【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?

なか

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END-もう離さない-

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「ルーカス…何故…ここに」

「マリアンヌさん、僕が騎士になる前になにをしていたか知っていますか?」

私を抱きしめながらそう問いかけるルーカス
答えられないでいるとルーカスが答えてくれた

「僕は聖術師です、加護と癒しを得意とする魔法使い…」

「聖……術師?」

「ええ」

ルーカスが答えた瞬間
背後から数人の男達が武器を振りかざしたのが見える

「!?」

危ないと言いかけた所で固まってしまう
男達の武器はルーカスに届く事はなく、光の膜に阻まれたからだ

「ここに来たのも聖術です、あの石は召喚石…魔力を込めていて名前を呼ぶ事で僕をいつでも呼び出せる石です、マリアンヌさんにしか渡しませんが」

「ルーカス、お前は…一体」

「話は後にしましょう、もう毒は治療しましたよ」


言われて気づいた
先ほどまで全身に感じていた痛みはすっかり消えていた

「あと、マリアンヌさん!一つだけ」

「?………………!?」

突然、頭を小さく優しく叩かれた
痛くはない、優しいが怒っていると教えるための行為

「もう一人で抱え込まないでくださいね、誰かに頼ってください…あなたを心配する人が何人いると思っているんですか」


「ルーカス………………」


「あ、まだ残ってた!あの石、感情だけなら少しだけわかるんですよ」


ルーカスはいたずらっぽく笑う

「あとで聞かせてくださいね、マリアンヌさんの本当の気持ち」

「な…!?」


赤くなる私をルーカスは笑いながら
苦々しい表情のモハマド公爵の前へと進む

モハマド公爵は彼を見ながら問いかける

「貴様が聖術師なのは分かった、優秀なようだな、一つ提案しよう、私の下に来るといい…待遇は格別のものに…」

「いりません、僕はマリアンヌさん一筋です…それに…僕は騎士でありながらオスカー様秘匿の王宮聖術師としても仕えているんですよ」

「な!?」

「もう貴方は全部終わっているんで教えてあげます、すでにオスカー様はあなたが自演で盗賊団を雇っていた証拠も掴んでいる、捕えた私兵がしゃべりましたよ信頼されてないんですね、すでに領地は封鎖、私兵は投獄されていています」

「う、うそだ…」

「いえ、うそじゃないです…あと少し…あと少し早ければマリアンヌさんにこんな嫌な想いをしてもらわずに済んだのに……」

「お、お前たち!こいつを殺せ!まだ、まだ金ならある!!」

モハマド公爵の掛け声に、金に目がくらんだ野盗達は武器を手に走り出す
皆が一斉にルーカスへと向かって

「モハマド公爵、最後に一つだけ…僕は笑っているんですけど」

ルーカスの笑みは突然消えて
冷たい表情に変わる

「いまは、怒りで我慢できそうにないんですよ」


忠実な粛清オネストクリナップ


空より無数の光の矢が降り注ぎ、野盗達はなすすべもなく倒れていく
断罪の矢は野盗を慈悲なく、一瞬で壊滅させてしまった
ルーカスは悠々と降り注ぐ矢の中を歩き、モハマド公爵へと向かう

魔法とは本来、ここまで大きな威力はない
それ故に剣の力が全てであった、だが目の前のルーカスは私の知っている魔術師など比べようのないほどの力を有していた

「なんだ…これは……お前は、なんだ…」

「言ったじゃないか、僕は聖術師、神に愛された人間です」

そう言って、ルーカスは一切の躊躇なく
光の矢をモハマド公爵へと当てた


「がぁぁぁぁぁ!!!だ、誰か!!誰か!!」

苦しみ、もがくモハマド公爵の前にとある幻覚が見え始めた
それは今まで自身が手にかけてきた人々の恨み、憎しみ、怒り
それら全てがモハマド公爵を傷つける、地獄のような苦しみを精神世界の中で永遠に味わい続ける
後悔はすでに遅く、ただひたすらに痛みにうごめきながら

