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第一章
ロイの困惑 64
しおりを挟む「ぅ、、ぐぐぐぐ。」
グリードはどうしたらいいのかが分からず、木の影から見つめるしかない。
帰ったらきっとフィリアはいつもみたいに笑顔で迎えてくれると思っていた。
それが間違いだった。
「ロイ様、マリア様。そういえば、今日の数学先生間違えている所ありましたよね。」
「あぁ。フィリア嬢も気づいたか。あれは困ったものだな。」
「私は終わってからこっそり教えて差し上げたわ。明日訂正を皆に示すとおっしゃってました。」
三人が談笑する姿をグリードはただ見つめる。
近づくことすら許されず、無視が続いている。
こんなにもフィリアが怒るとは思っておらずもう泣きそうである。
しかも、フィリアは当てつけるかのようにロイと仲良くし、その後はハロルドとお茶をするのである。
しかも、しかも、先日などハロルドに頭を撫でられた上、ハロルドの事を、、、大好きと言っていた。
「ぐふ、、、。」
思い出すだけで血反吐を吐きそうになる。
何故ここまでフィリアが怒っているのかが分からず、また、フィリアをここまで怒らせた事もないグリードは、どうやったら怒りを鎮めてくれるのかさえ分からない。
だが、ここで一番気まずいのはロイである。
とにかく、グリードの視線が痛いがフィリアからも無視するように笑顔で言われてしまっている。
「フィリア嬢は何を怒っているのだ?」
ロイが思わずそう尋ねると、フィリアは少し悲しげな表情を浮かべた。
「私と一緒にいるのに、、他の人の事ですか?」
「ぅ、、、そういうつもりではないが、、はぁ。君のその演技力、本当に止めて欲しい。騙されそうになる自分が恥ずかしい。」
「頑張って下さいませ!」
フィリアはくすくすと笑い声をたてると、ロイに楽しそうに言った。
「でも、そうやって焦ったり、恥ずかしがったりするロイ様も私は良いと思います。」
それに、マリアも頷いた。
「それは、私も賛成です。いつもの真面目で真剣なロイ様も素敵ですが、気を抜いているというか、少しくだけたロイ様も好きです。なんだか、いつもよりも雰囲気もやわらかくて、そんなロイ様も素敵です。」
そういえば、と思う。
以前は真面目にしなければいけない。相手に隙見せないように、気を貼っていなければと思っていた。
だが、フィリアに自分のペースを崩され、友人やマリアと砕けて話ができるようになると、一気に肩の力が抜けた。
以前までは目が合うだけで嫌そうな顔をしていたクラスメイトや、後輩たちが笑顔で話しかけてくれるようになった。
「マリア。私は今のほうが良いか?」
思わずそう尋ねると、マリアは微笑みを浮かべた。
「はい。ロイ様は以前より笑顔が増えています。私はどんなロイ様も好きですが、笑顔のロイ様を見ると幸せになりますわ。」
「ふふ。そうか。」
「はい。」
マリアとロイが甘い雰囲気を出す中、フィリアはにまにまとしている。
グリードはその姿を見ながら、大きくため息をついた。
自分はいつになったら許されるのであろうか。
思わず手に力が入り、木が折れてしまう。申し訳ない。精霊が後で治しに来てくれるから許してくれと心の中で思う。
「フィリアぁ、、、、」
思わず情けなくもそう名を呼ぶと、フィリアと目があったが、無言ですっと目を細められ、口が小さく動いた。
『許さない。』
「フィリア、、、。」
グリードの手にしていた木は燃え上がった。
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