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16話
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リアの父––––ズカスの身柄をヴィオラが押さえた同時刻。
王宮内の騎士団駐屯地に、一人の男性が迷いもなく入っていく。
騎士達の視線を受ける中、制止されぬのは彼が公爵家の当主であるからだ。
そんな彼は、迷いなく騎士団長の待つ応接室へ入る。
「話があると手紙を受けたが、何用でしょうか。ゼイン公」
「受け入れて頂き感謝する。リエン騎士団長殿」
王家に仕える騎士団長––リエンへと、ヴィオラの父となったゼインが対面する。
互いに交える視線の中、本題をゼインが切り出した。
「簡潔に言おう。リエン殿はこのまま、王国が衰退していくのを黙っている気か?」
「それは、どういった意味でしょうか」
「私の息子が殺されかけた。まだ齢五歳にも満たぬ子供をだ」
「……」
「先日、廃妃となったヴィオラを娘に迎えた事で、貴族家が脅迫のために息子を狙った事まで分かった。この異常、貴殿なら分かるはずだ」
騎士団長のリエンは目線を下げ、拳を握る。
悔しい程の失態だった。
貴族家が腐敗し始めていることは知っていた。
しかし断ずる明確な証拠がなく、手をこまねいていた間に……幼い子供すら容易く狙うようになっていた。
一国の規律を重んじ、誰もが安心して暮らせる世を築く信念を持つ騎士団としては、ゼインの報告は情けなさが露呈するかのような羞恥だ。
「…………子供は無事であったか。ゼイン公」
「あぁ、息子のルカを守ってくれたのも。娘となったヴィオラなのだから」
「っ! ヴィオラ様が?」
ヴィオラの名を聞いて、リエンの目が見開く。
同時に、自らの情けなさを更に痛感した。
彼女が王妃時代、騎士団は予算増額や人員補充などの手厚い庇護を受けた。
なのに、廃妃という決定事項を覆せなかった。
守る事も出来なかった。
なのにヴィオラは、いまだに貴族家の悪意から騎士団以上に身内を守る。
それは剣を握って生きる騎士団にとって、力不足を痛感するには充分だ。
「そうか……あの方が……」
「なぁ、リエン殿。ヴィオラは人並み外れた力を持ち、貴族家と相対している」
「な……それは本当ですか? 王妃であったヴィオラ様にそんな力など」
「あるんだよ。理由はよく分からない。ただ……理由などどうでもいい。私が憂いているのは……戦場に身を置いてもいない彼女が、どうしてあんな力を身につけねばならなかったのかが重要だ」
「……」
「本来ならば子を抱いていたかもしれない。花を愛でていたかもしれない。ドレスに着飾り、令嬢として不安なく生きていく道だったはずだ」
本来の貴族令嬢ならば、それが当たり前。
ましてや王妃に、拳を握る人生などないはずだった。
だからこそ、ゼインはヴィオラが身に着けていた力に悲しみを抱く。
「彼女が身を守る術を身に着けねばならなかったのは……ひとえに我らが力不足であるからだ」
「……それは痛感しているよ、今まさにな」
ゼインの言葉に、リエンは文句もなく頷く。
本来、守るべき相手が……自分達よりも果敢に立ち向かっている。
悔しくないはずがない。
「ゼイン公……この話を俺にしたのは、何か手があるというのか?」
「あぁ」
「教えて欲しい。出来る事は協力する。こんな腐敗した世の中にしておいて説得力などないが、これでも国の規律を守るための矜持はあるつもりだ」
「分かっている。貴殿の性格ならそう言うと分かっていたからこそ。こうして来たんだ」
ゼインは言葉を吐きながら、リエンの目をまっすぐに見つめる。
そして、言葉を続けた。
「現在、ここまで貴族の腐敗が進んだのは……ひとえに貴族院が王家に並ぶ力を得たからだ」
