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第二話
しおりを挟むにこにこと笑顔の蓮を、さすがにすぐに追い返す言葉を言うことは難しくため息をつくと言った。
「お茶でも飲むか?」
「うん。ありがとう。」
キッチンに行き、急須でお茶を入れながら蓮の方へと視線を向けると、珍しそうに部屋の中を見渡していた。
和室にあぐらをかき、座る蓮の前にお茶を置くと本題に入る。
「それで、なんでいきなり?」
すると蓮は首を傾げた。
「昔約束したでしょ。覚えてねーの?ひでー。」
自分は約束を忘れているのだろうかと不安になり思わず謝ってしまう。
「すまない、、どんな約束だ?」
蓮は昔を思い出しているのか、天井を見つめながら言った。
「俺さ、昔言っただろ。兄ちゃんが好きだって。一緒に暮らしたいって。そしたら兄ちゃん言ったじゃん。大きくなったらなって。」
「え、、、?」
言葉の意味がわからず、呆然としていると、蓮はさらに続けた。
「でも、母さんに言ったら、その気持ちが本物か周りをよく見て、いろんな人と関わりなさいって言われてさ、俺ちゃんと色んなやつと遊んだり、関わったりしたんだ。けど、無理だよ。」
蓮はじっとこちらを見つめてくる。
熱のこもった瞳に思わず逃げたくなる衝動にかられる。
「俺、兄ちゃんが、恋愛敵な意味で好き。ずっと一緒にいたい。けとさ、兄ちゃんはそんなこと考えた事もなかっただろ?だからとりあえず一緒に暮らして、考えてみて。」
そう言うなり蓮は立ち上がり背伸びをすると、自分の持ってきた買い物袋を持ち上げた。
「とりあえずさ、兄ちゃんも昼飯まだだろ。作るから一緒に食べようぜ。」
笑った口元からは八重歯が見えて、小さな頃の表情と重なる。
「あ、、、あぁ。」
そう返事を返しながら、いつの間にか有無を答える間もなく一緒に暮らすことになっていることに気づく。
だが、鼻歌を歌いながら料理を始める蓮に今更一緒に暮らせないなど言えず、ため息がもれる。
まぁ、しばらく一緒に暮らして、仕事がなれた頃に新しく住む場所を紹介すればいいだろう。
そんな事を思い、口を開いた。
「俺はお前に気持ちを返せないと思うぞ。」
三十年も生きていればいろんなやつに会うし、バイだったり、ゲイだったりの友達だっていた。
だから偏見はないが、自分の気持ちを伝えておくのは礼儀だと思う。
蓮は苦笑を浮かべた。
「でもさ、多分兄ちゃんは俺が諦めるのを、諦めると思うよ。だって小さいときから兄ちゃん一筋なんだぜ。兄ちゃん諦めるのなんて無理だよ。」
その言葉になんと返せばいいのか分からず、困惑してしまう。
「まぁ、頑張れ。兄ちゃん。」
これは、どういう事なのだろうかと、頭を抱えたくなった。
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