【完結】玩具の青い鳥

かのん

文字の大きさ
18 / 31

第十七話

しおりを挟む

 昔々のお話。

 一つのおもちゃの国がありました。

 人々はたくさんのおもちゃを生み出して、人々が幸せになれるように祈りました。

 すると天から神があらわれ、青い翼を持った者をおもちゃの国へと使わしたのです。

 青い翼の者は、国を守護する者として王となり、現フリュンゲル国の祖となったのです。

 ですが、このお話には語られぬ部分があります。

 天から降りてきたのは、青い翼の者だけではありませんでした。

 呪われた黒き翼の竜もまた、神から使わされ降り立ったのです。けれど彼らは人間を好まず、神に逆らい残虐にも人々を破滅させようと動いたのです。

 青き翼の者は戦い、そして黒き竜に更なる呪いをかけ、竜の国へと封じ込めたのです。

 それ以来、緑の国の奥にある竜の国へは誰も立ち入る事が出来ません。そして竜の国からも誰も出てくる事は叶いません。

 こうして、フリュンゲル国は青き翼の者、いえ、王によって平穏を保っているのです。

 トイは幽閉された部屋の中で、本棚にあった絵本を読みながら思った。

 語られぬ部分がありますと書いておきながら、書いているではないかと。そしてことの本質は書いていないではないかと、思っていた。

 そんな時であった。

 水仙の花の匂いが香り、突然、カタカタと窓が鳴ったかと思うと、突風が吹き荒れ、扉は空へと飛ばされていってしまったのである。

そして、見知らぬ黒髪の男が現れたのである。

「見つけた。」

 その男は、まだ少年といっていいあどけない顔をしている。髪は長く、赤いビーズの髪留めで髪をくくり、切れ長な瞳でトイを見つめていた。

その黒硝子のような瞳に映されるだけで、トイは心臓が酷く煩くなるのを感じた。

「誰?」

「さあ、誰でしょう。」

 男は、にやついた笑みを浮かべると部屋を見回し、そしてトイの足にはめられた鉄の枷を見ると、一瞬で笑みを消した。

「ここは・・・お前の部屋か?」

 トイは頷きながらも自らの部屋を男の視線を追うように見回した。

 部屋の中は、五年前と変わらなかった。

 少しかび臭い木の匂いも、広々とした殺風景な雰囲気も何も変わらない。

「うん。僕の部屋だよ。」

 男は眉間に皺を寄せると、トイに言った。

「その枷はなんだ?」

「・・・」

 トイはどう答えたらいいのか分からなかった。

 足に当たる冷やりとした枷の感触は、五年前と変わらず、妙な懐かしさがあった。

 何も言わないトイに、男は歩み寄ると、足の枷に手をかけた。

「お前、囚われているのか?」

「いつでも逃げられるよ。」

 それが答えになっていない事はトイ自身分かっていた。けれどそれ以外に何もいえなかった。自らの父に、鎖につながれているなど、他人に言える事実ではない。

 男は言った。

「大事にされているものだと思っていた。」

「・・・・大事にされているよ。ほら、籠入り息子。」

「笑えねぇな。」

「・・・笑わなくて結構。・・・それで・・・貴方何者なの?」

 トイがそう尋ねた次の瞬間、火花が散ったかと思うと枷が千切れたのである。

 トイは眼を見張った。

 人間のできる業ではない。

「俺の名前はグレン。一緒に来い。」

 トイは差し出された手を見つめ、そして笑みを浮かべると首を横に振った。

「僕がここからいなくなったら、この国の長である父親が悪い立場に立たされるんだ。」

 グレンはそんなトイに怒鳴りつけるように言った。

「こんなところに枷つけて閉じ込めて何が父親だ!」

 グレンは、トイよりも怒っている様子であった。

 それがトイにはおかしくって笑ってしまった。初対面の人間に同情し、ここまで怒ることが出来るとは、なんと感情豊かなことか。

「なんか、キミとは仲良くなれそうな気がする。」

「ふざけてんのかてめぇは・・?」

 グレンは首を傾げていたが、次の瞬間、グレンの瞳孔が細くなるのをトイは見た。

「人が来る。・・・お前が逃げたんじゃなくて、連れ去られたなら問題ないだろう。いくぞ!」

 そういうと、トイの腕をつかんで、窓から外に出ると宙に飛び上がったのである。

 トイは目の前の事が信じられなかった。

 地面がどんどんと遠くなる。そしてその遠くなる地面にはアーロの姿も見えた。

 トイは少しだけ胸が痛むのを感じた。

 けれど、そんな感傷にばかり浸って入られない。

 空を見上げると、紅の、大きな翼が見えた。

「グレン!その翼・・・キミは一体何者なの?」

 グレンは翼をはためかせながら腕をぐいっと引き上げると、風に身をのせ、空を舞いながら言った。

「さっきお前絵本呼んでいたろ?あれに出てくる黒い生き物の仲間。」

「黒き翼の・・・・竜・・・嘘・・・本当に?」

「青き翼の王がいるんだから、黒き翼の竜もいるに決まっているだろ。」

 トイは唖然としていたが、次々と疑問は脳裏を駆け巡る。

「竜の国からどうやって出てきたの?どうしてここに?いや、なんで僕をあそこから連れ出してくれたの?あとえっと・・・」

「ちょーーーっとストップ。俺だって色々指示されてんだよ。企業秘密もあるわけ。だから質問には答えられない。」

 トイはそれに納得したように頷くと、一瞬考え、そして先ほどより静かな、冷たい視線でグレンに言った。

「まさか、フェイナも連れ去っていたりしないよね?」

 グレンの表情が固まるのをトイは見て、大きく溜息をついた。

「なんとなくは・・・理解したよ。けど、竜の国からどうやって出る事が出来たのかそれがすごく気になるよ。」

「ちげぇよ。」

「え?」

「出る事が出来たんじゃなくて、突然出されたんだ。」

「え?」

「俺達は、竜の国から突然出されて、入れなくなってんだよ。」

 トイはそういわれ、何がどうなっているのかを考え始めた。しかし、次第に風圧と風の冷たさと、奇妙な匂いによって意識がとうのいていくのを感じた。

「なんで・・・急に眠気が・・・」

「悪いけど、俺達の居場所を隠す為に少し眠っていてくれ。」

 トイは一瞬にして、意識を失った。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

かつて聖女は悪女と呼ばれていた

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」 この聖女、悪女よりもタチが悪い!? 悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!! 聖女が華麗にざまぁします♪ ※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨ ※ 悪女視点と聖女視点があります。 ※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

処理中です...