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三話 王子 レオナルド
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シルビアはとてもとても綺麗な人である。そんなシルビアは昔から様々な男に言い寄られていた。
そんな姿を見る度に、腸は煮えくり返るし、自分の事を愛していると言ってくれないシルビアにも腹が立って、愛情がどんどんと拗れていった。
シルビアの事になるとどうしても自制は効かないし、自分でも阿呆になっている自覚があった。
それでも、どんなことをしてでもシルビアの心を自分の方へと向けたかったのだ。
だからこそ、最近怪しげな動きを見せる男爵令嬢リリーの言葉にも乗った。
婚約破棄すると言ったら、もしかしたらシルビアが今度こそは自分の方に縋り付いて来てくれるかもしれない。
ありもしない妄想が広がり、結局リリーの言葉を受け入れた。
その為に、忙しいであろう貴族の令嬢や令息らに手を回し、会場を押さえ、婚約破棄と言う茶番を仕掛ける。
けれど、結果は惨敗である。
シルビアは冷たい瞳で俺を見下ろしてくるし、会場の空気も冷たい。
こんなことならやらなければよかったと、リリーの事が恨めしく思えてくる。
しかも、リリーは自分を庇ってもらえるとでも思っていたのか、俺の方へと縋り付く様な視線を向けてくる。
ため息が出る。俺が縋り付いてほしいと思うのはシルビアだけだ。だから、価値のなくなったリリーになど興味はない。
元々、最近怪しげな動きをする男爵令嬢のリリーを探る理由もあった。どうやら実家の方は隣国と繋がっているらしい。
シルビアを見れば、冷ややかな視線をリリーから俺へと移した。
「貴方のこういうところ、大っ嫌い。」
その言葉に俺の心は打ち抜かれる。シルビアのこういうはっきりした所もまた愛おしい。
「ごめんよシルビア。もう、二度とこんな事をしないから。だから、どうか、婚約破棄しないでくれ!」
「そもそも私はそんな話していないわ。私は、貴方と婚約破棄するつもりなんて元々ないのよ。」
「し・・・シルビア。それってまさか・・・」
希望を抱いてシルビアを見つめると、シルビアは大きくため息をつきながら言った。
「貴方みたいな人、私以外の誰が見張っていられると思うの?」
その言葉に胸が苦しくなる。
「それって、一生見張っていてくれるってこと?」
「まぁ、仕方ないわね。」
「シルビアぁぁぁぁ!」
抱き着こうとすると、さっと避けられてしまうが、それでも一緒にいてくれるならば我慢する。
欲しい言葉は中々もらえないが、それでも、シルビアが一生一緒にいてくれるならばそれでいい。
「愛しているよ。シルビア。ずっと一緒にいようね。」
笑顔でそう言うと、シルビアにはため息で返された。
その後、リリーの実家の男爵家は不正が発覚したことから爵位剥奪。リリーは行方不明となった。何でも、護衛の騎士と最終的には駆け落ちをしたとかなんとか、噂が残っている。
シルビアとレオナルドは一年後に正式に結婚した。レオナルドはシルビアに常に見張られることによって賢王としてその後名を残すのだが、シルビアの手記により”愛妻家””偏愛主義者””変態”という部分も後世に残る事となった。
「シルビアー!今日こそは愛して言っていってくれよぉぉぉ。」
「はぁ・・・貴方は?私を愛している?」
「もちろん!シルビアだけを世界で一番愛している!シルビアの為なら世界も征服できるよ!」
「そう。でも、私は今で十分だから、そんな物騒な事しないでね?」
「分かったよ!」
シルビアのおかげで、国は戦争になる事もなく、平和に時代を重ねた。
「ねぇ、いつになったら愛しているって言ってくれるの?もしかして、愛してない?」
「あら、馬鹿な人ね。」
「え?」
シルビアが一生涯の中で”愛している”とレオナルドに伝えたのは、一度だけ。その一言で天国に召されそうになったレオナルドが息を吹き返したとかしていないとか。
とりあえず、今日も世界は平和である。
おしまい
★★★★
読んで下さりありがとうございました。
お馬鹿な人達が書きたかったのです。
少しでも楽しいと思っていただけていたら、幸いです。
作者 かのん
