【完結】ヒロインは暗黒龍と共に、悪役令嬢の恋を応援します！

第二章

第二十話

　二フエルはにこにことほほ笑みながら言った。

「グリードは記憶がないと言ったけれどね、どうやら私とヴィオレッタにはある。フィリアがこちらの世界に戻るとなった時に、自分の記憶とヴィオレッタの記憶に魔法を掛けておいたおかげか、フィリアが戻ってきた瞬間にすべてを思い出した。」

　その言葉にグリードは目を丸くした。

「何故俺だけ記憶がないんだ！」

　それに二フエルはにっこりと笑みを浮かべると言った。

「あの瞬間は一瞬で、自分とヴィオレッタまでしか魔法が行き届かなかった。それにグリードであればすぐ考え付いて自分ですると思ったんだが、よほどフィリアの事がショックだったんだろう？あのまま何もせずにいるなんてこちらこそ驚いた。」

　その言葉にグリードは、うっと息を飲み、そしてうなだれた。

　ぎゅっと抱きしめてくるヴィオレッタの頭をよしよしと撫でながら、フィリアは二フエルに言った。

「二フエル！一体全体、何がどうなってヴィオレッタと結婚したの？！」

　そう尋ねると、ヴィオレッタは照れ臭そうに耳を垂れた。

　すると、二フエルは優しげな笑みを浮かべ、フィリアに抱き着くヴィオレッタを自分の方へと引き寄せて抱き上げると、嬉しそうに言った。

「これだけ可愛ければ、結婚するだろう。」

　次の瞬間、グリードもフィリアも目を丸くした。

　二フエルが。

　二フエルがデレた。

　いついかなる時でもひょうひょうとしている男が、デレた。

　フィリアは目を細めると、それを見なかったふりをしてヴィオレッタをもう一度自分の方へと引き戻すとその毛並みのもふもふを堪能した。

「私のヴィオレッタをあまり触りたくらないでくれ。」

　聞こえません。

　私には二フエルのデレなんて聞こえません。

　そう自分に言い聞かせてヴィオレッタを堪能したフィリアは、大きく息を吐くと言った。

「それで、本当に宝珠とイヤリングは大丈夫なの？」

「ええ。あれから何度か交渉を試みて、二フエル様が天に召されるときに皆で一緒に行きましょうって話にまとまっています。」

　それを聞き、フィリアは苦笑を浮かべた。

「なんだか遠足みたいなのりね。」

「まあ、そんなものだ。」

　フィリアはその後もしばらく皆で談笑をした後にグリードと屋敷へと戻った。

　なんだか本当に久しぶりのような気がして、フィリアはベッドに身を投げ出した。

「はぁ、幸せだわ。」

　すると、そんなフィリアにグリードはのしかかり、そして言った。

「あぁ、幸せだ。それで？過去の俺と何をどうしたんだ？」

「へ？」

「唇が柔らかかったと？ほう。それで？他は？」

「え？え？他って、、、。」

「ふふ。大丈夫。時間はたっぷりあるから、事細かに教えてくれ。」

　グリードの嫉妬に燃える瞳を見て、フィリアは心の中で悲鳴をあげた。