7 / 7
第七話
しおりを挟む
中庭の温室へと移動すると、人払いをし、そしてエメラルダを椅子に座らせると、ビショップはその瞳を覗き込んだ。
目元が赤くなっているが、涙は止まった様子であった。
「エメラルダ嬢。俺は、ずっと実はあなたが怖かったんだ。」
「え?」
「何だか・・・いつも狙われている気がして。第二王子という肩書を欲している気がして。でも違ったんだな。それがとても、とても嬉しかった。」
エメラルダは顔を真っ赤にして、そしておずおずとした様子でビショップを見上げた。
「あの・・・私は、ビショップ様の婚約者でいても・・・いいですか?」
潤んだ瞳で言われ、ビショップは自身の顔を両手で覆うとその場に座り込んだ。
「まいったな・・・・」
「お、お嫌ですか?」
「違うんだ。違う。その・・・可愛くて。」
「え?」
ビショップは、大きく息をつくと、エメラルダの手を取って言った。
「俺はまだまだ未熟で・・・貴方にそれほど愛される価値のある男ではないぞ。それでも、いいだろうか?」
「私にとってはビショップ様が一番です。」
「そうか。・・・なら、これから改めてよろしくエメラルダ。」
「ビショップ様。」
エメラルダは顔を真っ赤に染め上げて、そしてにっこりと笑った。
いつもは美しいと評されるエメラルダの笑顔は可愛らしくて、ビショップは胸がどきどきとしてこれから自分はこれに耐えられるだろうかと違う心配がうまれるのであった。
それから国王、ラシッドは共にエメラルダに内々での謝罪を行い、エメラルダはビショップの婚約者のままでいる。
そして、エメラルダは今もビショップの横に。
「エメラルダ。その・・・最近距離が近くないか?」
「ダメ・・・ですか?」
潤んだ瞳で見上げると、ビショップは悶えるような表情をした後に、ダメとは言わない事をエメラルダは学んでしまった。
乙女ゲームは始まったばかり。
まぁヒロインオレットはレオナードに夢中であり、他の攻略対象もそれぞれ恋愛を楽しんでいる様子である。
きっと何事もなく、終わるはずだ。
「ビショップ様。絶対に婚約破棄何てさせませんからね?」
「はぁ・・・そうだね。絶対に出来ないだろうね。」
こんなに可愛らしい婚約者と、もう婚約破棄をしたいとはビショップはたとえ一人であろうとも口にはしないだろうと思った。
★★★★★★★
今回は短めのお話でした。
少しでも楽しんで読んでいただけたら幸いです。
おつきあい、ありがとうございました。
目元が赤くなっているが、涙は止まった様子であった。
「エメラルダ嬢。俺は、ずっと実はあなたが怖かったんだ。」
「え?」
「何だか・・・いつも狙われている気がして。第二王子という肩書を欲している気がして。でも違ったんだな。それがとても、とても嬉しかった。」
エメラルダは顔を真っ赤にして、そしておずおずとした様子でビショップを見上げた。
「あの・・・私は、ビショップ様の婚約者でいても・・・いいですか?」
潤んだ瞳で言われ、ビショップは自身の顔を両手で覆うとその場に座り込んだ。
「まいったな・・・・」
「お、お嫌ですか?」
「違うんだ。違う。その・・・可愛くて。」
「え?」
ビショップは、大きく息をつくと、エメラルダの手を取って言った。
「俺はまだまだ未熟で・・・貴方にそれほど愛される価値のある男ではないぞ。それでも、いいだろうか?」
「私にとってはビショップ様が一番です。」
「そうか。・・・なら、これから改めてよろしくエメラルダ。」
「ビショップ様。」
エメラルダは顔を真っ赤に染め上げて、そしてにっこりと笑った。
いつもは美しいと評されるエメラルダの笑顔は可愛らしくて、ビショップは胸がどきどきとしてこれから自分はこれに耐えられるだろうかと違う心配がうまれるのであった。
それから国王、ラシッドは共にエメラルダに内々での謝罪を行い、エメラルダはビショップの婚約者のままでいる。
そして、エメラルダは今もビショップの横に。
「エメラルダ。その・・・最近距離が近くないか?」
「ダメ・・・ですか?」
潤んだ瞳で見上げると、ビショップは悶えるような表情をした後に、ダメとは言わない事をエメラルダは学んでしまった。
乙女ゲームは始まったばかり。
