【完結】五年苦しんだの、次は貴方の番です。~王太子妃は許す気はありません~

なか

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プロローグ

「フィリア、頼む」

 私の名前を呼びながら、彼が両膝を地面に落とす。
 真紅の髪が揺れ、碧色の瞳が乞うように私を見上げていた。

「ようやく……この時がきたのね」

 彼に聞こえぬように、小さく呟く。
 胸がはち切れんばかりの喜びを抑え、私を見上げている夫––エリクを見つめる。

「俺にはもうこれしかない、聞き入れてくれ」

 待望の、待ち焦がれた時がやってきた。
 ハーヴィン王国の王太子を務めるエリク。

 優秀で民に期待される彼と結婚していた私は、周囲からすれば羨望の瞳で見られる存在だった。
 だが……事実はまるで違う。

「君に謝罪もする。だから……頼む」

 ただ一つの事実は、彼は私を利用し続けた。
 悪評、屈辱の末に押さえつけ、女性としての尊厳すら奪われた。
 私の人生を踏みにじってきた。

 だからこそ……今、この瞬間を待望していた、切実に望んでいた。
 さぁ、言いなさい。
 私が望む言葉を––––

「頼む。俺と離婚してほしい」

 あぁ……
 この日をどれだけ待っていたか、どれだけ願っていたか。
 実り叶ったこの瞬間、頭を落として頼み込むエリクに、私は口元に微笑みを刻む。
 
 これまで苦しんできた日々、約五年。
 それがようやく報われそうだ。

 でもね、許す気なんてない。
 さぁ、エリク。
『次は貴方の番です』
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