生まれ変わった魔法使い 

かのん

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十三話 魔力

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 森の外へと押し出されたハンスは、セオによって抱き留められた。

「ルティシア嬢!」

 手を伸ばし、すぐに森の中へと引き返そうとしたハンスをセオは体を押さえて止める。

「離せ!セオ!命令だ!」

「ハンス様。冷静になって下さい。今は現状を把握する方が先ではありませんか?」

 その言葉にハンスは唇を噛むと、セオの腕を振り払い、周りを見てから真っ直ぐに魔法の森を見据える。

「何がどうなったのだ。」

 尋ねられたセオは頭を下げると、セオとルティシアが森に入ってからの事を冷静な口調で報告する。

「ハンス様とルティシア嬢が森に入った直後、魔法の森が他の者の侵入を拒否し、中にいた者達を次々に外へと追い出すという今までにない事件が発生いたしました。現在、他の教師ら総動員でその原因を調べ、行方が分かっていない者はいないか調査中です。」

 森の外はかなりの騒動となっており、学園の教師らは慌ただしく動いている。救護班も来ているようで、魔法の森から突然追い出された反動で魔力酔いを起こしてしまったらしい学生らの手当てを行っている。

「森の中で何があったのですか?」

 セオの問いかけに、ハンスは森での出来事をどうにか冷静に話していく。その事を聞いたセオは眉間にしわを寄せ、近くにいる職員と何か話をした後にハンスに言った。

「ハンス様。もしかしたらこの事件はハンス様を狙ったという可能性もあります。他の護衛も手配します。いいですね?」

「なっ!?何を言っている!ルティシア嬢を助けに行くのが先だ!」

「・・殿下。」

「っ!?・・そんな怖い顔をしてもダメだ。恩人を助けに行かないなど、一国の王子のすることではない。」

 小さいながらに自分の考えをしっかりと持っている王子に、セオは大きくため息をつくと、肩をすくめて言った。

「ならば、殿下の代わりにこの私が参りましょう。これが精一杯の譲歩です。いいですか?」

 その言葉にハンスは眉間に深くしわを寄せたが、すぐに小さく息を吐いて頷いた。セオは引き際を分かってくれてよかったと微笑を浮かべた時、風が止んだ。

 一瞬にして、皆が空気が変わったことに気付く。

「なん・・だ?」

 自然と視線が森へと向かう。

 何かがくる。

 次の瞬間、目を開けていられないほどの突風と、分厚い魔力の壁のようなものが体を突き抜けていく。

「殿下!」

 セオはハンスを抱きしめ、衝撃から庇うように地面へと倒れた。木々は空へと飛ばされ、それに巻き込まれるように様々な物が風に攫われていく。

「きゃぁっ!」

「伏せろ!」

「とにかく頭を低くして!地面にうずくまれ!」

 教師らは生徒達に必死に言い、突風から庇うように魔法を使える者達は防御壁を張ろうとする。しかし、そんなもの何の意味もなさなかった。
 
 他人の魔力をも喰らうようにして飲み込み、そして魔力は広がっていく。

「なんだ・・・これは・・・」

 ハンスは目を見張った。

 圧倒的なまでもの、魔力。それが魔法の森から溢れ、渦を巻いて空へと登る。

 稲妻、火柱、暗雲。まるでそれは、魔獣の再来のようであり、人々は顔を青ざめさせながら震えあがる。

「セオ・・セオ!ルティシア嬢を助けに行け!」

 ハンスの言葉にセオは、他の護衛にハンスの事を任せると森の中へと駆けていく。その背を見送ったハンスは護衛に体を支えられながら起き上り、その光景をじっと見つめた。

「・・ルティ?」

「え?」

 ハンスが声に反応して横を見ると、そこには国王であるエヴァンの姿。いや、そればかりではない。国王の横には現在のヒスラリア王国一の魔法使いと言われるギース・セラフィー。東の魔法使いミーフェ・ラッド。そして他にも黒いローブを着た魔法使い達。

「何故・・?」

 普通ならばこの面子が揃うことはほぼない。そんな人達が集まっている事にハンスは驚きを隠せない。

「この魔力は・・どういう事だ。」

 その声にハンスが後ろを振り返ると、そこにはヒスラリア王国騎士団長であるジャック・ローウェンがいた。

 一体何が起こっているのか。ハンスはセオの走って行った魔法の森の方角を、じっと見つめた。

 
 



 


 
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