生まれ変わった魔法使い 

かのん

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九話 普通の少女

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 セオ・ルドルフォは、ルティシアが意図も簡単に妖精に出口を出してもらい帰っていく姿を見て、驚きのあまり目を見開いたまま固まっていた。

 そして、久しぶりに腹を抱えて笑い声を上げた。

「あははっははっははっは!・・何あれ!ははっ!すごいなぁ・・・本当に・・」

 妖精が見える者は限られる。

 魔力量が多いか、妖精に気に入られるか。けれど、どちらにしてもいいことなどはない。セオはちらりと妖精に視線を向ける。

 その瞳の色はチカチカと様々に色を変えてこちらをじっと見つめている。

 セオに言わせてみれば、妖精ほどたちの悪い者はいない。妖精を一言で表すならば悪童だ。きまぐれで、悪戯好きで、善悪など関係のない存在。楽しければいいし、人間の概念など通用する相手ではない。

 それに、彼らは魔力を食べることを好む。故に、近くにいるだけで魔力を奪われる。つまり、妖精が大量によってくるということは、その分魔力を奪われるのだ。一匹ならまだしも、それが数十匹となれば普通の人間ならば魔力を取られて枯渇し、死んでいてもおかしくない。

 それに帰りたいとお願いをして、そのお願いを素直に聞くなど、普通ならばありえないのだ。

 そんな事が出来る人間を、セオは一人しか知らない。

 大量の魔力を身に宿しながらも、化物になることなく偉大なる一流の魔法使いとして国に仕えた英雄。

 世界を混沌に陥れようとした魔獣の討伐という偉業を成し遂げた唯一の生き残り。

「へぇ・・・これは、どういうことだろうねぇ。」

 セオはにやにやとした笑みを浮かべると、大きく背伸びをした。

 セオに近寄る妖精はいない。彼は別に妖精の庭に招かれたわけではなく、ここを抜け道として、仕事用に使っているだけなのだ。

 妖精の庭は学園や王城を繋いでいるから、セオのように魔力を有する者にとっては良い近道となっていた。

 妖精はセオを危険な存在と認識し、セオもまた、妖精を厄介な存在だと認識している。お互いに関わり合いにならない方がいいと理解しているから、近づくことはない。

「彼女の血縁か、はたまた隠し子か、それとも・・・はぁ。何にしても楽しくなりそうだ。」

 セオがルティという少女に出会ったのは十七歳の時だった。同じ年ということもあって、セオはこの少女は何者なのかと最初は好奇心から彼女の事を目で追うようになった。

 魔獣討伐の為に国中から一流の魔法使いが集められ、その中に、彼女もいた。

 普通の少女だった。

 可愛い物をいらないとは言いながらも、商店では視線で追い、美しい花があれば瞳を輝かせてうっとりとした様子で見つめていた。

 だから素直に、主である王に言ったのだ。

「あんな普通の少女が魔獣討伐になどいけるわけがありません。選ばれるわけがない。」

 まもなく恐ろしい魔獣を討伐するための魔法使いが選ばれる。国一番の魔法使いを決める為に、舞台が用意され、彼女も戦わなければならない。

 そんなものに出て怪我でもしたらどうするのだ。怪我をしないうちに家へと帰すべきだと思った。けれど、王は、大きくため息をついてから少し悲しげに目を細めて言った。

「・・そんな普通の少女を・・普通に生きさせてやれない。悲しい事だ。」

 その時はどういう意味なのか理解が出来なかった。しかし、その言葉の意味を数日後に理解することとなる。

 その場に集められた魔法使いは、どの者も名の知れた一流の魔法使いだった。誰が選ばれてもおかしくないと、国一番の魔法使いを決める戦いが始まった時、皆がそう思っていた。

「選ばれるのは恐らく王宮魔法使いのセラフィー殿ではないかな。」

「いや、東の魔法使い殿も相当な実力者だとか。」

「それにしても・・女の子がまざっているじゃないか。大丈夫なのか?」

 貴族や騎士達もその様子を一目見ようと集まっている。王城の庭に作られた巨大なドームは、魔法使い達がどれほど強い魔法を使っても防げるように、強力な結界を組み、作られたものだった。

 最後までドームの中で立って居られたものが、国一番の魔法使いと呼ばれる。

 そして、恐ろしい魔獣との戦いに挑む者となるのだ。その栄誉ある地位につき、国の為に忠義を尽くそうと魔法使いらはそう心に決め、この舞台に立っていた。

 たとえ死地に向かう事になろうとも、国を救うのだと。

 けれど、そんな崇高なる思いを抱く、一流の魔法使い達がまるで赤子の手をひねるように、意図も簡単に、一瞬で地面に伏す事となる。

 一人の少女が魔法を紡ぐ。たったそれだけの事で、魔法使い達は意識を失い、地面に伏す。そして、強力な結界が組まれていたはずのドームは、粉々に砕け散った。

「どういうことだ!」

「あの少女は何者だ!!」

「あれは・・」

 舞台に立っていたのは、普通だと思っていた少女ただ一人だった。

 その時の事を思いだし、セオは両手で顔を覆い、花畑に横になると大きく息を吐いた。

 そして結局、普通に見えて全く普通ではない少女に国は救われ、そして一人で死なせた。セオの瞳は鋭く光り、拳を苛立たしげに地面へと叩きつけた。

 あれからセオは秘密裏に犯人について調べを進めている。セオはにこりと顔に笑みを張り付けると起き上がり、王城へと続く妖精の庭を歩いていった。

 

 


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