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二話 竜様方のメイドちゃん

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 珍妙な生き物は、名前をアレクサンダーと言う。メルルの体半分ほどの大きさで、男と女についてメルルに一生懸命に教えてくれた。

 それによってメルルは初めて、珍妙な生き物が”人間”という生き物で、男がオス、女がメスという意味を知った。アレクサンダーの話では地上には人間がたくさんいるのだというから驚きだ。

「メルルはどうしてここに?・・キミは、妖精か何かなの?」
 
 アレクサンダーは泉の水で体を洗いながらそう問いかけると、メルルは首を横に振った。

「私は竜様方のメイドだよ。お世話をするのが仕事。それで、今は暗黒竜様がアレクサンダーを自分の子どもだって言うから、洗ってお世話をしている所。」

 そう言うとアレクサンダーは泡だらけのまま目を丸くした。

「俺が、子ども!?」

 あまりにもアレクサンダーが大きな声で驚くものだから、メルルは手で耳を塞いで眉間にしわを寄せて不愉快そうに頷いた。

「そうだよ。後で暗黒竜様にお礼を言ってね。」

 一体何のお礼を言うのだろうかと、アレクサンダーは意味が分からずに尋ね返した。

「どうして?俺は竜の子どもなんかじゃ・・・」

 そう口にしようとしたところをメルルはアレクサンダーの頭を鷲掴みにして、そのまま水の中に沈めた。ぶくぶくぶくと音を立ててアレクサンダーは沈み、もがいてどうにか水面に顔を出すと水を吐き出しながら声を荒げた。

「なっ・・何するんだよ!って・・何で脱ぐんだよ!」

 アレクサンダーは慌てて後ろを向く。

 メルルは濡れた服を脱ぎ捨てると、それをぎゅっと絞りながら答えた。

「アレクサンダーは暗黒竜様の子ども。そうじゃなかったら、ここにいられない。ここは竜の庭だからね。」

 その言葉に、アレクサンダーは背筋が急に寒くなり、声を潜めて尋ねた。

「どういう・・意味だ?」

「暗黒竜様の加護があるから、生きてられるってこと。さぁ、とにかく一回私の家に行こう。このままじゃ風邪を引いちゃう。」

 メルルはそう言うと、濡れた服を脇腹に抱えたまま下着姿で歩きだし、アレクサンダーはそれについて、全裸で歩いていく。初めて全裸で歩くが、爽快感よりも羞恥心の方が大きかった。

 しばらく歩いていくと小さな木の家がそこにはあった。その中にメルルはアレクサンダーを招き入れると、大きな木箱の中をごそごそと漁りシャツとズボンを取り出すとそれをアレクサンダーに手渡した。

「これ、暗黒竜様が拾ってきたやつだけど。」

「あ、ありがとう。」

 アレクサンダーは慌ててそれを受け取ると、ズボンとシャツを着た。大人用の物でありぶかぶかではあるが、袖はまくり、ズボンもおって、近くにあった紐でズボンのウエストを縛る。

 部屋の中を見渡すと、人間の日常生活の品々が揃えられていた。どういう事だろうかと思っていると、メルルがその疑問に答えてくれた。

「この家も、暗黒竜様が、拾ってきてくれたの。」

「あぁ、成る程。」

 竜ほど大きな生きモノであれば、家ごと拾う事も可能だろう。

 アレクサンダーはメルルを見つめると尋ねた。

「あ、あの、メルルは人間なの?」

 その問いかけに、メルルは自分の姿を見つめてからアレクサンダーを見て、首を傾げた。

「確かに私は肌とか髪とかは貴方の言う人間という生き物に似ているけれど、背は小っちゃくないし、貴方の足と足の間についている物だって、私にはついていないわ。」

「足と・・・足の・・間・・・・」

 アレクサンダーは顔を真っ赤に染め上げながらも、どうにか羞恥心を堪えて言った。

「足と、足の間の物は、男にはついているけど、女にはついていないんだ。それと、俺は今はこんな子どもの姿だけれど、本当はメルルよりも大きいんだぞ。」

「?人間は、大きくなったり小さくなったりするの?」

 その言葉に、アレクサンダーは大きくため息をつくと、自分がどうしてこんなに小さくなってしまったのかを、掻い摘んでメルルに打ち明けたのであった。






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