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第一話
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雷鳴が轟く、闇に包まれた岩肌のその岸壁で、二つの影が向き合う。
「これでお終いだな。」
冷たい声が響き、黄金色に輝く光を纏った剣が心臓に食い込んだ。
「ッは!お終い?」
「そうだ。人は愛を育み世界に光をもたらす!その世界に闇はいらぬ!」
「愛?!なんだそれは。我は、消えぬわ!」
胸にギリギリと音を立てながら食い込んでくる剣圧はすさまじく、息を吸うのすら苦しみを伴う。
勇者は笑みを浮かべて言う。
「そうだろうか?お前という混沌の闇は消えうせるのだ。」
勇者という生き物は、物の性質が見えないようだ。
混沌の闇をその聖なる光で消し去れると本当に思っているのであろうか。
そうなのであれば、人とは本当に哀れな生き物だ。
「消えはしない。馬鹿が。」
人をあざ笑うかのように述べると、勇者の顔が歪む。
青い空のような瞳と美しい金色の髪を宿した男は人で言うならば勇者として讃えられるに値するものなのであろう。
だが、我からしてみればなんという阿呆か。
自分達の事しか考えない人という生き物にほとほと愛想が尽きる。
「いずれ蘇り、この世界を混沌の闇で包んで見せる。」
そう言うと勇者の瞳がギラリと輝く。
そのギラギラとした瞳でよく聖なる力が操れるものだと思う。
この男はいずれ、この国の王として立つのであろう。
勇者として世界を救ったものとして。
だが、いずれ必ずこの世界など滅ぼしてやろう。
「忘れるなよ、勇者。我は必ず蘇る。その時には必ず、この世界を混沌の闇へと呑み込むぞ!忘れるな!」
聖なる光に貫かれた心臓から、毒々しいまでに黒い液体があふれ出る。
地面に落ちればそれはじゅっと音を立てて地を燃やす。
生あるものからすれば我など憎い存在であろう。
混沌と闇しか生み出す事の出来ない、破滅を呼ぶ存在だ。
生あるものが我を消し去りたいという思いは分からなくもない。
だが。
「いずれ我は蘇る!その時はこの世界を混沌の闇で呑み込んでやる!」
「消えされぇぇぇぇぇ!」
聖なる光が溢れ、我を消し去るのが分かる。
体に光が溢れ、引き裂かれるような激痛が針で刺されるような苦痛が全身に広がる。
それでも我は泣かぬ!
覚えていろ。
必ず、お前をこの手で葬ってやろう。
必ずだ!
そう、思っていた時期もありました。
ええ。ええ。そうですね。
混沌の闇を生み出す存在として粋がっていた時期がありましたよ。
だってね、そういう意義をもって生まれたのでね、そりゃあそう粋がるしかないんです。
でもねぇ、ダメですね。
今の世界にはこの子がおりますから、この子を差し置いて世界を混沌に落とすとか、いやそんなことしている場合じゃないですよ。
片手間で子育てが出来るか?
できませんよ。
我、不器用ですから。
これは混沌の闇が、子育てに奮闘する物語である。
「これでお終いだな。」
冷たい声が響き、黄金色に輝く光を纏った剣が心臓に食い込んだ。
「ッは!お終い?」
「そうだ。人は愛を育み世界に光をもたらす!その世界に闇はいらぬ!」
「愛?!なんだそれは。我は、消えぬわ!」
胸にギリギリと音を立てながら食い込んでくる剣圧はすさまじく、息を吸うのすら苦しみを伴う。
勇者は笑みを浮かべて言う。
「そうだろうか?お前という混沌の闇は消えうせるのだ。」
勇者という生き物は、物の性質が見えないようだ。
混沌の闇をその聖なる光で消し去れると本当に思っているのであろうか。
そうなのであれば、人とは本当に哀れな生き物だ。
「消えはしない。馬鹿が。」
人をあざ笑うかのように述べると、勇者の顔が歪む。
青い空のような瞳と美しい金色の髪を宿した男は人で言うならば勇者として讃えられるに値するものなのであろう。
だが、我からしてみればなんという阿呆か。
自分達の事しか考えない人という生き物にほとほと愛想が尽きる。
「いずれ蘇り、この世界を混沌の闇で包んで見せる。」
そう言うと勇者の瞳がギラリと輝く。
そのギラギラとした瞳でよく聖なる力が操れるものだと思う。
この男はいずれ、この国の王として立つのであろう。
勇者として世界を救ったものとして。
だが、いずれ必ずこの世界など滅ぼしてやろう。
「忘れるなよ、勇者。我は必ず蘇る。その時には必ず、この世界を混沌の闇へと呑み込むぞ!忘れるな!」
聖なる光に貫かれた心臓から、毒々しいまでに黒い液体があふれ出る。
地面に落ちればそれはじゅっと音を立てて地を燃やす。
生あるものからすれば我など憎い存在であろう。
混沌と闇しか生み出す事の出来ない、破滅を呼ぶ存在だ。
生あるものが我を消し去りたいという思いは分からなくもない。
だが。
「いずれ我は蘇る!その時はこの世界を混沌の闇で呑み込んでやる!」
「消えされぇぇぇぇぇ!」
聖なる光が溢れ、我を消し去るのが分かる。
体に光が溢れ、引き裂かれるような激痛が針で刺されるような苦痛が全身に広がる。
それでも我は泣かぬ!
覚えていろ。
必ず、お前をこの手で葬ってやろう。
必ずだ!
そう、思っていた時期もありました。
ええ。ええ。そうですね。
混沌の闇を生み出す存在として粋がっていた時期がありましたよ。
だってね、そういう意義をもって生まれたのでね、そりゃあそう粋がるしかないんです。
でもねぇ、ダメですね。
今の世界にはこの子がおりますから、この子を差し置いて世界を混沌に落とすとか、いやそんなことしている場合じゃないですよ。
片手間で子育てが出来るか?
できませんよ。
我、不器用ですから。
これは混沌の闇が、子育てに奮闘する物語である。
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