モハマド公爵は倒れた


「死んだ…のか?」

私の問いかけにルーカスは首を振る

「いえ、死んではいません彼は正式に国で罪を与えねばならない、ですが……彼はもう生きている間、地獄のような幻痛に苦しむ事になりますが」

あっさりと、一瞬で終わった惨状が未だに信じられない
私一人で悩みすぎていたのだろう

誰かに話せば解決する事を勝手に悩んで苦しんで

「さて、マリアンヌさん」

「!?」

彼は近づき笑う、顔が近くなる

「さっきいった事、忘れてないですよね?」

「………」

私の胸が高鳴る、こいつは答えを知っていて聞いているのだろう
顔が赤くなっているのも、きっとばれている…目をそらそうとすると顔に手を当てられ
強引に目が合わせられる


「僕が先に言いましょうか?僕はマリアンヌさんが好きです、初めて見た時からあなたを一人にしたくないと思ってここまできた」


唇が当たりそうになるほど顔が近くなる
お互いの吐息が感じられるほど

「わ、私も…ルーカス…お前が………………」

「はい、何でしょうか?」

きっと、言うまで許してくれないのだろう
なら、後悔した分の気持ちを全て、全て伝える
溢れる言葉全てを使って

「私もお前が好きだ、お前の優しさ全てが好きになった………………初めてなんだ、こんな気持ち………だから教えてくれ、どうすればいいのか!!」

言った瞬間、ルーカスの唇が私の唇と重なる

抱きしめられて、そのまま強く、強く…離さないように
私も、その想いに、気持ちにこたえたくて手を回す

嬉しかった
私のこの感情を伝えられる事が、私を好きになってくれた事が


長い、長い抱擁の後、お互いの顔は赤くなりながら見つめ合う

「マリアンヌさん、もうあなたを絶対に一人で無茶させない……僕とずっと一緒にいてください」

私は、笑顔で応えた
彼の気持ちに精一杯こたえたくて

「私も、ずっとお前といたい……もう一人にしないでくれ」


私達は再び唇を重ねた
知らせを受けて騎士団が来るまでの間、お互いの愛を確かめ合うように


雪がゆっくりと降り始めた
あの日のように寒く冷たい雪が

けど、もう寒くない…
暖かさに嬉しくて…涙が流れた





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あれから約2年が経った

モハマド公爵は当然ながら死罪となった
刑が執行されるまでの間、幻覚痛に苦しみ、後悔し続けていたようだ


オスカー様は今回の責任を追及されたが、モハマド公爵は前王により爵位を受け取った貴族である
むしろ前王の残した負の遺産を絶やした人物だ

彼はその後も平和への追及を止めることはなく
いつしか責任を追及するものはいなくなっていた


ルナ様は今でも私が護衛している
そこは変えられないから

ちなみにモハマド公爵との一件は今でも秘密にしている、オスカー様にも頼んで
これは私のわがままだ、ルナ様には心配してほしくない

だが、次に困ったことがあれば…私はルナ様にも頼るだろう
一人で抱え込むのはもうやめた




あれから変わった事がある

それは私の薬指には指輪がはめられている事だ

彼はあれからモハマド公爵の孤児院の責任者となった
本来の優しさもあり、子供達からの人気も高い

そして、私との時間も大切にしていてくれている
私の愛する人だ


ルナ様の護衛が終わり、帰りの道中を彼と出会う
明かりを持った彼はあの日と同じ笑顔で言ってくれる

「マリアンヌ、帰ろうか」

「ああ…ルーカス」

「違うでしょ?」

「あ、あぁ……はい…あなた」


まだ呼ぶのが恥ずかしい言葉に彼は微笑みながら手を握って一緒に歩く

きっと慣れるだろう

これも幸せの一つだ









剣しか知らなかった、不器用な私の
幸せの始まりの1ページ

これから積み上げていくのだろう
このページを増やしていこう、これからずっと





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