【完結】玩具の青い鳥

かのん

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新三話

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「えぇぇぇぇ!」 

 それにフェイナも気付き、首を傾げながらジートとトイの顔を交互に見つめる。

「どうかしまして?」

「フェイナ殿。僕は領主様の城へと行きたいと考えています。その時に、ジートを連れて行ってもいいかな?」

「なんですって!」

 この時のフェイナは、まったくさっきの話の流れをしらないわけであるから勘違いをしてもおかしくはなかった。そしてフェイナは見事に勘違いし、トイがジートを領主様に突き出すために連れて行くのだと思い込み、声を荒げた。

「そんなことが許されるものですか!誰がなんと言おうと、わたくしはそんなことを許すわけにはまいりませんわ!どうしてもというのならわたくしも参ります!」

「いや、貴方はこないでください。」

 思わずトイはそう呟いてしまっていた。勘違いをとくほうが先というのは頭にあったが、つい声のほうが先に出てしまったのである。それがフェイナのいらだちに火をつけた。

「貴方・・女性に対してあまりに失礼ではありませんこと?というか、貴方・・わたくしを一体なんだと思ってらっしゃるの!わたくしは何が何でもジートの傍を離れませんわ。」

「いや・・あの・・」

「言い訳はけっこう!領主の前へと突き出そうというならばそうなさるといいわ。ただし泣きを見るのは貴方のほうなのですからね!」

「あ・・・あの・・・」

 お嬢様というのは全てこうなのであろうか。傲慢であり、自己中心的だ。育ち方が違うだけで人間というのはこんなにも違うものなのかと、トイは内心驚いていた。 

 ジートはトイが呆気に取られているので、コホンと咳払いすると、小さな声で今までの話の流れをフェイナに耳打ちした。

 全てを聞くとフェイナは顔を真っ赤にし、顔を伏せて動かなくなった。

 トイは何も無かったことにするように、ジートに言った。

「じゃあ行こうか。」

「け・・けど、普通・・・領主様にいきなり会いに行っても・・会えるものじゃないと思うんだけど・・・」

 フェイナの顔色を伺いながらジートがそういうと、トイには何か考えがあったようでとても自信ありげに笑みを浮かべた。

「大丈夫。さあ、僕を人の集まるところへ連れて行ってくれ!見ていれば分かるさ。」

 その言葉の真意は分からなかったが、ジートは頷くと言った。

「そう言うなら・・分かったよ。フェイナ様は、来るならちゃんとローブを着てくださいね。じゃあ、行こう。他の皆は基地に戻っていてくれ。年長者は年少者の面倒をちゃんと見ていてやれよ。じゃあ行って来る。」

 ジートは他の子どもたちにそう声をかけると、先頭に立って歩き始めた。フェイナはガラクタの山の中からローブを引き出してくるとそれをかぶり、トイはその後に続いた。

 子どもたちは起きていたものは“いってらっしゃい”と声をかけ、その背を見送っていた。不安げな表情の子どももいるが、そんな子どもには年長の子どもがつれそっていた。それだけでも、子どもたちの中で良い人間関係作りが出来ているのがわかる。

 ジートがトイを案内したのは、町の中央にある噴水のある広場であった。そこはとても人が多く、出店の周りには人だかり、芸人達のパフォーマンスでまた人だかりと、どこを見ても、人・ひと・人といった様子である。

 フェイナも来たのは始めてなのか、圧倒されている様子であった。

 その時、広場に怒鳴り声・罵声が響きあった。それによって、出店の周りにいた人も、芸人達を見ていた人も、そちらのほうへと注意を向ける。

 トイはそれにニッコリと笑みを浮かべるとジートに耳打ちした。

「さあ、ショータイムだ。フェイナ殿から離れるんじゃないよ。僕は行って来るから見ていてくれよな。」

「え?何をする気?」

 そう言ったときにはもう遅かった。トイの姿は人ごみにまぎれ見えなくなってしまっている。ジートはフェイナの腕を掴むと離れないようにし、その人ごみの中へと一歩踏み出した。

 人ごみの中央からは男の怒鳴り声と罵声が今もなお聞こえてくる。そしてその声を発していたのは二人の体格の良い男性であった。どうやら芸をする場所取りで喧嘩が始まったらしくお互いに一歩も引かず今にも殴り合いが始まりそうな勢いであった。それを回りはどうなるのかと野次馬になっている。

「ふざけんな!ここは俺の定位置なんだよ!」

「定位置とかない!今日は俺のほうがはやくきたんだからここは俺の場所や!」

「なんだとぉぉぉ!」

 お互いに胸倉を掴んだまま怒鳴りあいが続き、そしてついに手が出始め、殴り合いが始まってしまった。野次馬たちは歓声をあげ、喧嘩を助長させている。

 そんな時、どこからかラッパの音が響き渡った。
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