【完結】皇女は当て馬令息に恋をする

かのん

文字の大きさ
42 / 54

第四十一話

しおりを挟む

 アルバスは目の前に現れたレスターとリリアーナを睨み付けた。

 リリアーナは臆することなく美しく礼をすると名乗った。

「私はレイズ王国王女リリアーナと申します。こちらは公爵家令息レスターですわ。今日はあなた様に会いに来たのです。」

 王女が突然自分に名乗り礼をとったということにアルバスは驚き、それと同時にリリアーナ王女が噂とは全く違った様子にも驚いていた。

 そこにいる王女からは尊大な態度も、人を侮蔑するような様子も見られない。

 リリアーナは牢の鍵をあげると、汚れるのも厭わずにレスターと共にアルバスの拘束をといた。

 アルバスは腕をさすりながら、二人の様子を伺っているとレスターが口を開き、現在の状況の話の聞くこととなった。

 だがそれを聞いたアルバスは眉間に深いシワを寄せた。

 オーレリア王女は馬車で向かっているためにここへつくにはあと数日は必要であろう。

 だが、それにこちらの準備が間に合うかどうかである。

 アルバスは二人に頭を下げた。

「助けていただきありがとうございました。だがこれよりは我が国の事。関係無用でございます。」

 レスターはその言葉を思案するとゆっくりと口を開いた。

「私は、オーレリア皇女の力になりたいのです。その為に、私も協力させていただきたい。」

 真っ直ぐなその瞳に、アルバスはどうするか迷った。

 これがうまくいかなかった場合、悪ければ国同士のいさかいの火種になりかねない。

 レスターは、はっきりとした口調で言った。

「私は、ただのレスターとしてオーレリア皇女の見方をしに来た。」

 その決意に満ちた声に、リリアーナも驚いた様子であったが、すぐにそれは笑みに変わった。

「レスター。あなた、オーレリア皇女に恋をしたのね?」

「リリアーナ王女、私はオーレリア皇女の力になりたいだけだ。」

「あら、好きだからでしょう?」

 レスターは息を吐くと、リリアーナに言った。

「王女。私は、皇女殿下に自分の気持ちを押し付けたくはないのです。私の気持ちなど、なんの価値もない。」

 リリアーナは肩をすくめるとアルバスに言った。

「決意は固いみたいだから、協力させてあげてちょうだい。私も、内々に協力してあげるわ。」

 アルバスは驚いたが、それからのレスターとリリアーナの働きには本当に頭が上がらない。

 レスターはアルバスと共に騎士団との橋渡し役として、そしてリリアーナは城内部にいる侍女や執事らとオーレリア皇女の味方を集め、そしてアルバスへと繋げてくれた。

 アルバス自身は捕らえられているという形にしたままにしているため動けないことが多かったが、この二人は情報を集め、味方を増やし、オーレリア皇女の登城へと間に合うことができたのだ。


※※※※※※※※※

 項垂れる帝王の前をオーレリアが通り、そして王座の前へと立った。

「これより、国を建て直します。アルバス、これまでよく頑張ってくださいました。ですが、これからも忙しくなります。頼みますよ。」

「はっ!」

 王座に座るオーレリアの横には輝く聖獣がおり高らかに咆哮をあげた。

 皆が剣をオーレリアに掲げる。

『オーレリア帝王陛下万歳!』

 正式な帝王位の継承式の準備もしなければならない。だが、今は、この喜びを胸に刻もう。

「オーレリア帝王陛下万歳!」

 アルバスは声を高らかにあげた。



しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

【短編】夫の国王は隣国に愛人を作って帰ってきません。散々遊んだあと、夫が城に帰ってきましたが・・・城門が開くとお思いですか、国王様?

五月ふう
恋愛
「愛人に会いに隣国に行かれるのですか?リリック様。」 朝方、こっそりと城を出ていこうとする国王リリックに王妃フィリナは声をかけた。 「違う。この国の為に新しい取引相手を探しに行くのさ。」 国王リリックの言葉が嘘だと、フィリナにははっきりと分かっていた。 ここ数年、リリックは国王としての仕事を放棄し、女遊びにばかり。彼が放り出した仕事をこなすのは、全て王妃フィリナだった。 「待ってください!!」 王妃の制止を聞くことなく、リリックは城を出ていく。 そして、3ヶ月間国王リリックは愛人の元から帰ってこなかった。 「国王様が、愛人と遊び歩いているのは本当ですか?!王妃様!」 「国王様は国の財源で女遊びをしているのですか?!王妃様!」 国民の不満を、王妃フィリナは一人で受け止めるしか無かったーー。 「どうしたらいいのーー?」

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

処理中です...