魔法使いアルル

かのん

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19話

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 氷の王国の王城の敷地内に、人々が身を寄せ合いながら集まり、そして祈るように手と手を合わせる。

 お父さんは、王城の周りに、守護魔法、防御壁、結界魔法をかけ、杖を空にかまえたまま、魔力を一定に保っている。

 温かな光で包まれた王城は僅かに輝いて見える。

 お父さんがいれば、絶対に氷の王国の人々は大丈夫だ。

 私とレオは外側からお父さんに向かって視線を向け、うなずき、背を向けると飛び始めた。

 今まではいつもお父さんがいてくれた。

 どんな時も。

 でも、今回は私とレオが頑張らなければならない時だ。

「アルル。アロン先生はすごいな」

 レオの言葉に、私はうなずく。

「そうだね。だって、これまでお父さんは、何回も、きっと何十回もこんなことがあったはず。でもそれを今まで一人で解決してきたんだから。さすがは偉大なる大魔法使いだよ」

 風を切って空を飛びながら、私は思う。

「でもさ、これまできっと、何度も何度も、大変だったと思う。だから、これからは私がお父さんの力になるんだ!」

 真っすぐに私がそうつぶやくと、レオが一瞬だまった。

 どうしたのかなと思うと、レオは言った。

「アルルはすごい」

「え?」

「いつも、前を向いて、真っすぐで。僕は、アルルのそういうところがとても眩しくって、憧れる」

 照れくさい言葉に私が笑うと、レオの瞳が一瞬、暗く見えた。

「レオ?」

「頑張ろう。さぁ! ここからが正念場だよ」

 見間違いだったのだろう。

 レオは私に笑みを向けると、そう言った。

 少しだけ心が何故かざわつく。

 気のせい?

「アルル? どうかしたの?」

 レオが首を傾げ、私は首を横に振ると言った。

「なんでもない。よし! 行こうか!」

「うん!」

 きっと気のせいだ。

 気持ちを切り替えていかなくちゃ。

 私たちは屋敷へ一度帰ると、レレナの元へと向かった。

 レレナはベッドに横になった状態であり、私は杖を振る。するとレレナは自由に動けるようになり、ベッドから起き上がると大きく背伸びをする。

「ん~。あぁ。やっぱり動けないって不便ねぇ。いろいろなところが凝り固まっちゃったわ」

 体をほぐしているレレナに杖を向けていると、レレナが楽しそうに言った。

「太陽の花のツルが暴れ出したでしょう? ふふふ。なんだか、オロチの闇を受けてからさらに活性化しちゃったみたいなのよねぇ。それで? あぁー。ここにアロンがいないということは、二手に分かれたのねぇ。なるほど、姫君と殿下で対応されるのね。ふむふむ~」

 楽しそうにそう言いながら、レレナはうなずいた。

「それで? 私と連れて行こうっていうわけでしょうか?」

 何が楽しいんだろう。

 楽しいことなんて、一つもない。

「私は、カルト様のことよく知らないし、分かんないけれど……でも、カルト様、今日、国民の前で貴方たち二人のことを話して、後悔していたよ」

 その言葉に、レレナは笑みを消す。

「後悔したって、遅いのに。意味ないわ」

 私は小さく息をつくと、レレナに言った。

「別に、怒ってていいと思う。私、ずっといろいろ考えたの。レレナのこともカルト様のことも」

「私たちのことを?」

「うん。でも結局答えはでないや。だってカルト様がやったことはひどい。でもカルト様も守りたいものがあったのは分かった。でもだからってしていいとは限らない。……答えなんて全然でない。前にね、オロチがロドロ先生に化けていた時に言ったの。悩んでいいって。答えなんてすぐに出さなくてもいいんだって……その言葉、私の中にちゃんと残っていて、今回のことも、すぐ答えの出ない一つなんだと思う」

「オロチが……」

「黒い魔法使いたちって不思議……たくさん人を傷つけることをして、闇へといざなおうとするのに、純粋に優しい一面もあるから……ドリーも、オロチも、レレナも……答えは全然でない。でもね、今、一つだけ答えが出ていることがあるの」

