりを挟む
感想 33

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(33件)

セライア(seraia)

らぶらぶハッピーエンド!

エイデンの腹黒さは、結婚してからが本領発揮な気が。。。
溺愛しすぎて監禁できず、彼女に振り回されながら暮らすんでしょうね(笑)

2人の子供たちが生まれながらのトラブルメーカーなのは確実、退屈知らずの一族になりそう。。。

解除
うさぎ
2019.11.06 うさぎ

完結おめでとうございます!!!

解除
Kei
2019.11.06 Kei

とても面白かったです!いつも更新を楽しみにしていたので終わってしまうのが悲しい!!番外編なども見てみたいと思いました。

解除

あなたにおすすめの小説

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

全ルートで破滅予定の侯爵令嬢ですが、王子を好きになってもいいですか?

紅茶ガイデン
恋愛
「ライラ=コンスティ。貴様は許されざる大罪を犯した。聖女候補及び私の婚約者候補から除名され、重刑が下されるだろう」 ……カッコイイ。  画面の中で冷ややかに断罪している第一王子、ルーク=ヴァレンタインに見惚れる石上佳奈。  彼女は乙女ゲーム『ガイディングガーディアン』のメインヒーローにリア恋している、ちょっと残念なアラサー会社員だ。  仕事の帰り道で不慮の事故に巻き込まれ、気が付けば乙女ゲームの悪役令嬢ライラとして生きていた。  十二歳のある朝、佳奈の記憶を取り戻したライラは自分の運命を思い出す。ヒロインが全てのどのエンディングを迎えても、必ずライラは悲惨な末路を辿るということを。  当然破滅の道の回避をしたいけれど、それにはルークの抱える秘密も関わってきてライラは頭を悩ませる。  十五歳を迎え、ゲームの舞台であるミリシア学園に通うことになったライラは、まずは自分の体制を整えることを目標にする。  そして二年目に転入してくるヒロインの登場におびえつつ、やがて起きるであろう全ての問題を解決するために、一つの決断を下すことになる。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら没落寸前だったので、お弁当屋さんになろうと思います。

皐月めい
恋愛
「婚約を破棄してほしい」 そう言われた瞬間、前世の記憶を思い出した私。 前世社畜だった私は伯爵令嬢に生まれ変わったラッキーガール……と思いきや。 父が亡くなり、母は倒れて、我が伯爵家にはとんでもない借金が残され、一年後には爵位も取り消し、七年婚約していた婚約者から婚約まで破棄された。最悪だよ。 使用人は解雇し、平民になる準備を始めようとしたのだけれど。 え、塊肉を切るところから料理が始まるとか正気ですか……? その上デリバリーとテイクアウトがない世界で生きていける自信がないんだけど……この国のズボラはどうしてるの……? あ、お弁当屋さんを作ればいいんだ! 能天気な転生令嬢が、自分の騎士とお弁当屋さんを立ち上げて幸せになるまでの話です。

悪役令嬢なのに下町にいます ~王子が婚約解消してくれません~

ミズメ
恋愛
【2023.5.31書籍発売】 転生先は、乙女ゲームの悪役令嬢でした——。 侯爵令嬢のベラトリクスは、わがまま放題、傍若無人な少女だった。 婚約者である第1王子が他の令嬢と親しげにしていることに激高して暴れた所、割った花瓶で足を滑らせて頭を打ち、意識を失ってしまった。 目を覚ましたベラトリクスの中には前世の記憶が混在していて--。 卒業パーティーでの婚約破棄&王都追放&実家の取り潰しという定番3点セットを回避するため、社交界から逃げた悪役令嬢は、王都の下町で、メンチカツに出会ったのだった。 ○『モブなのに巻き込まれています』のスピンオフ作品ですが、単独でも読んでいただけます。 ○転生悪役令嬢が婚約解消と断罪回避のために奮闘?しながら、下町食堂の美味しいものに夢中になったり、逆に婚約者に興味を持たれたりしてしまうお話。

【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!

くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。 ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。 マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ! 悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。 少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!! ほんの少しシリアスもある!かもです。 気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。 月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?

無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。 「いいんですか?その態度」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。