【完結】一緒にいてくれますか?

かのん

文字の大きさ
1 / 17

第一話

しおりを挟む

 大学の頃は、金はなくてもみんなで集まってはどんちゃん騒ぎをしていた。

 誰がいうでもなく自然と皆で集まって、他愛ない話や夢をただただ語る。

 面白い動画を撮ろうと無駄にはしゃいで、ドライブにでかけたり、友達と速食い競争したり、何が楽しかったかと聞かれれば、よく分からないと答える。

 それでも、楽しかったと言える。

 大学の友人らと連絡を取らなくなってからどのくらいが経つだろうか。

 社会人になって7年目。

 年はもうすぐ三十を迎えるというのに、自分が子どもの頃に描いていたような大人にはなれていなくてびっくりしてしまう。

 そんな休日の朝。
 残っていた仕事を片付けて、昼飯を作ろうと腰を上げた時、玄関のチャイムがなった。

「はぁーい。」

 久しぶりに自分の家のチャイムがなったなぁなどと考えながら扉を開けると、そこには見たことのない青年が立っていた。

 大きな荷物を持ち、二重の切れ長の瞳をふにゃりと和らげて微笑んでいる。

「久しぶり。豊兄ちゃん。」

 その呼び名に、一瞬、幼い日の姿が重なる。

「蓮、、か?」

 姉の息子である柊 蓮は、今年で23になるはずだ。自分でもよく思い出せたなと思いながら首を傾げた。

「久しぶりだな。どうした?」

 蓮はにっこりと笑うと、幼い頃よりもしっかりとした大人の声で言った。

「俺、こっちで就職したからさ、一緒に住まわせてもおうと思ってきちゃった。」

 その言葉に、目が点になりなってしまう。

「は?」

「母さんから、兄ちゃん一軒家を借りてるから大丈夫だろって言われてさ。」

 思わず携帯を取りにリビングに帰ると、即刻姉に電話をいれた。

『もしもし?』

 久しぶりに姉の声を聞いたのにもかかわらず、すぐに本題を突きつけてしまう。

「聞いてないんだけど。」

 すると、大きな笑い声が聞こえ、はっきりとした声で返された。

『言ってないもん。』

 三十こえた女が、もん、と可愛らしく言っても駄目だぞと内心思いながら、返事を返す。

「なんでいきなり?」

『いきなりじゃないわよ。蓮は小さい頃からずっと言っていたでしょう。大きくなったらあんたと暮らすって。』

「いやいやいや、おかしいだろ。」

『そうね。でも、もうここまできたら私はまぁいいかと。残念だけど、あの子頑固だからあんたはもう逃げられないわよ。ご愁傷様。』

「は?どういう意味だよ。」

『あとは本人と話して。じゃあね。』

「はぁ?もしもし?」

 切れた電話に何回か返事がないか話しかけてしまったが、当たり前だが返事はない。

「話、終わった?」

 後ろを振り向くと、自分より少し背の高くなった甥がたっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

前世が悪女の男は誰にも会いたくない

イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です ーーーやってしまった。 『もういい。お前の顔は見たくない』 旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。 前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める 頑張って運命を回避しようとする話です

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

処理中です...