まぁヒロインオレットはレオナードに夢中であり、他の攻略対象もそれぞれ恋愛を楽しんでいる様子である。
きっと何事もなく、終わるはずだ。
「ビショップ様。絶対に婚約破棄何てさせませんからね?」
「はぁ・・・そうだね。絶対に出来ないだろうね。」
こんなに可愛らしい婚約者と、もう婚約破棄をしたいとはビショップはたとえ一人であろうとも口にはしないだろうと思った。
★★★★★★★
今回は短めのお話でした。
少しでも楽しんで読んでいただけたら幸いです。
おつきあい、ありがとうございました。
35
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
【完結】泉に落ちた婚約者が雑草役令嬢になりたいと言い出した件
雨宮羽那
恋愛
王太子ルーカスの婚約者・エリシェラは、容姿端麗・才色兼備で非の打ち所のない、女神のような公爵令嬢。……のはずだった。デート中に、エリシェラが泉に落ちてしまうまでは。
「殿下ってあのルーカス様……っ!? 推し……人生の推しが目の前にいる!」と奇妙な叫びを上げて気絶したかと思えば、後日には「婚約を破棄してくださいませ」と告げてくる始末。
突然別人のようになったエリシェラに振り回されるルーカスだが、エリシェラの変化はルーカスの気持ちも変えはじめて――。
転生に気づいちゃった暴走令嬢に振り回される王太子のラブコメディ!
※全6話
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
婚約破棄された王太子妃候補ですが、私がいなければこの国は三年で滅びるそうです。
カブトム誌
恋愛
王太子主催の舞踏会。
そこで私は「無能」「役立たず」と断罪され、公開の場で婚約を破棄された。
魔力は低く、派手な力もない。
王家に不要だと言われ、私はそのまま国を追放されるはずだった。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
この国が長年繁栄してきた理由も、
魔獣の侵攻が抑えられていた真の理由も、
すべて私一人に支えられていたことを。
私が国を去ってから、世界は静かに歪み始める。
一方、追放された先で出会ったのは、
私の力を正しく理解し、必要としてくれる人々だった。
これは、婚約破棄された令嬢が“失われて初めて価値を知られる存在”だったと、愚かな王国が思い知るまでの物語。
※ざまぁ要素あり/後半恋愛あり
※じっくり成り上がり系・長編
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
毒殺されそうになりました
夜桜
恋愛
令嬢イリスは毒の入ったお菓子を食べかけていた。
それは妹のルーナが贈ったものだった。
ルーナは、イリスに好きな恋人を奪われ嫌がらせをしていた。婚約破棄させるためだったが、やがて殺意に変わっていたのだ。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
婚約破棄されたので、とりあえず王太子のことは忘れます!
パリパリかぷちーの
恋愛
クライネルト公爵令嬢のリーチュは、王太子ジークフリートから卒業パーティーで大勢の前で婚約破棄を告げられる。しかし、王太子妃教育から解放されることを喜ぶリーチュは全く意に介さず、むしろ祝杯をあげる始末。彼女は領地の離宮に引きこもり、趣味である薬草園作りに没頭する自由な日々を謳歌し始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
エメラルド、メチャクチャ可愛くてよかったです。
素敵なお話ありがとうございます、
かわいい話で、読後感が良いですね。
ありがとうございます。
エメラルダいいですね、好きなキャラです。ビショップの捕食される…にも笑いましたー。…からの涙❗️ギャップ萌えでしょうか、私もハート持っていかれました。更新楽しみに待っています。頑張って下さい。
ありがとうございます。
そう言っていただけて感謝です!!✨
短めのお話なんですが、思い付いて書きたくなって一気に書き上げた物語でした。
楽しんでいただけたら幸いです!