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12話
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エトワール殿下が真面目な顔で言った。
「公爵家では、どのように、過ごしているのですか?」
「普通でしゅ」
「普通……ご家族でそろって過ごされているのですか?」
「え? いいえ……あたちは一人で」
「一人で……では侍女が側で世話を?」
「うぇーと、いえ」
「では、ずっとお一人なのですか?」
瞳を真っ直ぐに見つめられ、私はその瞳の色に内心驚いていた。
この子は、こんなに大量の悪霊を背負いながら、おそらく私の心配をしてくれているのだ。
私は栄養失調が続いていたからミーナよりも遥かに小さい。
そして、今回、それなりに綺麗な衣装を身にまとっていると思っていたが、ミーナと比べると見劣りするのは確かだ。
それを見て、心配してくれているのだろうか。
とにかく、優しい子だ。
まだ七歳だというのに、私のことを思いやってくれるのかと、ちょっと感動を覚えた私は、このいい子には悪霊は似合わないなと、早々に祓ってあげることにした。
出きるならば、王族の方々皆祓ってあげたいのだが、さすがに近くに行かなければ祓うのは難しい。
「一人じゃないれしゅ。だから、心配しないでくださいませ」
そう笑顔で告げ、気づかれないほど小さな声で呟きながら、私は手で印をこっそりと結んだ。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前……滅ちゃれやがれ」
次の瞬間、悪霊達が一斉に悲鳴を上げた。
『ぎゃぁぁぁぁあ!』
『なんだこれぇぇぇぇ』
『浄化されるうぅぅぅ……あ……』
そして黒い煙を巻き上げるようにして一瞬で滅っされ、そして光の中へと消えていった。
ふっ。我ながら最強過ぎるぜ。
「何かおっしゃいましたが?」
「ふぇ? あ、っくしゅん。くしゃみしただけれす」
危ない危ない。変なことを呟いていたと噂されたら、更に私の環境が悪くなってしまう。
私はくしゃみのふりをすると、慌てた様子でエトワール殿下が上着を貸して下さった。
「大丈夫ですか? これをどうぞ」
本当に優しい子すぎて、なんだか、微笑ましくさえ思えてくる。
「ありがとうしございましゅ」
肩にかけられた上着がとても暖かい。
エトワール殿下は、自らの肩に触れ、少し驚いた顔を浮かべている。
爽快感すごいだろうな。
あれだけ大量に乗っかっていたものがすっきりさっぱりなくなったのだから、今、かなり軽いはずだ。
驚き感動しているようなその表情は、大変子どもらしくて可愛らしい。
「みゃーん」
猫のプリシラが私の膝の上にひょいとのって、お前何者だというようにじっと見つめてくる。
これもまた大変可愛らしいので、手でそっとナデナデするが、霊なので触れない。
すると、そんな私の手をプリシラが、てぃ! と、いうように叩いた。
霊なので痛くない。
最高に大変可愛らしい。
プリシラは私の膝上から飛び降りると、 まるでついてこいというように、尻尾を振った。
そこで私は エトワール殿下に一つ提案をしてみた。
「しゅこし、散歩してみたいれす。だめれすか?」
すると、エトワール殿下は優しく微笑み立ち上がると私に手を差し出した。
「もちろん。さぁ、行きましょうか」
3歳児相手にすごく丁寧で、まさに王子様である。
悪霊がいなくなったことで エトワール殿下の顔色もかなり良くなった。
私はエトワール殿下の手を引きながら、プリシラの後に付いていく。
どこに案内するつもりなのだろう。
すると、庭の奥まったところに小さな池があった。
プリシラは池の手前で座ると、鳴き声をあげる。
「みゃーーーーーん」
え? まさか、池の中???
“行け”。いやいや、たしかに池だけれど“行け”といわれて行きますとはならない。
だが、プリシラから圧を感じる。
尻尾が、ターンっと地面を打つ。
ええええええ。
せめて一人の時であれば全裸になり泳いで取れるけれど……。
今?
だが、今を逃すと、この王城にこれるのはもう二度とないかもしれない。
女は度胸……いやむしろ、息とし生けるもの全ての生き物は、度胸でどうにか乗り切れることが多いのではないか。
度胸って万能薬か。
いや、無謀か……。
私は仕方がないと覚悟と気合いをいれると、小石につまずいたフリをした。
「あーーーれぇぇぇ」
大根役者である。それは自覚しているが押し通すしかない。
「え?」
勢いよく池に飛び込む私と、ぎょっとした顔のエトワール殿下との視線が重なる。
すまん。突然池に飛び込む危ない幼児で。
だが許してくれ。
そんな顔で見ないでくれ。
可愛いプリシラちゃんの為なんだ!
池の中に飛び込んだ私は、水中に何かないか探す。
プリシラが伝えたかったことはなんだろうか。
水中の中を泳ぐというよりも沈みつつ、周囲を見回す。
透明度の高い池で、太陽の光が水中に映り、ゆらゆらと揺れている。
ただ、綺麗だなぁとゆっくりも眺めていられない。
そう思っていると、池の水草の間にキラリと光るものが見えた。
あれかもしれない。
水草に絡んでいるものを私は手に掴み、水面へとあがろうと思ったのだけれど、ドレスが重たくてうまくあがれない。
しかも……空気が、足りないっ。
やはり度胸と無謀は紙一重か!
