【完結】ヒロインは暗黒龍と共に、悪役令嬢の恋を応援します!

かのん

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第一章

告白 88

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 ハロルドが行ってしまい、残されたフィリアは心臓がどくどくと鳴るのを感じた。

 これは、どうすればいいのであろうか。グリードに自分の気持ちを伝えるのか?

 そう思うと顔がどんどんと赤くなる。

 グリードが近寄ってくるのが分かり、フィリアは体を強張らせた。

「フィリア。」

 グリードの声に肩がびくりと震える。

「聞いてほしい事がある。」

 その言葉に、胸が苦しくなる。

 なんの話だろうかと怖くなる。

 グリードの真剣な瞳が、自分の瞳と重なった時、フィリアは何とも言えない緊張に包まれた。

 怖い。

 聞きたくない。

 体が震える。

 フィリアは思わずグリードから離れ、逃げるように走り出してしまった。

 何故か怖くてたまらない。

 一度落ち着いてから話をすれば良いと思ったフィリアであったが、後から全速力でグリードが追いかけてくる。

 それが怖くて、フィリアも全速力で逃げる。

 二人の鬼ごっこが始まった。

 学園内を二人は凄い速さで駆け抜けていく。

 それはかなり目を引き、見たものは驚きの声を上げる。

「フィリア逃げるな!」

「だって怖い!」

「何もしない!」

「じゃあ追いかけないで!」

「なら逃げるな!」

 二人の問答が続くが、グリードはシビレを切らし一気に距離を詰めるとフィリアを後から抱き締めた。

 体育館裏のその場には誰もおらず、その場はシンと静まり返っていた。

「は、、、離して?」

 フィリアの言葉に、グリードは首を横に振った。

「逃げるから駄目だ。」

「逃げないわ。」

 グリードは自分を落ち着かせるために、大きく息を吐くと言った。

「そのまま聞いてくれ。」

 びくりとフィリアの体が震える。

 グリードは、優しい声でフィリアの耳元でささやく。

「好きだ。」

 その言葉にフィリアは息を呑んだ。

「家族の愛じゃない。俺は、、、フィリアの事を恋愛の対象として愛している。」

 グリードの心臓の音が布越しに伝わってきた。

 フィリアは顔からは火が出てきそうなほど真っ赤になっていた。

 煩いくらいに心臓が鳴る。

「え?え?」

 焦るフィリアをぎゅっと抱き締め、グリードは言葉を続けた。

「気持ち悪い、、、よな。すまない。でも、もう自分の気持ちを抑えられない。」

「へ?!き、、、、気持ち悪くなんてないわ。」

「無理をしなくても良い。フィリアが求めているのは家族愛なのに、、、すまない。」

 何を勘違いしているのであろうか。

 フィリアは驚き、そして、気付いた。

 そうか。自分の気持ちを伝えていないから伝わっていないのだ。

 フィリアは、震える声を抑え、勇気を振り絞った。

「あ、、、あのね。」

「あぁ。」

「私はグリードの事を、、、」

「あぁ。」

「す、、、、、好きよ。」

 抱き締められていた体がきつくなる。

「どういう意味の好きだ?」

「えっと、、、恋愛的な意味で、ずっと、好きよ。」

「、、、もう一回言ってくれ。」


 顔が熱い。

「好き。」

「愛してる?」

「あ、、、愛しているわ。」

「もう一度聞かせて。」

 声がどんどんと甘みを増していく。

「愛しているわ。」

 恥ずかしくて辛い。

 もう勘弁して欲しい。

「俺も愛している。愛している。はぁ、、、フィリア好きだ。」

「ぐ、、、グリード。恥ずかしい。」

「好きだ。愛している。」

「わ、、、分かったから。」

「もう一度聞かせて?」

 グリードはフィリアの体を反転させ、顔を覗き込んでくる。

「俺の愛しいフィリア?愛している。もう一度聞かせて?」

 甘い声と顔でそう言われ、フィリアは、全身から湯気が上がる。

「は、、、恥ずかしいわ。」

「お願いだ。まだ信じられないんだ。お願い。」

 子犬のように可愛らしくそう言われ、フィリアはうっと固まると、小さな声で言った。

「愛しているわ。」

「あぁ!フィリア!」

 ぎゅっとまたキツく抱き締められた所で、物陰から歓声が上がった。

 そちらの方を見ると、生暖かい瞳で、四大貴族の皆さんと、婚約者の令嬢らがこちらを見つめていた。

 慈愛に満ちたその生暖かい視線に、フィリアは恥ずかしさが爆発し、その場でボスンと湯気を上げて倒れた。

「フィリア!」

 皆が叫んでいたが、フィリアは薄れゆく意識の中で思ったのだ。

 恋愛を見守り、応援するのは良いが、応援されて生暖かい瞳で見守られるのはこんなにも恥ずかしいのかと。

 なんとなく、これまでの事を反省した。



 次の日、ニフエルがグリードの事を駄犬と呼びつつ節度のある恋愛の仕方、接し方という授業をしていてその内容に悶絶するフィリアであった。



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