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第五話
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領主の屋敷は思っていたほど豪華な物ではなかった。いや、屋敷自体は領主が代々引き継いできた物であるから豪華なのだが、内装が本当に質素なのである。
執事やメイドの数も少ないようで、トイが回ったどの領主の屋敷よりも出迎えが少なかった。
一人の執事に先導され、三人は領主の部屋へと向っていた。フェイナは深々とローブを頭からすっぽりかぶっている為にあまり目立つ事はないが、さすがに領主の前では脱がざるを得ないかもしれない。
トイは歩きながら、そうはなりませんようにと心の中で祈った。
「領主ダルタシス様は、この町の復興の為、あまり時間がありません。あなた方はダルタシス様が少しでも心休め、楽しめるようになさってください。」
その言葉にトイは感心していた。
先導を果たした老年の執事は、貫禄があり、老いてもなお堂々としていた。そんな執事にこういわせる領主とはいったいどのような人物か、トイは興味が湧いてきていた。
部屋につくと、執事はダルタシスに声をかけ、扉を開けると三人にはいるよう促した。
トイは緊張も何もしていないという様子でひょうひょうと部屋にはいっていったのだが、ジートとフェイナは恐る恐るといった感がある。
「失礼いたします。」
トイは一応恭しげに頭をさげながらそういった。それにジートとフェイナも続いている。
ダルタシスは机に積まれた山のような書類を片付けながら、少しトイたちのほうへと顔を向けると言った。
「いや、すまないね。少し待ってくれ。ここまで片付けたら・・なんとか・・・ちょっとまってくれ。いやすまない。」
思っていた以上にダルタシスは若かった。まだ三十半ばといったところだろう。ただやはり領主というだけあってそこにいるだけでこちらを緊張させるものがある。
ダルタシスは、大きく息をつきながらやっと手を止めると、三人が頭を下げているほうへと目を移した。
「頭を上げてくれ。お待たせしてしまって申し訳ないね。」
三人はゆっくりと顔を上げた。
まずダルタシスは目の前にいるトイを見つめ、そして後ろに控える二人を見つめたが、一人がローブを被っていることをいぶかしんだのか眉間にしわがよった。
トイはすばやくそれを察すると言葉を述べた。
「一人ローブを被っているのは、その外観があまりに人目を引くものだからであります。ここでは必要の無いことですゆえ、お許しを願いたいのですが。」
ダルタシスはその言葉に興味を引かれたようではあったが、外観が人目を引くというのを“美しい”ではなく“醜い”からだと思ったようで、頷いた。
「いや、いいのだよ。人から見られたくないという気持ちもわかる。」
「お優しいお言葉に感謝いたします。」
「それで、キミがおもちゃ屋のトイかな?楽しみにしていたんだ。」
「そうでございます。ですが、不躾とは思いますが、ここにおります幼子のジートが領主様にお話があるというのです。まずはそれをお聞き届けはいただけないでしょうか。」
ダルタシスは、それに少し首をかしげた。
「そうか。いや・・・・・まあいい。話を聞こう。」
それにトイは驚いていた。こうも寛容だと、あまりに素晴らしすぎると思わずにはいられなかったのである。領主とは常に傲慢で自分本位な・・・まあフェイナと近い人間が多い。
ジートはダルタシスの瞳をジッと見つめると、それが失礼とも知らずに、大声で話を始めた。それをダルタシスは頷きながら聞き、そして最後まで聞くと、唸り声をあげた。
「つまり、私の政策がダメだと・・・いいたいのか?」
それにトイは焦り、慌ててジートの頭を深々と下げさせた。
「いえそのようなつもりだったのではありません!」
領主とは気位の高い物である。そして権力を持つゆえに人を簡単に裁く事ができる。ジートを打ち首などにはしたくないトイは慌ててそのような行動にいたったのだが、ダルタシスは声を和らげるといった。
「いや、そんなに頭を下げないでくれ。そのようなつもりでいったのではないよ。」
なんという領主だろうか!
