お馬鹿な主人公は、お馬鹿なりに頑張る。

かのん

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第二十二話 約一年後

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 約一年後、獣人の国にてロアン王子の誕生日前日の夜。

 闇夜の中で蠢く人の影に、突如として光があたり、誕生日プレゼントの中に潜伏していた暗殺者たちは獣人の国の騎士たちに取り囲まれた。

「なっ!どういう事だ!これは!?」

 暗殺者達は突然の事に目を丸くし、そして次の瞬間騎士たちの手によって次々に捕縛されていく。

 騎士らに指揮をするのは明日が誕生日であろうまだ幼い王子。その姿は幼いながらに堂々としており、暗殺者達はその姿を睨みつける。

 この状態では到底勝ち目はない。

 それでも暗殺者達は一人でも生き延びてこの事を国に伝えなければならないと必死に抵抗をするが、次々に倒されていく。

「くそくそくそ!どうして分かった!おのれ!」

 最後の一人となった暗殺者は、突然の事に唇を噛み、そして周りを見回す。

 かなりの人数の騎士が配置されており、明らかにこちらの手が読まれていたのだと悔しさが顔ににじむ。

 だが、このままで終わりはしない。

 暗殺者はせめてもの反撃をと王子目がけて胸に隠していたナイフを投げつける。

 だが、それは王子を守る騎士らに防がれてしまい、近くにいた騎士に背中を斬られる。

 その瞬間に、暗殺者はある人物を見つけて目を丸くする。

 王子の横には、歪の国の皇女であるアレッサンドラが佇んでいた。

「そういう・・・・事か・・・・。」

 暗殺者は倒れ、そして全員が捕縛される。

 獣人の国のロアン王子はこの一年国王を説得するとともに、内々に誕生日プレゼントの検品を厳しくすることを通達していた。そして、それにより暗殺者がいることは容易に分かった。

 ロアンはそれを国王に報告し今に至る。

 言葉にすれば短い。だが、ロアンがしてきたのはそればかりではない。

 横に立つ歪の国のアレッサンドラから連絡を受けた時には何かの罠ではないかと勘繰ったが、あのユシーと名乗った謎の少女が亡国の姫君ユグドラシルであろうことをアレッサンドラによって気づかされたロアンは、その後アレッサンドラと手を組んだ。

 アレッサンドラは父を説得したものの、このままでは自国も危うい。薬を手に入れなければならないと帝国に見方をするふりをしてロアンと連絡を取り合い、エルマティア帝国から手引きした暗殺者らを捕縛した。

 この事件により、エア皇国、エジェンドア王国は共にエルマティア帝国に立ち向かう協定を結ぶ。

 そして、そこにエルマティア帝国の正統なる王位継承者であるリディックがガデオンと共に加わった。

 と、その様子を山頂からルシフェルの手を借りて様子を見ていたユグドラシルは声を上げた。

「わぁ・・・未来が変わったねぇ。」

 そんなのんきなユグドラシルの言葉にルシフェルは大きくため息をついた。

「ユグドラシルの見ていた未来とは変わったのだろう?今後は大丈夫なのか?」

「うーん。どうだろうなぁ。ロアンとアレッサンドラ、リディックにガデオンが集まるのは一年後のはずだったんだけど、今の時点で集まっているし・・・今後、どうなるんだろう。」

「なんにせよ、お前も頑張らなければならないぞ。」

「うん。私も影ながら、頑張るよ。」

「姿を現して、仲間になったらどうだ?」

 その言葉にユグドラシルは首がもげるのではないかと思うほど何度も首を横に振った。

「ダメダメ!ダメダメ!私がお馬鹿なことがばれたら・・・幻滅されちゃう。」

「そう・・・か?」

 ルシフェルはお馬鹿でもユグドラシルの事が嫌いではない。むしろ、何と言うかお馬鹿だからこそ可愛い。

 だが、確かに、と思う。

 この一年の様子をたまにユグドラシルと見守っていたが、ユグドラシルに対してのあの四人の印象が、その、なんというかすさまじい事になっていた。

 ユグドラシルは遠い目をしながら言った。

「夢は夢だからこそ美しいのよ。」

「あ・・・あぁ。」

 何とも言えないルシフェルなのであった。

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