41 / 54
第四十話
しおりを挟む
リリアーナは立ち上がるとレスターに言った。
「良かったわね。私、この城の中ならもう目隠しをしたってどこへでも行けるくらい探検したのよ。」
「侍女らはどうしたのですか?」
「アルバス軍隊長が捉えられた事で内部で混乱が起きているようなの。侍女もかなり気がそぞろで気がつけば誰もいないこともあるのよ?今みたいにね。」
その言葉にレスターは目を丸くした。そしてそれと同時にリリアーナの簡素な様子に納得がいった。
リリアーナは生粋の王女である。そんか彼女からしたら自分の回りに人がいないということの方が希であろう。
「大丈夫、、、でしたか?」
レスターは、幼い時から顔をよく会わせていたリリアーナの性格をある程度は理解しているつもりであった。
だからこそ心配になったのだが、リリアーナは唇を尖らせると言った。
「大丈夫なわけないでしょう?私の見方はいないし、何かがあったことは分かるけれど私は動けないし、お父様はどうせ私の事なんてどうなったっていいのでしょう?」
「そんなわけは、、」
「あるでしょう。私だって、こんなの王女らしくないって分かっているわ。王女ならば立派に勤めを果たすべきだって、、でも、、、。ごめんなさい。聞かなかったことにして。さぁ、着いてきて。案内するわ。」
歩き始めたリリアーナの後ろに着いていきながら、だいぶリリアーナが拗れてきているとレスターは溜め息を着きたくなった。
リリアーナは決して悪い子ではないと思う。昔から長いものには巻かれる派ではあったが、リリアーナがこんなにも拗れてしまったのは父親との関係性のせいだろう。
しばらく廊下をくねくねと進んだ後に、離れの建物から地下へと階段を下りていく。
あまりに迷わな過ぎるリリアーナの足取りに、レスターは本当に大丈夫なのかと、心配になってきた。
そんなレスターの気配を察してか、リリアーナははっきりとした口調で言った。
「私昔から迷路は得意なの。ほら、ここがアルバス様の捉えられている牢よ。先日侍女が東離れの地下の牢に閉じ込められているって言っていたから、面白そうだと思って一度見に来たの。看守はかなりいい人よ。ここよ。」
リリアーナが迷うことなく扉を開けると、そこには年老いた看守が一人座っていた。
「おやおや、またおいでですか?今日も探検ですかな?」
看守は顔をあげるとそう言い微笑んだ。
「ダダロフさん。違いますわ。今日はアルバス様にお話に来たの。」
「おやおや。ですがやめた方が貴方様の為です。わしが警笛を鳴らせば、すぐに他の騎士が来ますし、扉の鍵はどれがどれかはわししか分かりません。」
その言葉にリリアーナは笑みを浮かべると言った。
「なら、内緒にしてくださいな。この国の為にですのよ?」
「この国の?」
「ええ。無益な血を流さないためです。ね?」
「本当にですかな?」
「ええ。貴方にも何かしらの情報は入ってきているのでしょう?」
「ええ。まぁねぇ。」
「なら、今貴方がするべきなのは私達への協力よ。ね?お願い。」
「本当にこの国のためなのですね?」
「ええ。お願い。ね?」
可愛らしくそう言うリリアーナに看守は笑い声をあげると、秘密と言わんばかりに自分の目を手で覆うと、ポケットから鍵の束を手渡した。
「内緒ですぞ。リリアーナ様は王女様ですから、わしは逆らえますまい。星のマークの鍵が扉の鍵だなんて!わしは教えておりませんからな。」
「ええ。もちろんよ。さぁ!レスターいくわよ。」
レスターが目を丸くする中、リリアーナは扉を開け中へと入っていった。
こんなにもざるで良いのかとレスターは思ったが、看守も何かを感じ取っていたのだろう。それにこれはリリアーナの人柄もあるのだろうなと思った。
昔から父親以外の年上に甘えるのがリリアーナは大の得意だったのをレスターは思い出した。
中にはいくつもの牢があり、そのひとつに両腕を壁に縛り付けられ、虚ろな目をした男がいた。
それは手負いの獣のような瞳をしており、リリアーナとレスターを睨み付けた。
「良かったわね。私、この城の中ならもう目隠しをしたってどこへでも行けるくらい探検したのよ。」
「侍女らはどうしたのですか?」
「アルバス軍隊長が捉えられた事で内部で混乱が起きているようなの。侍女もかなり気がそぞろで気がつけば誰もいないこともあるのよ?今みたいにね。」
その言葉にレスターは目を丸くした。そしてそれと同時にリリアーナの簡素な様子に納得がいった。
リリアーナは生粋の王女である。そんか彼女からしたら自分の回りに人がいないということの方が希であろう。
「大丈夫、、、でしたか?」
レスターは、幼い時から顔をよく会わせていたリリアーナの性格をある程度は理解しているつもりであった。
