【完結】ヒロインは暗黒龍と共に、悪役令嬢の恋を応援します！

第二章

第八話

　黒曜の令嬢と呼ばれる娘がいた。

　彼女は黒い美しい長い髪と、黒曜石のような瞳をもち、それはそれは麗しく、誰も彼もが彼女を欲しがった。

　この国にはない黒目黒髪は妖艶で、男共はうつつを抜かし、女達は辛辣な言葉を投げつけた。

『見て、あの悍ましい色。』

『男共を誑かす悪女ねぇ。』

『あら、魔女ではないかしら。』

　鈴がなるような美しい声で、彼女を罵倒する。

　そして、そんな彼女を手に入れようとする男に、罠を仕組まれ彼女は地に落ちていく。

　いわれのない罪を着せられ、断罪され、彼女には恐ろしい運命が言い渡された。

『呪われた宝珠の飾り手となり、一生を過ごせ。』

　呪われた宝珠の飾り手とは、その呪いを一心に受けるいわば生贄のようなものである。

　泣いて無罪を訴えたが、彼女の声は誰にも届かず、彼女は物のように宝物庫に入れられ、呪われた首飾りを付けられて、ショーケースの中に飾られた。

　彼女をまんまと手に入れた男は、飾られる彼女を見て恍惚とした表情を浮かべて言った。

『あぁ、美しい。』

『どうして、こんな事をなさったの？』

『え？だって美しいものは美しいままに飾られるべきだろう？』

『え？』

『大丈夫。そのショーケースには時止まりの魔法が掛けられているからお腹もすかないし、ずっと美しいままにいられるよ。』

『そんな、、、。お願い出して！』

『駄目だよ。だって君は、悪役令嬢なのだから。』

　その表情にぞっとした彼女は、宝物庫に静かに飾れ、そして今、目の前に現れた微かな希望に縋り付いた。

「助けて。」

　目の前に現れたのは、天使のように美しい女の人であった。

「助けるわ！」

　その声を聞き、あぁ天使様が来てくださったのだと思った。

　その後ろにいたもう一人の男の子の天使様は呆れたような顔をしていたが、何故か、この方たちについていけば大丈夫だと思えた。

　フィリアという名の天使様にこれまであった事を話すと、励まされ、大丈夫と抱きしめられて温かな気持ちになった。

　きっと大丈夫。

　私はこの天使様についていこうと、彼女は心に決めた。