【完結】ヒロインは暗黒龍と共に、悪役令嬢の恋を応援します!

かのん

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第一章

 ロイの困惑65

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 小さな頃から、自分は4大貴族なのだから、しっかりしなければいけない。周りに流されないようにしなければと、思っていた。



 だからこそ、学び、だからこそ何事にも真剣に向かってきた。



 だが、人にもその厳しさを求めてしまい嫌な顔をされるようになった。



 なぜ、努力しない?



 なぜ、最善をつくさない?



 なぜ?



 自分にとっての当たり前が、周りの当たり前とは違う事に気が付いても、どうする事も出来なかった。



 それが、フィリアにあって自分のペースをひどくかき乱されて、気が緩んだ。



 そうしてみると、周りの反応が変わった。



 今までは、自らの口から出るのは苦言ばかりだったが、それを言うとすぐにフィリアにもマリアにも突っ込まれた。



 そうすると、周りは笑い、そして自分もそう伝えれば良かったのかと感じた。



 そうした事を繰り返すうちに気がついた。



 自分は気を貼り過ぎなのだ。



 苦言を呈するにしても、伝え方がある。



 相手に努力を求める時には、自分の思いを伝え、一緒に頑張って欲しいと願う事も大切なのだ。



 マリアに、今の自分のほうが好きだと言われて嬉しく思った。



 フィリアはにやにやと笑っていて少し腹立たしくなったが、まぁ、それでもいいのかなと思えた。



 この秋の季節もまもなく終わる。



 最初は嫌で嫌で仕方がなかった。



 フィリアの演技に揺らぐ自分が異様に思えて気持ちが悪かった。



 だが、側にマリアがいてくれて、笑顔を向けてくれた事で心が落ち着いた。



「マリア。いつもありがとう。」



 横に並んで歩くマリアは笑みを浮かべた。



「こちらこそありがとうございます。」



 フィリアには振り回されたが、こうして一緒にいてくれる人がいる幸せに気づけた。



 そして今の自分も嫌いじゃない。



 ロイは優しく微笑んだ。





 そんな二人をフィリアはやはりにやにやと見つめたが、ちゃんと精霊王には負けないようにと全力で演技は続けた。だが、いくら好感度を上げよとマリアには叶わないだろうなと、嬉しく思った。

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