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四話 王子様
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「私と踊っていただけませんか?」
ファーストダンス以降はレオ様は踊ってくれる気がないようであった。踊り足りない気持ちだった私はそう声を掛けられて嬉しくて顔をあげると、そこには第二王子であるカイル様がいた。
「第二王子殿下にご挨拶申し上げます。私でよければよろしくお願い申し上げます」
「シーラ嬢は本当に美しいね。こちらこそ、よろしく」
流れるような美しい所作で手を取られ、ダンスフロアへと進んだ。
カイル様は美しい銀髪に深く青い瞳の持ち主であり、物腰柔らかな雰囲気に私の胸は高鳴った。
レオ様意外と踊ったことはないが、足を踏まないように気を引き締めなければならないと私は思った。
そして私は初めて知った。ダンスとは踊る相手によってこうも雰囲気も踊りやすさも違うのかと。
先ほどまでのレオ様とのダンスがなんだったのかと思うくらいに、踊るのが本当に楽しい。難しいステップも難なく軽やかにこなすカイル様。そして何よりも、腰に添えられている手の安定感が違う。
楽しい。
私が思わず満面の笑顔がでカイル様に視線を向けると、カイル様は少し驚いたような顔をしたのちに、優しい微笑みを返してくれた。
こんなに優しい笑顔を向けられたのは、いつぶりだろうか。
思わず、ぶわっと感情が高ぶってしまい、顔に熱が向かう。
だめだ。泣きそうだと思い、唇をぎゅっと噛むと、私はゆっくりと感情を抑えるように呼吸を浅く繰り返した。
愛はもう、諦める。
お母様もお父様もお兄様も、レオ様も侍女も、執事も。全員諦めてきた。
愛はなくても生きていける。
愛は、求めてはいけない。
私は顔に笑顔を張り付けて、楽しいダンスにだけ集中した。曲が終わると、私は早くカイル様から離れようと思った。
けれど、曲が終わるとカイル様に手を取られ、エスコートされてしまう。
「少し休もうか」
テラスへと出ると、侍従が飲み物を持ってきた。そして、それで乾杯してから口をつける。
テラスに用意された席へと、カイル様と横に並んで座ると、夜風が頬を撫でていった。
「楽しかったです。ありがとうございました」
そう伝えると、カイル様も嬉しそうに微笑みうなずき返してくれた。
「私も楽しかったよ。けれど……大丈夫かい?」
「え?」
「辛そうな表情を浮かべているから」
私は、そんな顔をしているのかと自分の頬に触れた。
その時、足音がしたかと思うとテラス内へとレオ様が現れ、カイル様に一礼をする。
その様子にカイル様は小さく息をついて肩をすくめた。
「どうやらシーラ嬢の婚約者であるレオ殿は、心配性なようだ。すまないね。婚約者が王子と一緒では心配だったのだろう?」
レオ様は慌てて首を横に振った。
「あ、いえ。シーラ嬢は初めての舞踏会ですし……その、第二王子殿下に失礼があってはいけないと、この場に参上した次第です」
「失礼? いや、シーラ嬢ほど美しい所作の女性はなかなかいないだろう? 失礼などないと思うが」
「は? いえいえ、シーラ嬢よりもエル嬢、あの、シーラ嬢の妹君の方が本当に素晴らしい女性でして、シーラ嬢なんて」
その言葉にカイル様は眉間にしわを寄せる。
「君は、紳士ではないな」
「は?」
カイル様は大きくため息をつくと、片手でレオ様を制して言った。
「すまないが、君は席を外してくれ。婚約者であるシーラ嬢を少し借りるがいいかな? あぁ、ちゃんと失礼がないように侍従は控えているし、心配はしないでくれ」
「えっと、はい。も、申し訳ございません。失礼します」
レオ様がその場から離れると、大きくカイル様はため息をついて言った。
「彼は、いつも君にああいった態度なのかい?」
「え? えぇ。そう、ですね」
エルを前にしてしまえば、皆が虜となり信者となる。そうなればああならざるを得ないのだ。
