【完結】玩具の青い鳥

かのん

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新四話

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「なんだ・・・ありゃ・・」

 誰かがそう呟いた。

《喧嘩は祭・祭は喧嘩・喧嘩は花・花は喧嘩?そんなわけないわけがない。喧嘩は楽しいものじゃない。そろそろお開きやめにして、青い鳥を見ておくれ。幸せくるよ。青い鳥。喧嘩を見るよりお得だよ。子どもたちは集まりたまえ!大人たちは乞うご期待!さあさあ玩具屋トイの開店だ!さあさあ皆さんご注目!》

 空中にはラッパを持った兵隊の人形がそう声を上げながら浮んでいた。そして今まで喧嘩をしていた二人の間には青いマントの仮面の少年がいつの間にか立っている。

「皆様こんにちは!これより、玩具屋トイの開店です!さあさあ皆さん見ていって!」

 今まで野次を飛ばしていた野次馬達も呆然と少年を見つめ、喧嘩をしていた二人も唖然としている。

 人ごみを掻き分け前に来たジートとフェイナは青ざめ、息を飲んでいた。

「な・・・なんだテメェ。」

「割り込んでくるんじゃねーぞこのガキが!」

 青いマントを掴まれたトイは、そのマントをひゅるりと脱ぎ捨てると身軽に飛び上がりマントを掴んだ男の頭の上へと飛び乗った。

「喧嘩はやめやめ!僕もいい場所が欲しいんだ。だからこの場所いただくよ!」

 トイがそういうと、二人の男は苛立った様子でトイに掴みかかろうとした。だが、トイは身軽にもそれを交わすと、男が地面に投げ捨てた青い自分のマントを拾い、床に広げた。

 その瞬間、マントからシャボン玉が噴出し、空に向って飛んでいく。そのシャボン玉のいくつかには人形やぬいぐるみ、汽車や車、くれよんにヨーヨーといったおもちゃがはいっていた。

「さあさあ皆さんお立会い!面白おもちゃはいかがかな!」

 観衆達は空中をプカプカと飛ぶシャボン玉に、目を見開き見つめている。

「っくっそ!ガキだと思って調子に乗るな!」

 男らは後ろからトイに殴りかかろうとしたのだが顔にシャボン玉がはりつき、そして二人の顔をすっぽりとかこんだのである。まるで卵型のヘルメットをかぶったようになった二人の体はゆっくりと宙に浮き空へと上っていく。

「みなさん喧嘩よりも楽しいこの光景をごらんくださーい!」

 そういってトイが指をパチンとならすと、二人の頭についたシャボン玉は消え、地面に落下してきた。

 腰を摩る二人は、あまりに奇妙なことにわけがわからず、しかもこんな醜態をさらしては恥ずかしさでその場にいるのがいたたまれなかったのであろう。唇をかみながらトイを一瞥するとその場からよたよたとした走りで去っていった。

「よってらっしゃい。みてらっしゃい!世にも不思議なトイショップ!さあいらっしゃい!」

 その声に誘われて、その光景に誘われて人は次々と集まり、一夜にしてトイの玩具屋はガラクタの町にその名を広げた。

 その光景をただ呆然と、唖然と、フェイナとジートは見つめ続けた。

 ただこれがどうして領主にあえるということにつながるのか二人にはまったく見当もつかなかったのである。だが、次の日の昼にはその意味を知ることとなった。

 次の日、トイはガラクタの山の中から色々な物を発見してはそれを青いマントの中へと取り込んでいっていた。ここはトイにとっての宝の山であり、あの煙の匂いからたくさんの宝が埋まっている事は分かっていた。壊れたおもちゃに、錆びた鉄、使い古した人形たち。そんな者達がトイにとっての宝であった。

 そんな宝物を探している時、ジートが町の広場で配られていた新聞をもって駆け込んできたのである。

 昨日トイが店を開いた場所に、昼掲示が出されたのである。そしてその前では新聞が号外として配られていた。

 “領主アバード・パールマン氏より玩具屋トイへ領主屋敷への出頭命ず”

 それは招待状であった。

「何故です?・・・どうして・・」

 フェイナがそれを見た瞬間の顔はすこし不細工でトイは笑ってしまうのを実は堪えていた。

 今までいろんな町をトイは回り、そして大体のことを心得ていた。

 領主という生き物は、新しい物好きであり、町の人が知っていて自分だけが知らないことが嫌なのである。これは良い領主も悪い領主もどちらにしても同じであるということを経験上学んでいた。

 ただ、これを素直に言ってしまうと面白くないと思い、トイは言った。

「これが僕の魔法です。」

「ほぉぉ・・・」

 フェイナは何故かそれで納得し、大きく頷いていた。 

 こんなに信じやすくて、大丈夫なのだろうかとトイは心配になった。けれど、だからといって種明かしをするわけでもなく、指を立てて二人に向って言った。

「これでとりあえずは面会ができる。さあ領主様と話をしに行こう。ただし、まずは話を簡潔にすることが必要だ。」

「簡潔ってなに?」

 ジートにそういわれ、フェイナは言った。

「伝えたいことをまとめておくということよ。」

「えーっと・・森を取り戻したい!」

 トイは肩をすくめてみせると、それじゃあダメだというような表情を浮かべた。

 フェイナは、少し考えるとジートに言った。

「まず、領主様に今のあなた達の状況を伝えた上で、両親たちの労働の変更をお願いすること。そしてガラクタの山を撤去し、元の森を復元することをお願いするのがよろしいんじゃなくて?あなた方は森を取り戻したいというけれど、それよりも両親の方をお願いしなければいけないとわたくしは思うわ。」

 簡潔に話すことが出来るじゃないかと、トイは内心思っていた。どうしてあんなにもよくわからない喋り方をする人が、こういうことは簡潔に話せるのだと、不思議でならなかった。

 ジートは俯くと、小さく頷いた。

「よし、じゃあ領主様のところへ行こうか。・・・・貴方も・・ついてくるの?」

 思わず嫌そうな顔でトイが尋ねると、フェイナは当然というように大きく頷いて見せた。

 それにトイは顔が歪まないように気をつけながら笑みを浮かべると、言った。

「くれぐれも、おかしなことはしないでくださいね!」

「おかしなことなどしませんわ!」

「なら・・いいんですけどね。」

 トイ、ジート、フェイナの三人は、こうして領主の屋敷へと向うことにしたのだが、トイはフェイナがおかしなことをしでかすのではないかと内心はらはらとしていた。

 どうか、どうか無事帰ってこれますように。

 トイはそう切に願った。

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