【完結】離婚したら、すごく幸せになった! ~モラハラ暴力夫にさよなら!~

かのん

文字の大きさ
4 / 17

四話 退職そして新天地へ

 おじさんは私が働いていた宿屋の店主とも昔馴染みなようで、早々に話をつけてくれた。

「急にやめるなんて、こっちだって困るんだ」

「何、お前が真面目に働けば問題ないだろう? お前、ティナに仕事をかなり押し付けていたよなぁ?」

「は? あー。いや、そんなことは」

「先代に話をしにいってやってもいいんだぞ?」

 その言葉に店主は顔をひきつらせて、私のことを恨めしい瞳で睨みつけると大きく息をついた。

「わかったよ……しかたねーなぁ」

 最初はこれまで働いていた分の給料も、急にやめるんだからと支払う気のなかった店主と、おじさんは笑顔で話し合ってちゃんと支払うように手助けをしてくれた。

 そればかりか、結構な退職金ももらえて、私は自分一人だったら絶対に一銭も支払われなかっただろうなとおじさんが一緒に来てくれたことに感謝した。

「お前は人が良すぎるんだ。はぁ、本当になぁ。だがこれでまとまった金も出来ただろう? 家が売れたらすぐに知らせてやるから、善は急げだ。その退職金で一張羅を買って屋敷へと行ってみな」

「え!? えっと……そう、ですね。おじさん。何から何までありがとうございます」

「いいんだよ。……むしろな、こんなことしか出来なくてすまなかったな」

 おじさんはそういうと口元をポリポリと掻いてから小さな声で言った。

「幸せになれよ……大丈夫。人生はまだ長い」

 その一言が、心にしみて、私はただ小さくこくりとうなずいた。おじさんは選別だと言って私にその後食事をごちそうしてくれた。

 とても気さくで優しい人で、この町でこのおじさんと出会えて私は幸せだった。

 おじさんと別れてから私は洋服店に一張羅を買いに行き、紺色のワンピースを買いそれに着替えると気合をいれてチラシを握り締めたまま町はずれにある大きな屋敷へと向かった。

 その屋敷には数年前から若い男性が住んでおり、使用人は男性が引き連れてきていたので私の住む町とはあまり関係を持つことがなかった。

 越してきた時には、様々な噂がたったが、人の噂も七十五日ともたずに町の中で屋敷に興味を持つ人はいなくなっていった。

 町の人々は基本的に自分たちの暮らしが脅かされるような事態さえなければ、興味すら失っていく。

 私自身、こまれでその屋敷に興味をもったことはなかったが、働くとなれば話は別である。

 緊張しながらも、門の前に立ち改めて屋敷を見つめる。

 手入れはされているのに、化け物でも住んでいそうな雰囲気を醸し出すその屋敷に、本当にここで働けるのだろうかと不安に思う。

 それでも、後には引けない。

 自分にはもう居場所はないのだ。

 私は意を決すると、門の扉をたたいたのであった。

あなたにおすすめの小説

この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。

毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。

再会の約束の場所に彼は現れなかった

四折 柊
恋愛
 ロジェはジゼルに言った。「ジゼル。三年後にここに来てほしい。僕は君に正式に婚約を申し込みたい」と。平民のロジェは男爵令嬢であるジゼルにプロポーズするために博士号を得たいと考えていた。彼は能力を見込まれ、隣国の研究室に招待されたのだ。  そして三年後、ジゼルは約束の場所でロジェを待った。ところが彼は現れない。代わりにそこに来たのは見知らぬ美しい女性だった。彼女はジゼルに残酷な言葉を放つ。「彼は私と結婚することになりました」とーーーー。(全5話)

すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜

まりー
恋愛
   ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。  でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。 _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。    

初めから離婚ありきの結婚ですよ

ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。 嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。 ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ! ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。

姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。 式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。 今さら式を中止にするとは言えない。 そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか! 姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。 これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。 それどころか指一本触れてこない。 「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」 ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。 2022/4/8 番外編完結

ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!

satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。  私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。  私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。  お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。  眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です