私からしてみれば仕方のないことだったけれど、カイル様にとっては違った様子であった。
ファーストダンス以降はレオ様は踊ってくれる気がないようであった。踊り足りない気持ちだった私はそう声を掛けられて嬉しくて顔をあげると、そこには第二王子であるカイル様がいた。
「第二王子殿下にご挨拶申し上げます。私でよければよろしくお願い申し上げます」
「シーラ嬢は本当に美しいね。こちらこそ、よろしく」
流れるような美しい所作で手を取られ、ダンスフロアへと進んだ。
カイル様は美しい銀髪に深く青い瞳の持ち主であり、物腰柔らかな雰囲気に私の胸は高鳴った。
レオ様意外と踊ったことはないが、足を踏まないように気を引き締めなければならないと私は思った。
そして私は初めて知った。ダンスとは踊る相手によってこうも雰囲気も踊りやすさも違うのかと。
先ほどまでのレオ様とのダンスがなんだったのかと思うくらいに、踊るのが本当に楽しい。難しいステップも難なく軽やかにこなすカイル様。そして何よりも、腰に添えられている手の安定感が違う。
楽しい。
私が思わず満面の笑顔がでカイル様に視線を向けると、カイル様は少し驚いたような顔をしたのちに、優しい微笑みを返してくれた。
こんなに優しい笑顔を向けられたのは、いつぶりだろうか。
思わず、ぶわっと感情が高ぶってしまい、顔に熱が向かう。
だめだ。泣きそうだと思い、唇をぎゅっと噛むと、私はゆっくりと感情を抑えるように呼吸を浅く繰り返した。
愛はもう、諦める。
お母様もお父様もお兄様も、レオ様も侍女も、執事も。全員諦めてきた。
愛はなくても生きていける。
愛は、求めてはいけない。
私は顔に笑顔を張り付けて、楽しいダンスにだけ集中した。曲が終わると、私は早くカイル様から離れようと思った。
けれど、曲が終わるとカイル様に手を取られ、エスコートされてしまう。
「少し休もうか」
テラスへと出ると、侍従が飲み物を持ってきた。そして、それで乾杯してから口をつける。
テラスに用意された席へと、カイル様と横に並んで座ると、夜風が頬を撫でていった。
「楽しかったです。ありがとうございました」
そう伝えると、カイル様も嬉しそうに微笑みうなずき返してくれた。
「私も楽しかったよ。けれど……大丈夫かい?」
「え?」
「辛そうな表情を浮かべているから」
私は、そんな顔をしているのかと自分の頬に触れた。
その時、足音がしたかと思うとテラス内へとレオ様が現れ、カイル様に一礼をする。
その様子にカイル様は小さく息をついて肩をすくめた。
「どうやらシーラ嬢の婚約者であるレオ殿は、心配性なようだ。すまないね。婚約者が王子と一緒では心配だったのだろう?」
レオ様は慌てて首を横に振った。
「あ、いえ。シーラ嬢は初めての舞踏会ですし……その、第二王子殿下に失礼があってはいけないと、この場に参上した次第です」
「失礼? いや、シーラ嬢ほど美しい所作の女性はなかなかいないだろう? 失礼などないと思うが」
「は? いえいえ、シーラ嬢よりもエル嬢、あの、シーラ嬢の妹君の方が本当に素晴らしい女性でして、シーラ嬢なんて」
その言葉にカイル様は眉間にしわを寄せる。
「君は、紳士ではないな」
「は?」
カイル様は大きくため息をつくと、片手でレオ様を制して言った。
「すまないが、君は席を外してくれ。婚約者であるシーラ嬢を少し借りるがいいかな? あぁ、ちゃんと失礼がないように侍従は控えているし、心配はしないでくれ」
「えっと、はい。も、申し訳ございません。失礼します」
レオ様がその場から離れると、大きくカイル様はため息をついて言った。
「彼は、いつも君にああいった態度なのかい?」
「え? えぇ。そう、ですね」
エルを前にしてしまえば、皆が虜となり信者となる。そうなればああならざるを得ないのだ。
私からしてみれば仕方のないことだったけれど、カイル様にとっては違った様子であった。
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