【完結】皇女は当て馬令息に恋をする

かのん

文字の大きさ
40 / 54

第三十九話

しおりを挟む

 オランドは静かにその場に膝を着き、意気消沈した面持ちで項垂れた。

 アルバスはその光景から視線をレスターとオーレリアへと移した。

 戦わずして、帝王を追い詰めることができたのはレスターと、そしてリリアーナ王女の功績が大きい。 

 実のところ、アルバスは自分がへまをして牢に入れられてしまいオーレリアに会わす顔がなかった。

 だが、レスターがリリアーナ王女に面会し、そして自分を牢から出すために手を尽くしてくれたからこそ今、ここに自分は立っていられる。

 牢にいた数日前の自分は死人のような顔をしていたであろう。

 その時の事と、リリアーナの様子を思いだしてアルバスは笑みを浮かべた。


※※※※※※※※※※※


 レスターは馬を走らせオフィリア帝国につくと、王の名代としてリリアーナへの面会を願った。

 オランド帝王はこちらに構う気がないのか、リリアーナとの面会は思いがけずすぐに行うことが出来た。

 だが部屋に通されたレスターは眉間にシワを寄せた。

 通されたはいいものの、あまりの警備の薄さに驚いてしまう。

 リリアーナは簡素なワンピースを着ており、少し顔色の悪い様子ではあったが、無事であることにレスターは安堵した。

「誰が来たかと思えば、レスター様ですの?」

 挨拶もせず、少し落胆した様子のリリアーナにレスターは苦笑を浮かべると言った。

「私で申し訳ありません。リリアーナ王女殿下、ご無事で何よりです。」

「無事は無事よ。それで、何が起こっているのか教えてちょうだい。」

 レスターは頷き、簡単に説明をすると手紙をリリアーナに渡した。

 リリアーナは父親からの手紙を読むと眉間にシワをよせ、すぐに畳んでしまうと、もう一つの手紙を読み出し、そして、ハンカチで目を押さえた。

 レスターはその様子を見守り、じっとリリアーナの言葉を待っていた。

 リリアーナは大きく息をはくと顔をあげてレスターに言った。

「それで、私に何をしてほしいのかしら?」

 その言葉にレスターは笑みを浮かべた。

「良かった。帰りたいと泣き言を言い始めるのかと思いましたよ。」

「あらレスター。私の性格を分かっていてそんな意地悪を言うのね。」

「申し訳ありません。ですが、貴方が頑張っておられることは、分かっているつもりです。」

「ふふ。まぁ良いわ。それで?」

「牢にアルバス殿が捉えられていると聞きました。その方と面会したいのです。」

「あらそれなら簡単よ。」

「え?」

「この城、今は警備がざらなの。」

 リリアーナはにこりと可愛らしく微笑んだ。

しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

【短編】夫の国王は隣国に愛人を作って帰ってきません。散々遊んだあと、夫が城に帰ってきましたが・・・城門が開くとお思いですか、国王様?

五月ふう
恋愛
「愛人に会いに隣国に行かれるのですか?リリック様。」 朝方、こっそりと城を出ていこうとする国王リリックに王妃フィリナは声をかけた。 「違う。この国の為に新しい取引相手を探しに行くのさ。」 国王リリックの言葉が嘘だと、フィリナにははっきりと分かっていた。 ここ数年、リリックは国王としての仕事を放棄し、女遊びにばかり。彼が放り出した仕事をこなすのは、全て王妃フィリナだった。 「待ってください!!」 王妃の制止を聞くことなく、リリックは城を出ていく。 そして、3ヶ月間国王リリックは愛人の元から帰ってこなかった。 「国王様が、愛人と遊び歩いているのは本当ですか?!王妃様!」 「国王様は国の財源で女遊びをしているのですか?!王妃様!」 国民の不満を、王妃フィリナは一人で受け止めるしか無かったーー。 「どうしたらいいのーー?」

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

処理中です...