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三話 家を出る
次の日の朝起きると、部屋はかなり荒れていた。床には皿やコップが割れて散らばり、椅子は倒されていた。
けれど、机の上にクリフが記入したくしゃくしゃになった離婚届が置かれており私は箒と塵取りで出来る限り片づけをすると、朝一番に離婚届に記入を済ませ、町の役場に提出した。
あっけないもので、それは何の問題もなく受理された。
家に帰った私は、少ない私物をまとめ、そして家は不動産に任せることにした。
不動産のおじさんはこの町で私に家を紹介してくれた人で、数少ない私に優しくしてくれた人だった。
「やっとあのグズ男と別れることになったのか! おめでとうな」
そう声をかけられて、私はおもわず肩の力が抜けて、吹き出すように笑ってしまった。
しばらくお腹をかかえてゲラゲラと笑う私の肩を優しくおじさんは叩くと言った。
「あの家のことは俺に任せろ。ちゃんと売ってやるからな! そしてな、今みたいにこれからはもっと笑え。何、お前さんはまだ若いんだ。あんなクズよりいい男は五万といる」
背中を強く叩かれて、私は思わずぐっと涙を堪えると、唇を噛んだ。
涙がまた決壊するところだった。
「・・はい」
私がうなすいたのを見たおじさんは笑う。
「うん。うん。じゃあさっさとあの家を出ろよ? お前に依存してたあのグズ男が戻ってきたら大変だからな」
「はい。私も、荷物をまとめて仕事もやめて心機一転働けるところを探そうかと思ってます」
「それがいい。お前の職場も、あれもあんまりいいとこじゃないしなぁ。あ、そうだ! ちょっと待っておけ!」
おじさんは一度家の中にはいると、一枚のチラシをもって戻ってきた。
「昔からのお得意さんで、そこで新しく下働きを雇いたいらしい。住み込みもできるっていうから、ここはどうだ?」
「え?」
チラシを見てはみるが、私は文字があまり読めないので、難しい単語は飛ばしていくしかない。おじさんはそれに気づいたのかチラシを横から覗き込んで読んでくれる。
「ほら、下働きだから、基本的には厨房の手伝いやら庭の草むしりやらで、そこまで仕事内容は難しくなさそうだ。それに、住み込みってあるだろう? お前、一回クズ男から徹底的に離れてみな」
「でも……まだ仕事先にやめるとも言っていませんし……」
「あそこなら別に当日辞めたってそこまで問題にはならねーよ。お前に仕事押し付けて宿屋のやつがサボってばっかりだからな。なぁに、俺もついていってやる。ついでに、退職金もぶんどってやるから! ほら、こい!」
「え!? で、でも、まだこの仕事に採用もされてませんし」
「採用されなかったらしばらくうちで働けばいい! お前ってばなぁ、顔は仕事できますって顔してんのに、案外抜けてるし、流されやすいし、利用されやすい。いいから! ほら来い」
おじさんはそういうと私の腕を掴んでずんずんと進んでいく。
私はそれにあっけにとられながら、おじさんの好意がなんとなくくすぐったくて、父親がもしいたならばこんな風なのかな、なんてことを考えてしまった。
けれど、机の上にクリフが記入したくしゃくしゃになった離婚届が置かれており私は箒と塵取りで出来る限り片づけをすると、朝一番に離婚届に記入を済ませ、町の役場に提出した。
あっけないもので、それは何の問題もなく受理された。
家に帰った私は、少ない私物をまとめ、そして家は不動産に任せることにした。
不動産のおじさんはこの町で私に家を紹介してくれた人で、数少ない私に優しくしてくれた人だった。
「やっとあのグズ男と別れることになったのか! おめでとうな」
そう声をかけられて、私はおもわず肩の力が抜けて、吹き出すように笑ってしまった。
しばらくお腹をかかえてゲラゲラと笑う私の肩を優しくおじさんは叩くと言った。
「あの家のことは俺に任せろ。ちゃんと売ってやるからな! そしてな、今みたいにこれからはもっと笑え。何、お前さんはまだ若いんだ。あんなクズよりいい男は五万といる」
背中を強く叩かれて、私は思わずぐっと涙を堪えると、唇を噛んだ。
涙がまた決壊するところだった。
「・・はい」
私がうなすいたのを見たおじさんは笑う。
「うん。うん。じゃあさっさとあの家を出ろよ? お前に依存してたあのグズ男が戻ってきたら大変だからな」
「はい。私も、荷物をまとめて仕事もやめて心機一転働けるところを探そうかと思ってます」
「それがいい。お前の職場も、あれもあんまりいいとこじゃないしなぁ。あ、そうだ! ちょっと待っておけ!」
おじさんは一度家の中にはいると、一枚のチラシをもって戻ってきた。
「昔からのお得意さんで、そこで新しく下働きを雇いたいらしい。住み込みもできるっていうから、ここはどうだ?」
「え?」
チラシを見てはみるが、私は文字があまり読めないので、難しい単語は飛ばしていくしかない。おじさんはそれに気づいたのかチラシを横から覗き込んで読んでくれる。
「ほら、下働きだから、基本的には厨房の手伝いやら庭の草むしりやらで、そこまで仕事内容は難しくなさそうだ。それに、住み込みってあるだろう? お前、一回クズ男から徹底的に離れてみな」
「でも……まだ仕事先にやめるとも言っていませんし……」
「あそこなら別に当日辞めたってそこまで問題にはならねーよ。お前に仕事押し付けて宿屋のやつがサボってばっかりだからな。なぁに、俺もついていってやる。ついでに、退職金もぶんどってやるから! ほら、こい!」
「え!? で、でも、まだこの仕事に採用もされてませんし」
「採用されなかったらしばらくうちで働けばいい! お前ってばなぁ、顔は仕事できますって顔してんのに、案外抜けてるし、流されやすいし、利用されやすい。いいから! ほら来い」
おじさんはそういうと私の腕を掴んでずんずんと進んでいく。
私はそれにあっけにとられながら、おじさんの好意がなんとなくくすぐったくて、父親がもしいたならばこんな風なのかな、なんてことを考えてしまった。
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