お馬鹿な主人公は、お馬鹿なりに頑張る。

かのん

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第二十四話 時系列のずれ

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 ユグドラシルは進軍する反乱軍に合わせて、自身も移動をしていた。

 あのまるで夢物語のような理想のユグドラシルを作り上げた四人と一緒に行動するのは絶対にできないと考えながらも、反乱軍の様子を見ていかなければ物語との誤差がどのように出ているのかが分からなかったからである。

 ルシフェルがいるからこそ、反乱軍の内部の様子は手に取るように分かったが、それと同時に物語との時系列のずれにユグドラシルのお馬鹿な頭はパンク寸前であった。

「時系列がこんがらがってきた。でも、今から向かうのは帝国の西側にある難攻不落の要塞都市だから、多分、あの事件が起こるので、間違いないとは、思う。」

 ぶつぶつとそう言ったユグドラシルの肩に乗ったルシフェルは首を傾げた。

「まさか、反乱軍は要塞都市から落とすつもりなのか。」

「ええ。あそこは最後に残られたら一番厄介な場所だから。逆を言えば、要塞都市さえ落としさえすれば、後は順当に行けるともいえる。でも。」

「でも、何だ?」

 ユグドラシルは空を見上げた。

 空は曇天であり、分厚い灰色の雲が空を覆っていた。

 この天気は、まずい。

 やはり物語は確実に、その物語の一説を辿って行くのだなとユグドラシルは思った。


 要塞都市は、中に入ってしまえば落とすのはたやすいだろう。

 だが、問題は中に入るまでである。

 高くそびえる壁を登って上へたどり着くことはほぼ不可能。籠城されてしまえば落とすのが最も難しい場所なのである。

 そして、もう一つ、この砦が難攻不落とされる理由があった。

 この砦、たどり着くためには峡谷を抜けていかなければならないのだが、雨が降ったならばその峡谷にはよく濁流が流れ込む。

 地形と天気を読む力がなければ峡谷を越える事すら難しい。

 物語の中では、一度目の進軍の時にはその地形のせいで、雨によって濁流が起こり、兵の三分の一を失うという事態になってしまった。

 今回は、その事態を出来れば避けたい。

 一人の兵にも家族がいて、待っていてくれる人がいるのだ。

 ユグドラシルはその事態を避けるための方法を知っている。

「ルシフェル。反乱軍よりも先に一気に進むよ。走るから、振り落とされないでね。」

「あぁ。どこへ行くんだ?」

「この地形に最も詳しい人の所。」

 この一年、ユグドラシルは陰ながら物語を支えるためにガジェラルやルシフェルの力を借りて体力を鍛えたり、多少の武術を身に着けたりしてきた。

 お馬鹿なので勉強の方はさっぱり身に付かなかったが、体を動かすことは元々好きだったので、そちらはぐんぐんと伸びたように思う。

 そして、ユグドラシルは精霊に愛されし乙女でもあるのだ。

 峡谷の大地はユグドラシルの進む道に祝福をもたらし、その大地をユグドラシルは蹴る。

 本人は意図しなくても、その守護は絶大であり、ユグドラシルの走る道には花々が咲いていた。



 



 
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