私の口から、ブクブクと泡が零れ落ちていった。
「公爵家では、どのように、過ごしているのですか?」
「普通でしゅ」
「普通……ご家族でそろって過ごされているのですか?」
「え? いいえ……あたちは一人で」
「一人で……では侍女が側で世話を?」
「うぇーと、いえ」
「では、ずっとお一人なのですか?」
瞳を真っ直ぐに見つめられ、私はその瞳の色に内心驚いていた。
この子は、こんなに大量の悪霊を背負いながら、おそらく私の心配をしてくれているのだ。
私は栄養失調が続いていたからミーナよりも遥かに小さい。
そして、今回、それなりに綺麗な衣装を身にまとっていると思っていたが、ミーナと比べると見劣りするのは確かだ。
それを見て、心配してくれているのだろうか。
とにかく、優しい子だ。
まだ七歳だというのに、私のことを思いやってくれるのかと、ちょっと感動を覚えた私は、このいい子には悪霊は似合わないなと、早々に祓ってあげることにした。
出きるならば、王族の方々皆祓ってあげたいのだが、さすがに近くに行かなければ祓うのは難しい。
「一人じゃないれしゅ。だから、心配しないでくださいませ」
そう笑顔で告げ、気づかれないほど小さな声で呟きながら、私は手で印をこっそりと結んだ。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前……滅ちゃれやがれ」
次の瞬間、悪霊達が一斉に悲鳴を上げた。
『ぎゃぁぁぁぁあ!』
『なんだこれぇぇぇぇ』
『浄化されるうぅぅぅ……あ……』
そして黒い煙を巻き上げるようにして一瞬で滅っされ、そして光の中へと消えていった。
ふっ。我ながら最強過ぎるぜ。
「何かおっしゃいましたが?」
「ふぇ? あ、っくしゅん。くしゃみしただけれす」
危ない危ない。変なことを呟いていたと噂されたら、更に私の環境が悪くなってしまう。
私はくしゃみのふりをすると、慌てた様子でエトワール殿下が上着を貸して下さった。
「大丈夫ですか? これをどうぞ」
本当に優しい子すぎて、なんだか、微笑ましくさえ思えてくる。
「ありがとうしございましゅ」
肩にかけられた上着がとても暖かい。
エトワール殿下は、自らの肩に触れ、少し驚いた顔を浮かべている。
爽快感すごいだろうな。
あれだけ大量に乗っかっていたものがすっきりさっぱりなくなったのだから、今、かなり軽いはずだ。
驚き感動しているようなその表情は、大変子どもらしくて可愛らしい。
「みゃーん」
猫のプリシラが私の膝の上にひょいとのって、お前何者だというようにじっと見つめてくる。
これもまた大変可愛らしいので、手でそっとナデナデするが、霊なので触れない。
すると、そんな私の手をプリシラが、てぃ! と、いうように叩いた。
霊なので痛くない。
最高に大変可愛らしい。
プリシラは私の膝上から飛び降りると、 まるでついてこいというように、尻尾を振った。
そこで私は エトワール殿下に一つ提案をしてみた。
「しゅこし、散歩してみたいれす。だめれすか?」
すると、エトワール殿下は優しく微笑み立ち上がると私に手を差し出した。
「もちろん。さぁ、行きましょうか」
3歳児相手にすごく丁寧で、まさに王子様である。
悪霊がいなくなったことで エトワール殿下の顔色もかなり良くなった。
私はエトワール殿下の手を引きながら、プリシラの後に付いていく。
どこに案内するつもりなのだろう。
すると、庭の奥まったところに小さな池があった。
プリシラは池の手前で座ると、鳴き声をあげる。
「みゃーーーーーん」
え? まさか、池の中???
“行け”。いやいや、たしかに池だけれど“行け”といわれて行きますとはならない。
だが、プリシラから圧を感じる。
尻尾が、ターンっと地面を打つ。
ええええええ。
せめて一人の時であれば全裸になり泳いで取れるけれど……。
今?
だが、今を逃すと、この王城にこれるのはもう二度とないかもしれない。
女は度胸……いやむしろ、息とし生けるもの全ての生き物は、度胸でどうにか乗り切れることが多いのではないか。
度胸って万能薬か。
いや、無謀か……。
私は仕方がないと覚悟と気合いをいれると、小石につまずいたフリをした。
「あーーーれぇぇぇ」
大根役者である。それは自覚しているが押し通すしかない。
「え?」
勢いよく池に飛び込む私と、ぎょっとした顔のエトワール殿下との視線が重なる。
すまん。突然池に飛び込む危ない幼児で。
だが許してくれ。
そんな顔で見ないでくれ。
可愛いプリシラちゃんの為なんだ!
池の中に飛び込んだ私は、水中に何かないか探す。
プリシラが伝えたかったことはなんだろうか。
水中の中を泳ぐというよりも沈みつつ、周囲を見回す。
透明度の高い池で、太陽の光が水中に映り、ゆらゆらと揺れている。
ただ、綺麗だなぁとゆっくりも眺めていられない。
そう思っていると、池の水草の間にキラリと光るものが見えた。
あれかもしれない。
水草に絡んでいるものを私は手に掴み、水面へとあがろうと思ったのだけれど、ドレスが重たくてうまくあがれない。
しかも……空気が、足りないっ。
やはり度胸と無謀は紙一重か!
私の口から、ブクブクと泡が零れ落ちていった。
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