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第十七話
しおりを挟む昔々のお話。
一つのおもちゃの国がありました。
人々はたくさんのおもちゃを生み出して、人々が幸せになれるように祈りました。
すると天から神があらわれ、青い翼を持った者をおもちゃの国へと使わしたのです。
青い翼の者は、国を守護する者として王となり、現フリュンゲル国の祖となったのです。
ですが、このお話には語られぬ部分があります。
天から降りてきたのは、青い翼の者だけではありませんでした。
呪われた黒き翼の竜もまた、神から使わされ降り立ったのです。けれど彼らは人間を好まず、神に逆らい残虐にも人々を破滅させようと動いたのです。
青き翼の者は戦い、そして黒き竜に更なる呪いをかけ、竜の国へと封じ込めたのです。
それ以来、緑の国の奥にある竜の国へは誰も立ち入る事が出来ません。そして竜の国からも誰も出てくる事は叶いません。
こうして、フリュンゲル国は青き翼の者、いえ、王によって平穏を保っているのです。
トイは幽閉された部屋の中で、本棚にあった絵本を読みながら思った。
語られぬ部分がありますと書いておきながら、書いているではないかと。そしてことの本質は書いていないではないかと、思っていた。
そんな時であった。
水仙の花の匂いが香り、突然、カタカタと窓が鳴ったかと思うと、突風が吹き荒れ、扉は空へと飛ばされていってしまったのである。
そして、見知らぬ黒髪の男が現れたのである。
「見つけた。」
その男は、まだ少年といっていいあどけない顔をしている。髪は長く、赤いビーズの髪留めで髪をくくり、切れ長な瞳でトイを見つめていた。
その黒硝子のような瞳に映されるだけで、トイは心臓が酷く煩くなるのを感じた。
「誰?」
「さあ、誰でしょう。」
男は、にやついた笑みを浮かべると部屋を見回し、そしてトイの足にはめられた鉄の枷を見ると、一瞬で笑みを消した。
「ここは・・・お前の部屋か?」
トイは頷きながらも自らの部屋を男の視線を追うように見回した。
部屋の中は、五年前と変わらなかった。
少しかび臭い木の匂いも、広々とした殺風景な雰囲気も何も変わらない。
「うん。僕の部屋だよ。」
男は眉間に皺を寄せると、トイに言った。
「その枷はなんだ?」
「・・・」
トイはどう答えたらいいのか分からなかった。
足に当たる冷やりとした枷の感触は、五年前と変わらず、妙な懐かしさがあった。
何も言わないトイに、男は歩み寄ると、足の枷に手をかけた。
「お前、囚われているのか?」
「いつでも逃げられるよ。」
それが答えになっていない事はトイ自身分かっていた。けれどそれ以外に何もいえなかった。自らの父に、鎖につながれているなど、他人に言える事実ではない。
男は言った。
「大事にされているものだと思っていた。」
「・・・・大事にされているよ。ほら、籠入り息子。」
「笑えねぇな。」
「・・・笑わなくて結構。・・・それで・・・貴方何者なの?」
トイがそう尋ねた次の瞬間、火花が散ったかと思うと枷が千切れたのである。
トイは眼を見張った。
人間のできる業ではない。
「俺の名前はグレン。一緒に来い。」
トイは差し出された手を見つめ、そして笑みを浮かべると首を横に振った。
「僕がここからいなくなったら、この国の長である父親が悪い立場に立たされるんだ。」
グレンはそんなトイに怒鳴りつけるように言った。
「こんなところに枷つけて閉じ込めて何が父親だ!」
グレンは、トイよりも怒っている様子であった。
それがトイにはおかしくって笑ってしまった。初対面の人間に同情し、ここまで怒ることが出来るとは、なんと感情豊かなことか。
「なんか、キミとは仲良くなれそうな気がする。」
「ふざけてんのかてめぇは・・?」
グレンは首を傾げていたが、次の瞬間、グレンの瞳孔が細くなるのをトイは見た。
「人が来る。・・・お前が逃げたんじゃなくて、連れ去られたなら問題ないだろう。いくぞ!」
そういうと、トイの腕をつかんで、窓から外に出ると宙に飛び上がったのである。
トイは目の前の事が信じられなかった。
地面がどんどんと遠くなる。そしてその遠くなる地面にはアーロの姿も見えた。
トイは少しだけ胸が痛むのを感じた。
けれど、そんな感傷にばかり浸って入られない。
空を見上げると、紅の、大きな翼が見えた。
「グレン!その翼・・・キミは一体何者なの?」
グレンは翼をはためかせながら腕をぐいっと引き上げると、風に身をのせ、空を舞いながら言った。
「さっきお前絵本呼んでいたろ?あれに出てくる黒い生き物の仲間。」
「黒き翼の・・・・竜・・・嘘・・・本当に?」
「青き翼の王がいるんだから、黒き翼の竜もいるに決まっているだろ。」
トイは唖然としていたが、次々と疑問は脳裏を駆け巡る。
「竜の国からどうやって出てきたの?どうしてここに?いや、なんで僕をあそこから連れ出してくれたの?あとえっと・・・」
「ちょーーーっとストップ。俺だって色々指示されてんだよ。企業秘密もあるわけ。だから質問には答えられない。」
トイはそれに納得したように頷くと、一瞬考え、そして先ほどより静かな、冷たい視線でグレンに言った。
「まさか、フェイナも連れ去っていたりしないよね?」
グレンの表情が固まるのをトイは見て、大きく溜息をついた。
「なんとなくは・・・理解したよ。けど、竜の国からどうやって出る事が出来たのかそれがすごく気になるよ。」
「ちげぇよ。」
「え?」
「出る事が出来たんじゃなくて、突然出されたんだ。」
「え?」
「俺達は、竜の国から突然出されて、入れなくなってんだよ。」
トイはそういわれ、何がどうなっているのかを考え始めた。しかし、次第に風圧と風の冷たさと、奇妙な匂いによって意識がとうのいていくのを感じた。
「なんで・・・急に眠気が・・・」
「悪いけど、俺達の居場所を隠す為に少し眠っていてくれ。」
トイは一瞬にして、意識を失った。
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