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九話
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ソフィアは沢山の本に囲まれていた。
横を見れば宰相であるシオンと、その婚約者であるミリーがソフィアにちらりと視線を向けて優しく微笑みを浮かべた。
今日は王城の図書室にて、二人と過ごしていた。アレックスとエメラルダとは違い、シオンもミリーもソフィアに無闇に触れるようなことはない。
ただ、たまに視線が合うと、二人はうっとりとした表情で微笑みを浮かべた。
これはこれで、とても居心地が悪い。
「あ、あの。」
ソフィアが口を開くと、二人は読んでいた本を閉じて優しく微笑みを浮かべる。
「どうしたんだ?本に飽きた?」
「ふふ。ソフィアは恋物語が好きなのね。」
「うひゃぁ・・・いえ、えっと・・・」
二人は図書室だから小声にしようとしているのか、ソフィアの耳元で囁くように喋る。
「ソフィアは本当に可愛いな。私は、こんなにも一緒にいて和む相手は初めてなんだ。」
耳に息がかかるたびに、ぞわぞわっと鳥肌が立っていく。
「私もだわ。こんなに心が惹かれるのも、ソフィアだからなのでしょうね。」
耳元に、息がかかる。
触れられているわけではない。おそらくはそうした意図もない。
なのに、ソフィアは自分の頬が真っ赤に染まっていっているのが分かった。
「私はね、君と出会って、人生とはもっと明るくあるべきなのだなと感じ、視野が広がったんだ。」
「貴方と居ると、空が美しく見えるのよ。今までは文章の中の世界の方が好きだったのに、貴方と居ればもっともっと違う景色を見て見たいと思えるの。」
似た者同士の二人なのだろう。たしかにソフィアからしてみれば二人は文章ばかりの世界にいすぎだし、出来れば外へと駆けだして行ってほしいと思う。
本の中の世界も楽しいけれど、現実の世界もそれはそれは美しく楽しい場所だ。
「君とならば、どこへでも行きたいな。君が居れば、世界はどう見えるのかが楽しみなんだ。」
「きっと今までとは違って見えるのでしょうね。愛しいソフィア。貴方の可愛らしさはきっと神様が私達の為に作り上げてくれたものだと思うの。」
「ミリー。さすがだ。私もそう思っていた。ソフィアの可愛らしさは、世界一といっても過言ではないだろうね。」
「もちろんだわ。」
いえ、過言としか言いようがありません。
ソフィアは、その後延々と自分がどんなに可愛いのかを耳元で力説され続けた。
嬉しい。とは思う。
可愛いと言われ、褒められるのは、嬉しいとは、思う。
けれど人間限度というものがある。
そうたいした人間でもないのに、まるで世界の宝のように、耳元で延々と褒められ続けたソフィアは魂から何かが削られていった気がした。
屋敷に帰りついたソフィアは、ベッドに突っ伏しながら燃え尽きたように呟いた。
「・・・自己肯定感とは・・・何かしら。」
「お二人に褒められ続けて、自己肯定感が高まりましたか?」
「むしろ魂からごりごりと何かしらが削り取られた気分だわ。」
レスリーはソフィアの好きなマカロンを準備すると、それに合わせて甘さ控えめの紅茶を用意した。
「身体的ストレスか精神的ストレスか。どちらを選ぶかは究極の選択ですね。」
どちらのほうがましなのだろうか。
ソフィアは、ベッドの中で身悶えるしかなかった。
横を見れば宰相であるシオンと、その婚約者であるミリーがソフィアにちらりと視線を向けて優しく微笑みを浮かべた。
今日は王城の図書室にて、二人と過ごしていた。アレックスとエメラルダとは違い、シオンもミリーもソフィアに無闇に触れるようなことはない。
ただ、たまに視線が合うと、二人はうっとりとした表情で微笑みを浮かべた。
これはこれで、とても居心地が悪い。
「あ、あの。」
ソフィアが口を開くと、二人は読んでいた本を閉じて優しく微笑みを浮かべる。
「どうしたんだ?本に飽きた?」
「ふふ。ソフィアは恋物語が好きなのね。」
「うひゃぁ・・・いえ、えっと・・・」
二人は図書室だから小声にしようとしているのか、ソフィアの耳元で囁くように喋る。
「ソフィアは本当に可愛いな。私は、こんなにも一緒にいて和む相手は初めてなんだ。」
耳に息がかかるたびに、ぞわぞわっと鳥肌が立っていく。
「私もだわ。こんなに心が惹かれるのも、ソフィアだからなのでしょうね。」
耳元に、息がかかる。
触れられているわけではない。おそらくはそうした意図もない。
なのに、ソフィアは自分の頬が真っ赤に染まっていっているのが分かった。
「私はね、君と出会って、人生とはもっと明るくあるべきなのだなと感じ、視野が広がったんだ。」
「貴方と居ると、空が美しく見えるのよ。今までは文章の中の世界の方が好きだったのに、貴方と居ればもっともっと違う景色を見て見たいと思えるの。」
似た者同士の二人なのだろう。たしかにソフィアからしてみれば二人は文章ばかりの世界にいすぎだし、出来れば外へと駆けだして行ってほしいと思う。
本の中の世界も楽しいけれど、現実の世界もそれはそれは美しく楽しい場所だ。
「君とならば、どこへでも行きたいな。君が居れば、世界はどう見えるのかが楽しみなんだ。」
「きっと今までとは違って見えるのでしょうね。愛しいソフィア。貴方の可愛らしさはきっと神様が私達の為に作り上げてくれたものだと思うの。」
「ミリー。さすがだ。私もそう思っていた。ソフィアの可愛らしさは、世界一といっても過言ではないだろうね。」
「もちろんだわ。」
いえ、過言としか言いようがありません。
ソフィアは、その後延々と自分がどんなに可愛いのかを耳元で力説され続けた。
嬉しい。とは思う。
可愛いと言われ、褒められるのは、嬉しいとは、思う。
けれど人間限度というものがある。
そうたいした人間でもないのに、まるで世界の宝のように、耳元で延々と褒められ続けたソフィアは魂から何かが削られていった気がした。
屋敷に帰りついたソフィアは、ベッドに突っ伏しながら燃え尽きたように呟いた。
「・・・自己肯定感とは・・・何かしら。」
「お二人に褒められ続けて、自己肯定感が高まりましたか?」
「むしろ魂からごりごりと何かしらが削り取られた気分だわ。」
レスリーはソフィアの好きなマカロンを準備すると、それに合わせて甘さ控えめの紅茶を用意した。
「身体的ストレスか精神的ストレスか。どちらを選ぶかは究極の選択ですね。」
どちらのほうがましなのだろうか。
ソフィアは、ベッドの中で身悶えるしかなかった。
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