だからこそ心配になったのだが、リリアーナは唇を尖らせると言った。
「大丈夫なわけないでしょう?私の見方はいないし、何かがあったことは分かるけれど私は動けないし、お父様はどうせ私の事なんてどうなったっていいのでしょう?」
「そんなわけは、、」
「あるでしょう。私だって、こんなの王女らしくないって分かっているわ。王女ならば立派に勤めを果たすべきだって、、でも、、、。ごめんなさい。聞かなかったことにして。さぁ、着いてきて。案内するわ。」
歩き始めたリリアーナの後ろに着いていきながら、だいぶリリアーナが拗れてきているとレスターは溜め息を着きたくなった。
リリアーナは決して悪い子ではないと思う。昔から長いものには巻かれる派ではあったが、リリアーナがこんなにも拗れてしまったのは父親との関係性のせいだろう。
しばらく廊下をくねくねと進んだ後に、離れの建物から地下へと階段を下りていく。
あまりに迷わな過ぎるリリアーナの足取りに、レスターは本当に大丈夫なのかと、心配になってきた。
そんなレスターの気配を察してか、リリアーナははっきりとした口調で言った。
「私昔から迷路は得意なの。ほら、ここがアルバス様の捉えられている牢よ。先日侍女が東離れの地下の牢に閉じ込められているって言っていたから、面白そうだと思って一度見に来たの。看守はかなりいい人よ。ここよ。」
リリアーナが迷うことなく扉を開けると、そこには年老いた看守が一人座っていた。
「おやおや、またおいでですか?今日も探検ですかな?」
看守は顔をあげるとそう言い微笑んだ。
「ダダロフさん。違いますわ。今日はアルバス様にお話に来たの。」
「おやおや。ですがやめた方が貴方様の為です。わしが警笛を鳴らせば、すぐに他の騎士が来ますし、扉の鍵はどれがどれかはわししか分かりません。」
その言葉にリリアーナは笑みを浮かべると言った。
「なら、内緒にしてくださいな。この国の為にですのよ?」
「この国の?」
「ええ。無益な血を流さないためです。ね?」
「本当にですかな?」
「ええ。貴方にも何かしらの情報は入ってきているのでしょう?」
「ええ。まぁねぇ。」
「なら、今貴方がするべきなのは私達への協力よ。ね?お願い。」
「本当にこの国のためなのですね?」
「ええ。お願い。ね?」
可愛らしくそう言うリリアーナに看守は笑い声をあげると、秘密と言わんばかりに自分の目を手で覆うと、ポケットから鍵の束を手渡した。
「内緒ですぞ。リリアーナ様は王女様ですから、わしは逆らえますまい。星のマークの鍵が扉の鍵だなんて!わしは教えておりませんからな。」
「ええ。もちろんよ。さぁ!レスターいくわよ。」
レスターが目を丸くする中、リリアーナは扉を開け中へと入っていった。
こんなにもざるで良いのかとレスターは思ったが、看守も何かを感じ取っていたのだろう。それにこれはリリアーナの人柄もあるのだろうなと思った。
昔から父親以外の年上に甘えるのがリリアーナは大の得意だったのをレスターは思い出した。
中にはいくつもの牢があり、そのひとつに両腕を壁に縛り付けられ、虚ろな目をした男がいた。
それは手負いの獣のような瞳をしており、リリアーナとレスターを睨み付けた。
22
あなたにおすすめの小説
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。
愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
【短編】夫の国王は隣国に愛人を作って帰ってきません。散々遊んだあと、夫が城に帰ってきましたが・・・城門が開くとお思いですか、国王様?
五月ふう
恋愛
「愛人に会いに隣国に行かれるのですか?リリック様。」
朝方、こっそりと城を出ていこうとする国王リリックに王妃フィリナは声をかけた。
「違う。この国の為に新しい取引相手を探しに行くのさ。」
国王リリックの言葉が嘘だと、フィリナにははっきりと分かっていた。
ここ数年、リリックは国王としての仕事を放棄し、女遊びにばかり。彼が放り出した仕事をこなすのは、全て王妃フィリナだった。
「待ってください!!」
王妃の制止を聞くことなく、リリックは城を出ていく。
そして、3ヶ月間国王リリックは愛人の元から帰ってこなかった。
「国王様が、愛人と遊び歩いているのは本当ですか?!王妃様!」
「国王様は国の財源で女遊びをしているのですか?!王妃様!」
国民の不満を、王妃フィリナは一人で受け止めるしか無かったーー。
「どうしたらいいのーー?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる