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五話 困惑しています
しおりを挟むスカーレットは姉であり続けようとした。
それはルイスを異性的な意味で見てしまえば、ルイスに嫌な気持ちを与えかねないと思ったからだ。
だから、いつの間にか芽生えていた恋心なんてものには分厚い蓋をして、アゼフとの結婚を受け入れたのである。
そんな分厚い蓋を、ルイスは引っぺがしにかかる。
「スカーレット、僕はね、ずっとスカーレットが好きだったんだ」
「え?」
「小さい時、僕をぎゅっと抱きしめてくれたあの時から、僕の心はスカーレットのものだ。だから、お願いだよ。どうか、僕のものになって。絶対に大切にする」
チュッと頬にキスされ、スカーレットはわなわなと唇を震わせると、どんとルイスの胸を押した。
「だ、ダメ。だって、私は貴方のお姉さんよ?」
「うん。でもじゃあ僕が不幸になってもいいの?」
「え?」
「僕はね、姉さんの結婚式、本当に嫌で嫌で仕方がなかったんだ。それでも、姉さんには幸せになって欲しかったから……でもそれは、僕にとっては不幸なことだよ」
コツンと、おでことおでこをぶつけ、ルイスは苦しげに言った。
「姉さんは僕の不幸を望むの?」
「望まないわ! ルイスが幸せになってくれないなんて、絶対に嫌!」
「ならお願い。拒まないで。僕の幸せはスカーレットの隣にいることだから」
姉さんと読んでみたり、スカーレットと呼び捨てにして見たり、ルイスの行動にスカーレットの心は揺れる。
「僕のこと、嫌いなの?」
そう問われ、スカーレットの分厚い蓋が吹っ飛んで行った。
「そんなわけないわ! ずっと、ずっと大好きよ。私の一番はルイスだもの!」
その言葉にルイスは嬉しそうににこっと笑い、スカーレットを抱き起すとぎゅっと抱きしめた。
「僕も大好きだよ。離婚するなんて言わないよね?」
「えぇ……あなたがいいなら。でも、本当にいいの? 貴方は綺麗だし、私よりもっともっと素敵な子と結婚できるのよ?」
「ん? スカーレット以外はいらないから」
「本当に? 私、ガサツだし……あまり可愛くないし」
釣り眼がコンプレックスなスカーレットのその言葉に、ルイスはにっこりとほほ笑むと、こめかみにキスをした。
「僕はスカーレットのその気の強そうな瞳も好きだけどなぁ。可愛いと思うよ」
「!? 本当に?」
上目づかいで聞いてくるスカーレットを、ルイスは嬉しげにぎゅうぎゅうと抱きしめながら言った。
「可愛いよ。うん。世界で一番可愛い」
「……ルイスがそう言ってくれるなら、いいけど」
「大切にするね」
「……うん」
扉の隙間から様子をうかがっていた両親に、ルイスはピースサインを送った。
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