 私はレレナの手を取って言った。

「マリアさんのところへ行こう」

「え?」

「一緒に行こう。私、絶対マリアさんを助けるから!」

「私は」

「レレナ。怖いんでしょう? でも、一人じゃない。私が、一緒にいるから」

 仄暗いレレナの瞳が揺らぐのが見えた。

「……一緒に行くだけですよ……どうせ、私は杖もありませんし、何もできませんがね」

 こくりとうなずくレレナの手をぎゅっと私はにぎり、笑みを向けた。

「ありがとう。レレナ」

 私たちの話が終わったところでレオが口を開いた。

「よし、じゃあ地下までどういくか、だね」

「穴はないものね。じゃあ地中を掘っていく?」

「うーん。そうだね。でもせっかくだからかっこよくいきたい」

「たしかに」

 お父さんはいつも、どんな時でも遊び心を忘れてはいけないと笑いながら言っていた。

 魔法は楽しいものだ。

 どんな時でも、私たちの味方。

 私とレオはお互いの杖をあわせると、ゆっくりと振り始める。

 そして私とレオは交互に自らの想像を重ね合わせ始めた。

 私からつぶやく。

「三人が乗れて」

「かっこよくて」

「それでいて、地中を潜っていける乗り物」

「守護魔法と結界魔法をかけて強度はばっちり」

「速度は速い方がいいね」

「そうだね! 地中を潜る船! みたいなイメージかなぁ」

「あ、それいいね! じゃあ少し広めかな」

「周囲に魔法をかけて、掘るんじゃなくて海を潜っていくイメージで!」

「なるほど、じゃあ船に触れた部分が一時的に柔らかく水みたいに変化する魔法かな」

「おおっと、どんどん高度になって来たね!」

 私たちは魔法を練り合わせながらどんどんと難しくなってき始めたことに笑い声を立てた。

 それを眺めていたレレナは、少しだけ驚いている。

「こんな風に……魔法を作るのは初めて見たわ」

 私は楽しくなってきていろいろな魔法を混ぜ込みながらレレナに言った。

「お父さんがね、魔法は自由でいいって教えてくれたから、私もレオも楽しく魔法ができるんだ」

「魔法は楽しい。うん。僕も、先生とアルルに出会って知ることが出来たよ」

 レレナは私たちの姿を眩しそうに見つめる。

「そう……」

 そして私とレオは杖を振り上げる。

「よし!」

「できた!」

 光に包まれて現れたそれは、筒形の船のような乗り物だ。

 窓もついているし、私たちは扉を開けて中に乗り込む。

 ちょっと狭いけれど三人充分には入れるし、椅子もついている。

「レレナ! 行こう」

 私はレレナの手を引き、船に乗り込む。

「アルル、じゃあいくよ!」

「うん! 了解!」

 私たちは席に着くと、ベルトを締める。

 うまく動くといいのだけれどと思いながら、私たちが魔法の杖を振ると、船はゆっくりと動き始めた。

「お、良い感じ。アルル、地図を出せる?」

「うん。上に映し出すね」

「了解」

 窓の上部に地図を私は魔法で浮かび上がらせる。

 この位置まで進行していこう、そう思った時、私とレオは違和感に気づく。

「あれれ?」

「ちょっと待ってー。最初はゆっくりでいいんだけれど……」

 次の瞬間、すごい速さで船は動き始め、私は船にしがみついた。

「うわぁぁぁぁぁ」

「こわぁぁぁぁぁい!」

「っひぃぃぃ」

 さすがのレレナも驚いたのだろう。椅子にしっかりとしがみ付いている。

 私は次第に楽しくなり始めて笑い声をあげた。

「あははははは! すごい速い! 地中にどんどんもぐっているー!」

「アルル! 笑いごとじゃないよ! はやいー! 止まらない!」

「ふ。ふふふ」

 レレナも恐怖から笑いはじめてしまった。

 私たち三人は顔を見合わせると、笑いながら急降下していったのであった。

 そして、どれくらい地中深くに落ちただろうか。途中でどうにか早さを調節した私たちは、進路を調整しながら目的地を目指して進む。

「後少しだ」

「うん。アルル、多分、次を抜けたら近くに到達すると思う」

「うん!」

「……マリア」

 レレナに私は笑みを向けた。

「会うの楽しみだね」

「……えぇ」

「アルル。抜けるよ!」

「うん!」

 次の瞬間、私たちに見えたのは驚きの光景であった。

 ここは地中深くのはずだ。

 それなのに、そこには空間が広がっており、緑の大地とそして眩しい太陽のような光りがあった。

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