【完結】ヒロインは暗黒龍と共に、悪役令嬢の恋を応援します！

第二章

第九話

　フィリアの言葉にグリードは、はっきりと言った。

「あのさ、悪いけど必要なものは呪われた宝珠だけなのだけど？」

　その言葉に、フィリアははっきりとした口調で言いかえした。

「令嬢の助けを無碍になど出来ないわ。」

「いや、だけど足手まといだよ。」

「聖なる龍である貴方が、令嬢ひとり助けられないと言うの？」

　グリードは、フィリアの言葉に眉間にシワを寄せ、ため息をつくと頷いた。

「分かったよ。」

「さぁ、そうと決まればまずはその魔法具のショーケースを壊さなければね。」

「壊したらきっと城は大騒ぎになるだろうから急いで逃げ出すよ。」

「ええ。貴方、準備はいいかしら？」

　令嬢が頷くのを見て、フィリアは魔法を展開させていく。

　その様子を見ながら、グリードは人間の女の子は自分が思っている以上に足は早いし、魔法はつかえるし、強いし、聞いていた話とは全然違うとため息をついた。

　令嬢の周りに光が集まり始めると、ショーケースは光の粒となって消え失せた。

　だが、その瞬間に防衛魔法が発動し、魔法を使ったフィリアへと氷の刃が飛んだ。

　グリードはそれを炎で焼き尽くし、にっこりと笑ってみせた。

「もたもたしてないで、さぁ、行くよ？」

　フィリアは笑みを返して頷いた。

「ありがとう。旦那様？」

「いや、結婚した覚えないからね。」

「ふふ。」

　令嬢にフィリアは手を差し出して引き起こし励ますように声をかけるとグリードが担ぎ上げた。

「きゃっ。」

「今は時間ないから運ぶよ。口は開けないで、舌を噛むからね。」

「どうやって逃げるの？」

　グリードは笑みを浮かべると言った。

「そりゃあ飛んで逃げるのさ。さぁ、行くよ！」

　宝物庫の外に出ると、騒がしくなってきているのが分かった。

　グリードは一番近くの窓に手をかけると、フィリアも抱えて空に飛び上がった。

「きゃぁぁぁ！」

　令嬢は悲鳴を上げ、フィリアは両脇に人を抱えて空を飛べるなんて力持ちだなぁなんてことを考えていた。

　すると後方から強い魔力を感じてフィリアは慌てて防御魔法を張った。

　グリードは振り返るも高台から魔術師らがこちらに向かって魔術を展開しようとしている。

　ジャックスの姿も見え、こちらを悲しげに見つめて声を上げた。

「帰っておいで！怒らないから！」

　フィリアはにっこりと笑うと言った。

「短い間でしたが、お世話になりましたぁ。」

　魔の抜けた声にグリードは苦笑を浮かべると一気に上空へと飛び上がり雲の中へと姿を隠した。

　本気を出した龍のスピードについてこれるものなど早々はいないだろう。

　フィリアはグリードが飛び出す前に自分と令嬢に防御魔法をかけておいて良かったと思った。

　もしかけていなければ悲惨な事になっていただろう。

　なのでフィリアは言った。

「グリード？人間の女の子は可弱いのだから急に空に飛び上がっては駄目よ？」

　その言葉にグリードはため息をついた。

「うっそだぁ。」