魔法使いアルル

かのん

文字の大きさ
80 / 92

16話

しおりを挟む
☆☆☆

 暗い、暗い、闇に囲まれた城のへと帰って来たノアは、大きくため息をついた。

「まさか、こんなところでレレナを失うとは……商人に変装して妹に植物を渡し、諍いの芽を育て、レレナに太陽の花を渡してマリアに植え付けさせ、いろいろと裏工作が大変だったと言うのに……残念ですねぇ」

 レレナを失ったことに悲しみの色はない。

 そんなノアの前に、オロチが黒い闇を纏って姿を現した。

「……レレナは?」

 オロチの言葉にノアは肩をすくめると答えた。

「アルル様とレオ様に負けて、捕縛されてしまいました」

 その言葉に、オロチは首をひねる。

「なんと。お二人にまんまとやられたということですか?」

「あぁ。私はアロン殿を相手にしていたのだが、アルル様とレオ様の息は以前よりも遥かに合っている。その上、魔法の使い方も成長している。ふふふ。どちらが我らの王になってもいいですねぇ。だが、王になるのは一人。より、深い闇に呑み込まれた方です」

 ノアの言葉と暗い瞳を見つめながらオロチは口を開く。

「その通りです。レレナの件は可愛そうでしたが、だが、レレナは頭が固くて私がいくらあの赤い花が欲しいと言ってもくれなかったので、今回のことは天罰かもしれませんね」

 にやぁっとオロチは笑い、レレナへの愚痴をこぼす。

「この赤い花は、すごい。うまく活用すれば、いろいろと、できるでしょう。ふふふふふふ。ぜひ……早々に試してみたいものです。なのでちょっと実験室にこもります」

 オロチはそういうと、楽しそうに研究室の方へと歩いていく。

 その背を見送ったノアは、また楽しいことになりそうだなとそう思った。

「ちょっと、ノア。レレナの気配が消えたけれど、あの子へましたの?」

 オロチと入れ替わるようにして現れたのは、毒呼のドリーであった。彼女は毒を操る黒い魔法使いの一人であり、レレナとはあまり仲が良くはなかった。

「あの子って爪が甘かったものねぇ。でもノア。このままじゃいけないんじゃないかしら」

 ドリーの言葉は正しく、実はノアもそう思っていた。

 最近、黒い魔法使いとして闇の拡大が図れていない。

 ことごとくアロン、アルル、レオの三人に防がれてしまっているのである。

 黒い魔法使いたちの王にふさわしいアルルとレオが成長するのは嬉しいことだが、黒い魔法使いとしては現状あまりよくはない。

「そうですねぇ。あぁそうだ。じゃあ、ドリーは氷の王国にあの三人がとどめられている間に、小国を狙って闇へと落としていってもらえますか?」

「あら素敵。いい考えね」

「えぇ。人間……手の届く範囲しか救うことは出来ない。ふふふふふ。アルル様とレオ様にそれを分からせてあげましょう」

「ふふっ! さすがはノアね。じゃあ、行って来ようかしら」

 そうドリーが言った瞬間、ドリーの周りに黒い闇と毒が溢れ、翼のようにして広がった。

「おお。闇の毒翼、完成したんですか?」

「いい感じでしょう? ほら、これなら」

 ドリーは翼をはためかせた。

「自由自在に飛び回れる。しかも飛ぶたびに毒と闇をまき散らせる最高の代物よ」

 楽しそうにドリーはそう言うと、空中でくるくると回った。

 すると、地面にびちゃびちゃと闇と毒が飛び散り、紫色の煙が立ち上る。

「いいですねぇ。最高です」

「でしょう~? じゃあ、行ってくるわね。絶望の闇で、たくさんの人を救ってくるわ。数日後には帰るわ」

「いってらっしゃい」

 ひらひらとノアに手を振られて見送られる中、ドリーは空を飛んでいった。

 ノアはにっと笑みを浮かべた。

「さぁて、忙しくなってきましたねぇ。氷の王国はさてさて、どうなることやら」

 まるでゲームをしているかのようだった。

 ノアにとっては、人の不幸などどうでもない。

 大切なのは、早く漆黒の王座に王をすえること。

「あぁ、どちらが先に、闇に呑み込まれるか……楽しみですねぇ」

 仄暗い黒い瞳でノアはそう呟いたのだった。



しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

処理中です...