1 / 16
第一話
しおりを挟む
雷鳴が轟く、闇に包まれた岩肌のその岸壁で、二つの影が向き合う。
「これでお終いだな。」
冷たい声が響き、黄金色に輝く光を纏った剣が心臓に食い込んだ。
「ッは!お終い?」
「そうだ。人は愛を育み世界に光をもたらす!その世界に闇はいらぬ!」
「愛?!なんだそれは。我は、消えぬわ!」
胸にギリギリと音を立てながら食い込んでくる剣圧はすさまじく、息を吸うのすら苦しみを伴う。
勇者は笑みを浮かべて言う。
「そうだろうか?お前という混沌の闇は消えうせるのだ。」
勇者という生き物は、物の性質が見えないようだ。
混沌の闇をその聖なる光で消し去れると本当に思っているのであろうか。
そうなのであれば、人とは本当に哀れな生き物だ。
「消えはしない。馬鹿が。」
人をあざ笑うかのように述べると、勇者の顔が歪む。
青い空のような瞳と美しい金色の髪を宿した男は人で言うならば勇者として讃えられるに値するものなのであろう。
だが、我からしてみればなんという阿呆か。
自分達の事しか考えない人という生き物にほとほと愛想が尽きる。
「いずれ蘇り、この世界を混沌の闇で包んで見せる。」
そう言うと勇者の瞳がギラリと輝く。
そのギラギラとした瞳でよく聖なる力が操れるものだと思う。
この男はいずれ、この国の王として立つのであろう。
勇者として世界を救ったものとして。
だが、いずれ必ずこの世界など滅ぼしてやろう。
「忘れるなよ、勇者。我は必ず蘇る。その時には必ず、この世界を混沌の闇へと呑み込むぞ!忘れるな!」
聖なる光に貫かれた心臓から、毒々しいまでに黒い液体があふれ出る。
地面に落ちればそれはじゅっと音を立てて地を燃やす。
生あるものからすれば我など憎い存在であろう。
混沌と闇しか生み出す事の出来ない、破滅を呼ぶ存在だ。
生あるものが我を消し去りたいという思いは分からなくもない。
だが。
「いずれ我は蘇る!その時はこの世界を混沌の闇で呑み込んでやる!」
「消えされぇぇぇぇぇ!」
聖なる光が溢れ、我を消し去るのが分かる。
体に光が溢れ、引き裂かれるような激痛が針で刺されるような苦痛が全身に広がる。
それでも我は泣かぬ!
覚えていろ。
必ず、お前をこの手で葬ってやろう。
必ずだ!
そう、思っていた時期もありました。
ええ。ええ。そうですね。
混沌の闇を生み出す存在として粋がっていた時期がありましたよ。
だってね、そういう意義をもって生まれたのでね、そりゃあそう粋がるしかないんです。
でもねぇ、ダメですね。
今の世界にはこの子がおりますから、この子を差し置いて世界を混沌に落とすとか、いやそんなことしている場合じゃないですよ。
片手間で子育てが出来るか?
できませんよ。
我、不器用ですから。
これは混沌の闇が、子育てに奮闘する物語である。
「これでお終いだな。」
冷たい声が響き、黄金色に輝く光を纏った剣が心臓に食い込んだ。
「ッは!お終い?」
「そうだ。人は愛を育み世界に光をもたらす!その世界に闇はいらぬ!」
「愛?!なんだそれは。我は、消えぬわ!」
胸にギリギリと音を立てながら食い込んでくる剣圧はすさまじく、息を吸うのすら苦しみを伴う。
勇者は笑みを浮かべて言う。
「そうだろうか?お前という混沌の闇は消えうせるのだ。」
勇者という生き物は、物の性質が見えないようだ。
混沌の闇をその聖なる光で消し去れると本当に思っているのであろうか。
そうなのであれば、人とは本当に哀れな生き物だ。
「消えはしない。馬鹿が。」
人をあざ笑うかのように述べると、勇者の顔が歪む。
青い空のような瞳と美しい金色の髪を宿した男は人で言うならば勇者として讃えられるに値するものなのであろう。
だが、我からしてみればなんという阿呆か。
自分達の事しか考えない人という生き物にほとほと愛想が尽きる。
「いずれ蘇り、この世界を混沌の闇で包んで見せる。」
そう言うと勇者の瞳がギラリと輝く。
そのギラギラとした瞳でよく聖なる力が操れるものだと思う。
この男はいずれ、この国の王として立つのであろう。
勇者として世界を救ったものとして。
だが、いずれ必ずこの世界など滅ぼしてやろう。
「忘れるなよ、勇者。我は必ず蘇る。その時には必ず、この世界を混沌の闇へと呑み込むぞ!忘れるな!」
聖なる光に貫かれた心臓から、毒々しいまでに黒い液体があふれ出る。
地面に落ちればそれはじゅっと音を立てて地を燃やす。
生あるものからすれば我など憎い存在であろう。
混沌と闇しか生み出す事の出来ない、破滅を呼ぶ存在だ。
生あるものが我を消し去りたいという思いは分からなくもない。
だが。
「いずれ我は蘇る!その時はこの世界を混沌の闇で呑み込んでやる!」
「消えされぇぇぇぇぇ!」
聖なる光が溢れ、我を消し去るのが分かる。
体に光が溢れ、引き裂かれるような激痛が針で刺されるような苦痛が全身に広がる。
それでも我は泣かぬ!
覚えていろ。
必ず、お前をこの手で葬ってやろう。
必ずだ!
そう、思っていた時期もありました。
ええ。ええ。そうですね。
混沌の闇を生み出す存在として粋がっていた時期がありましたよ。
だってね、そういう意義をもって生まれたのでね、そりゃあそう粋がるしかないんです。
でもねぇ、ダメですね。
今の世界にはこの子がおりますから、この子を差し置いて世界を混沌に落とすとか、いやそんなことしている場合じゃないですよ。
片手間で子育てが出来るか?
できませんよ。
我、不器用ですから。
これは混沌の闇が、子育てに奮闘する物語である。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さくら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる