【完結】ヒロインは暗黒龍と共に、悪役令嬢の恋を応援します!

かのん

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第一章

  当て馬 87

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 季節は巡っていくが、フィリアとグリードの仲は進展するどころか悪化の一途をたどっていた。

 それに四大貴族とその婚約者達は焦って作戦を立てては失敗を繰り返していて、見るに耐えなくなってきていた。
 

 ハロルドは、最近ではニフエルとよく過ごすようになっていた。

 最初こそ、ニフエルの事を勘ぐっていたハロルドであったが、話をするうちに意気投合するようになった。

「ハロルド殿下は、フィリアの事は良いのですか?」

 突然そう尋ねられ、ハロルドは笑った。

「おや、バレましたか?」

「はい。」

 紅茶を一口飲みつつ、ハロルドは言った。

「もう私は振られています。それに、今では私とフィリアは良き友なのですよ。」

 そう言い切るハロルドをニフエルは見て、これも人の愛なのだなと感じた。

「お優しいのですね。」

 それにハロルドは声を上げて笑った。

「そうですね。フィリアに対しては、どうにもね。だから、今から友として、当て馬になってあげようとしているんです。」

「ほう?」

「ヘタレな男にはフィリアは相応しくないのでね。」

「ならば私がグリードを連れていきましょう。」

「ありがとうございます。」

 二人は立ち上がった。



 ハロルドは、フィリアの元へと行くと、連れ出し、決闘場へと足を向けた。

 突然連れられたフィリアは困惑しているが、そこにグリードが見え、足を止めた。

「これはどういう事?」

 ハロルドは、笑みを浮かべた。

「グリード。私とフィリアを掛けて勝負をしてほしい。」

 その言葉に、二人は目を丸くした。

 ニフエルは、笑うと剣をグリードに投げて渡した。

「私が見届けよう。」

 勝手に進んでいく話しに、フィリアは口を挟もうとしたが、ニフエルがフィリアを観客席へと移動させる。

「ニフエル!」

「フィリアさん。ハロルド殿下の心意気です。高みの見物をしていはさい。」

「心意気?」

「友達の為に一肌脱いでくれているんです。見ておきなさい。」

 そう言われフィリアは、二人に視線を向けた。


 ハロルドは、剣を構えた。

「フィリアは、このへたれの何がいいのだろう。」

「なんだと?」

 グリードが殺気を放つと、ハロルドは笑った。

「嫉妬深いし、へたれだし、私の方がフィリアに相応しいのに。」

「おい。」

「人間でもないのにな。」

 グリードは、正論過ぎてかなりのダメージを受けた。

「でも、フィリアが好きなのはアンタなんだ。」

 その言葉に、息を呑む。

「女に言わせるなよ。みっともない。男ならば堂々と向き合え。」

 そう言うとハロルドはグリードに剣を向けた。

 鋼が鳴り、腕にピシリと痛みが走る。

 剣でしばらくの間打ち合いが続く。

「フィリアに悲しい顔をさせるな!」

「そんな事は分かっている!」

「ならば逃げるなこのへたれ!」

 鋼を打ち合わせた状態で、力で押し合う、

「もしこのままフィリアに悲しい顔をさせるのならば、本当に私がフィリアを貰い受ける。」

「ふざけるな!」

 ハロルドの剣をグリードは押し返した。

「フィリアは我のものだ!」

 声が響く。

「ならばしっかり向き合え!」

 剣と剣がぶつかり、そして、最後にハロルドの剣をグリードが弾き飛ばした。

「分かっている!」

 お互いに方を上下させ、ハロルドはグリードの胸に、拳を打ち込んだ。

「泣かせたら、許さんからな。」

 そう言い、ハロルドはグリードに背を向けた。

 そして、フィリアの目の前に行くとフィリアの手を取り指先にキスを落とす。

「ちゃんと向き合っておいで。」

 そう言い、ハロルドはその場を後にした。

 ニフエルは、ハロルドの後にひらひらと手を降ってついていってしまった。

 ニフエルは、ハロルドに言った。

「これで良かったのか?」

「あぁ。スッキリした。それに、ぎくしゃくした時間が続けばそれだけ上手く行かなくなる。四大貴族の者達とその婚約者殿達が手伝って応援しているのは分かるが、、、なんとも言えない空回りばかりだからね。直接向かい合った方が良かったんですよ。」

「そうか。殿下は大変だな。」

 ハロルドはその言葉に、笑った。

「あぁ!本当になぁ。」


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