トイは内心心臓が鳴り止まず、こんなにも民の声を真摯に受け止める領主がいるのかと驚いていた。
「うーん。だがね、私はこの政策を間違いだとは思っていないのだよ。やはり町を活発に活き活きと守り立てていく為には必要なことではないかと思うんだ。」
確かに、それも正しい意見だ。領主とは町の民のためにいる。民が生活苦を続けていては領主としては至らないというほかない。
けれど、それだけではダメなのだとトイは知っていた。きっとこの真摯な若い領主ならば時間があればそれに自ら気付くことが出来るはずだ。トイはこのときそう確信し、ゆっくりと言葉を述べようとしたのだが、その前に、トイが予期していたおそろしい自体が起こった。
「貴殿は一番大切にしなければならないことをお忘れになっておりますわ!」
フェイナが立ったのである。
トイは頭を床に項垂れるように打ち付けた。
こうなることは分かっていた。
執事やメイドの数も少ないようで、トイが回ったどの領主の屋敷よりも出迎えが少なかった。
一人の執事に先導され、三人は領主の部屋へと向っていた。フェイナは深々とローブを頭からすっぽりかぶっている為にあまり目立つ事はないが、さすがに領主の前では脱がざるを得ないかもしれない。
トイは歩きながら、そうはなりませんようにと心の中で祈った。
「領主ダルタシス様は、この町の復興の為、あまり時間がありません。あなた方はダルタシス様が少しでも心休め、楽しめるようになさってください。」
その言葉にトイは感心していた。
先導を果たした老年の執事は、貫禄があり、老いてもなお堂々としていた。そんな執事にこういわせる領主とはいったいどのような人物か、トイは興味が湧いてきていた。
部屋につくと、執事はダルタシスに声をかけ、扉を開けると三人にはいるよう促した。
トイは緊張も何もしていないという様子でひょうひょうと部屋にはいっていったのだが、ジートとフェイナは恐る恐るといった感がある。
「失礼いたします。」
トイは一応恭しげに頭をさげながらそういった。それにジートとフェイナも続いている。
ダルタシスは机に積まれた山のような書類を片付けながら、少しトイたちのほうへと顔を向けると言った。
「いや、すまないね。少し待ってくれ。ここまで片付けたら・・なんとか・・・ちょっとまってくれ。いやすまない。」
思っていた以上にダルタシスは若かった。まだ三十半ばといったところだろう。ただやはり領主というだけあってそこにいるだけでこちらを緊張させるものがある。
ダルタシスは、大きく息をつきながらやっと手を止めると、三人が頭を下げているほうへと目を移した。
「頭を上げてくれ。お待たせしてしまって申し訳ないね。」
三人はゆっくりと顔を上げた。
まずダルタシスは目の前にいるトイを見つめ、そして後ろに控える二人を見つめたが、一人がローブを被っていることをいぶかしんだのか眉間にしわがよった。
トイはすばやくそれを察すると言葉を述べた。
「一人ローブを被っているのは、その外観があまりに人目を引くものだからであります。ここでは必要の無いことですゆえ、お許しを願いたいのですが。」
ダルタシスはその言葉に興味を引かれたようではあったが、外観が人目を引くというのを“美しい”ではなく“醜い”からだと思ったようで、頷いた。
「いや、いいのだよ。人から見られたくないという気持ちもわかる。」
「お優しいお言葉に感謝いたします。」
「それで、キミがおもちゃ屋のトイかな?楽しみにしていたんだ。」
「そうでございます。ですが、不躾とは思いますが、ここにおります幼子のジートが領主様にお話があるというのです。まずはそれをお聞き届けはいただけないでしょうか。」
ダルタシスは、それに少し首をかしげた。
「そうか。いや・・・・・まあいい。話を聞こう。」
それにトイは驚いていた。こうも寛容だと、あまりに素晴らしすぎると思わずにはいられなかったのである。領主とは常に傲慢で自分本位な・・・まあフェイナと近い人間が多い。
ジートはダルタシスの瞳をジッと見つめると、それが失礼とも知らずに、大声で話を始めた。それをダルタシスは頷きながら聞き、そして最後まで聞くと、唸り声をあげた。
「つまり、私の政策がダメだと・・・いいたいのか?」
それにトイは焦り、慌ててジートの頭を深々と下げさせた。
「いえそのようなつもりだったのではありません!」
領主とは気位の高い物である。そして権力を持つゆえに人を簡単に裁く事ができる。ジートを打ち首などにはしたくないトイは慌ててそのような行動にいたったのだが、ダルタシスは声を和らげるといった。
「いや、そんなに頭を下げないでくれ。そのようなつもりでいったのではないよ。」
なんという領主だろうか!
トイは内心心臓が鳴り止まず、こんなにも民の声を真摯に受け止める領主がいるのかと驚いていた。
「うーん。だがね、私はこの政策を間違いだとは思っていないのだよ。やはり町を活発に活き活きと守り立てていく為には必要なことではないかと思うんだ。」
確かに、それも正しい意見だ。領主とは町の民のためにいる。民が生活苦を続けていては領主としては至らないというほかない。
けれど、それだけではダメなのだとトイは知っていた。きっとこの真摯な若い領主ならば時間があればそれに自ら気付くことが出来るはずだ。トイはこのときそう確信し、ゆっくりと言葉を述べようとしたのだが、その前に、トイが予期していたおそろしい自体が起こった。
「貴殿は一番大切にしなければならないことをお忘れになっておりますわ!」
フェイナが立ったのである。
トイは頭を床に項垂れるように打ち付けた。
こうなることは分かっていた。
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