そんな姿を見る度に、腸は煮えくり返るし、自分の事を愛していると言ってくれないシルビアにも腹が立って、愛情がどんどんと拗れていった。
シルビアの事になるとどうしても自制は効かないし、自分でも阿呆になっている自覚があった。
それでも、どんなことをしてでもシルビアの心を自分の方へと向けたかったのだ。
だからこそ、最近怪しげな動きを見せる男爵令嬢リリーの言葉にも乗った。
婚約破棄すると言ったら、もしかしたらシルビアが今度こそは自分の方に縋り付いて来てくれるかもしれない。
ありもしない妄想が広がり、結局リリーの言葉を受け入れた。
その為に、忙しいであろう貴族の令嬢や令息らに手を回し、会場を押さえ、婚約破棄と言う茶番を仕掛ける。
けれど、結果は惨敗である。
シルビアは冷たい瞳で俺を見下ろしてくるし、会場の空気も冷たい。
こんなことならやらなければよかったと、リリーの事が恨めしく思えてくる。
しかも、リリーは自分を庇ってもらえるとでも思っていたのか、俺の方へと縋り付く様な視線を向けてくる。
ため息が出る。俺が縋り付いてほしいと思うのはシルビアだけだ。だから、価値のなくなったリリーになど興味はない。
元々、最近怪しげな動きをする男爵令嬢のリリーを探る理由もあった。どうやら実家の方は隣国と繋がっているらしい。
シルビアを見れば、冷ややかな視線をリリーから俺へと移した。
「貴方のこういうところ、大っ嫌い。」
その言葉に俺の心は打ち抜かれる。シルビアのこういうはっきりした所もまた愛おしい。
「ごめんよシルビア。もう、二度とこんな事をしないから。だから、どうか、婚約破棄しないでくれ!」
「そもそも私はそんな話していないわ。私は、貴方と婚約破棄するつもりなんて元々ないのよ。」
「し・・・シルビア。それってまさか・・・」
希望を抱いてシルビアを見つめると、シルビアは大きくため息をつきながら言った。
「貴方みたいな人、私以外の誰が見張っていられると思うの?」
その言葉に胸が苦しくなる。
「それって、一生見張っていてくれるってこと?」
「まぁ、仕方ないわね。」
「シルビアぁぁぁぁ!」
抱き着こうとすると、さっと避けられてしまうが、それでも一緒にいてくれるならば我慢する。
欲しい言葉は中々もらえないが、それでも、シルビアが一生一緒にいてくれるならばそれでいい。
「愛しているよ。シルビア。ずっと一緒にいようね。」
笑顔でそう言うと、シルビアにはため息で返された。
その後、リリーの実家の男爵家は不正が発覚したことから爵位剥奪。リリーは行方不明となった。何でも、護衛の騎士と最終的には駆け落ちをしたとかなんとか、噂が残っている。
シルビアとレオナルドは一年後に正式に結婚した。レオナルドはシルビアに常に見張られることによって賢王としてその後名を残すのだが、シルビアの手記により”愛妻家””偏愛主義者””変態”という部分も後世に残る事となった。
「シルビアー!今日こそは愛して言っていってくれよぉぉぉ。」
「はぁ・・・貴方は?私を愛している?」
「もちろん!シルビアだけを世界で一番愛している!シルビアの為なら世界も征服できるよ!」
「そう。でも、私は今で十分だから、そんな物騒な事しないでね?」
「分かったよ!」
シルビアのおかげで、国は戦争になる事もなく、平和に時代を重ねた。
「ねぇ、いつになったら愛しているって言ってくれるの?もしかして、愛してない?」
「あら、馬鹿な人ね。」
「え?」
シルビアが一生涯の中で”愛している”とレオナルドに伝えたのは、一度だけ。その一言で天国に召されそうになったレオナルドが息を吹き返したとかしていないとか。
とりあえず、今日も世界は平和である。
おしまい
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読んで下さりありがとうございました。
お馬鹿な人達が書きたかったのです。
少しでも楽しいと思っていただけていたら、幸いです。
作者 かのん
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色々と新鮮で面白かったです。
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読みやすくとても面白かったです!!
いいおばか具合で読みやすかったです!