魔法使いアルル

かのん

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第二百二十話

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 あの事件から今日で一週間。

 魔術の国の国王と悪魔、それにアロンとの間で今後の事について話をしているのだという。

 子ども達には後々に話をすると言われ、アルルとレオとキースは今日も三人で庭で遊んでいたのだが、そこに突然竜巻が巻き起こった。

「な、何?」

 三人が目を丸くしていた時、悲鳴のように甲高い、ルビーの声が響き渡った。

「アルルー!!!!!!」

 勢いよくアルルはルビーに突然抱きしめられ、その場に転がった。

「いっててて。」

 アルルは背中を打ち、声を漏らしながら目を開けて驚いた。

 眼前に、大粒の涙をぽろぽろと流すルビーの赤い瞳が目に映った。

「ル、ルビー?」

 どうして泣いているのだとアルルが驚いていると、優しいサリーの声が響き、ルビーを抱き上げるとアルルをもう片方の手で起こした。

「サリーも!どうしたの?」

 その言葉に、ルビーは怒るように声を上げた。

「どうしたのじゃないよ!一体、いつまで、僕は、キミに謝らないまま、屋敷で待っておけばいいのさ!」

 そう言いながらもルビーの瞳からはポロポロと涙がこぼれ続けており、よく見てみればその眼は真っ赤で、泣いていたのが今日だけでないことはすぐに分かった。

 サリーは優しく微笑むと、そんなルビーの頭をポンと優しく撫でてからアルルの前に膝をついて言った。

「アルルお嬢様。私とルビーは、魔術師の力によって一時でも貴方の事を忘れてしまった。それをお許し願えますか?」

「アルル、、、ごめんねぇぇぇぇ。」

 アルルは慌ててうなずくと言った。

「ご、ごめんね。いいよ。二人のせいじゃないもん。ごめんね?心配かけたよね。サリー、ルビー。」

 ルビーは大きな声で泣きながらアルルに抱きつき、サリーは瞳に浮かべた涙をハンカチで拭いながら言った。

「申し訳ございませんでした。でも、ご無事で本当に良かった。」

「本当だよぉぉぉ。」

 ぎゅーっとルビーが抱き着いていると、それを後ろから見ていたキースとレオが爽やかな笑顔でルビーを引きはがして言った。

「アルルはもう許すってよ。」

「ほら、ルビー、涙を止めて?」

 アルルから二人に引きはがされたルビーは、二人をキッと睨みつけると、二人をまた押しのけてからアルルに抱き着いた。

「何だよ。レオと、それにそっちの奴も、アルルと僕との時間を邪魔しないで!」

 その言葉に、レオは苦笑を浮かべ、キースは多少苛立ちながら言った。

「男が女の子に軽々しく抱き着くものじゃない。」

 するとルビーはアルルを抱きしめる腕に力を込めて言った。

「僕は男でも女でもないからいいんです!」

「なっ!?」

 キースにルビーは舌をべーっと突き出すとアルルの肩に顔をうずめた。

 その様子にキースはまた引きはがそうとしたが、アルルが首を横に振ってそれを止めた。

 アルルは優しくルビーの背中を撫でながら言った。

「待たせて、ごめんね?」

「本当にだよ。僕、ずっと帰ってくるの待ってたんだ。」

「うん。」

「アルルに早く謝りたいのに、、、。」

「うん。」

「ごめんね。」

「うん。」

 今回の魔術による記憶操作は、魔術の国との関わりや、またその背景に何があるか分からなかったからこそサリーやルビーのように力を持っていて、防げることが可能だとしても、アロンはそれを防ぐようにとは言わなかった。

 何が起こるか分からないからこその対応だった。

 だから、サリーやルビーに罪がないことくらいアルルにだって分かっている。

「サリー、ルビー、待っていてくれてありがとう。」

「うん。」

「お嬢様の姿が見られてほっとしました。一週間がたち、ルビーがもう限界のようでしたので、お邪魔させてもらいました。入国の手続きはしてありますのでご心配なく。」

 アルルはうなずき、ルビーの背中を優しく撫でて言った。

「ねぇ、もう涙を止めて。」

「うん。アルル、あのね。」

「ん?」

「お詫びのしるしに、とっておき美味しいケーキを焼いてきたんだ。食べてくれる?」

「本当に!?やったぁ!」

 アルルは笑い、ルビーもその姿を見てやっと涙を止めた。

 サリーはそんな様子に苦笑を浮かべると、机に椅子に紅茶やお菓子の準備を手際よく行っていく。

「では、ティーパーティーといきましょうか?」

「レオに、それにそっちの奴も食べていいよ。名前なんて言うの?」

「俺はキースだよ。お前、偉そうだなぁ。」

「えー?そう?キースよろしく。僕はルビー。さぁケーキを食べよう。アルルのは僕が取り分けてあげるからね!」

 ルビーはにこにことしながらアルルの世話を焼き、そんな様子にレオもキースも少し納得のいかない顔をしながらも、美味しそうなケーキにつられて席に着くのであった。

 そんな様子を、サリーは微笑ましい物を見るような視線で見つめたのであった。

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