「……」
この国における貴族院とは、貴族が所属して王家の決定、政策などについて監視、提言を行う事ができる組織。
元は王家の力が一極集中する事を避けるための機関だが、今はそれが王家を凌ぐ影響力となっている。
「現にルーク陛下は、貴族院の提言する増税案や悪法を受領してきた。それをヴィオラが止めていても無視してな」
「あぁ、分かっている。特にリア嬢が貴族院の提言に賛成意見を述べることから、ルーク陛下は貴族院に傾いているとも」
その腐敗の構図に、二人は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。
リア嬢と、貴族院が繋がっているのは目に見えて明らか。
それに気付けず、傀儡となっているルーク陛下に呆れながらも話を続けた。
「そして貴族院の代表は現在はムルガ公爵だ、彼の影響力は国王を凌ぐやもしれぬ。この貴族院の権威はもはや危険水域に達している」
「分かっている……しかし、此度のご子息の暗殺未遂の疑いでは貴族院まで切り崩すのは難しい。仮にムルガ公爵を捕らえたとて、頭が変わるだけで腐敗は収まらない。カビは消えない」
「だからこそ組織の一新が必要だ」
「っ!」
「今やヴィオラは公爵家令嬢に戻った。だから私は彼女に当主を譲り、ムルガ公爵を引きずり下ろした貴族院の代表にする」
ゼインの力強い言葉に、リエンは顔を上げる。
確かにそれならば腐敗した貴族達への刑罰の執行、制御なども可能となる。
王妃時代の活躍を知る団長にとって、ヴィオラが貴族院の代表となる事に否定意見はない。
しかし……あまりに無謀だとも思えた。
「貴族院の代表には、貴族からの過半数の賛成票が必要だ。難しいぞ」
「いや、この国の未来を憂いている貴族は多い。加えてヴィオラが無実の罪で王家より処罰を受けた事実が明るみになれば、同情票は容易く獲得できる」
確かに、ヴィオラが無実であると周知できれば可能性はある。
民からの同情、支持も高まれば貴族院も無視できぬ。
「リエン団長、次代の者達に国を引き継ぐためにも、我ら大人の役目を果たさないか」
ゼインの力強い瞳に、リエンは驚きすら感じる。
リエンが知る彼は決して勇猛な人間ではなく……どちらかといえば社交界で見かけても、隅にいるような人間だった。
しかし、今彼が見せる瞳の強さは別物だ。
「今からムルガ公の元へ向かうため……騎士団長である貴殿に協力して欲しい事がある」
元凶でもあるムルガ公爵を裁くに値する罪証を持つなら……騎士団長自らが、逃さず捕らえて勾留まで迅速な対応をできる。
それこそ……ムルガ公が他の貴族に対策を講じる前にだ。
リエンは理解したからこそ、この千載一遇の好機に騎士団長として頷きで返しt。
「分かりました。私も騎士団長として貴方に手を貸しましょう」
「あぁ、大人として……私らも役目を果たそう。リエン騎士団長」
「確かにそうですね。騎士団としても……ヴィオラ様から受けた恩を、返さぬままでは終われません……それに」
リエンは、自らの息子であり……ヴィオラと共に着いて行く選択をしたハースへと思いを馳せながら。
ゼインへと頷いた。
「息子にも、ちゃんと父親の背中を見せてやりたいですから」
「私も同じだよ、リエン団長。娘に見合う父になりたいんだ」
二人は互いの覚悟を統合し、ムルガ公爵の罪を裁くために動く。
貴族の腐敗を正すため……そしてなによりもその根源は、恩のあるヴィオラへと報いるためだった。
王宮内の騎士団駐屯地に、一人の男性が迷いもなく入っていく。
騎士達の視線を受ける中、制止されぬのは彼が公爵家の当主であるからだ。
そんな彼は、迷いなく騎士団長の待つ応接室へ入る。
「話があると手紙を受けたが、何用でしょうか。ゼイン公」
「受け入れて頂き感謝する。リエン騎士団長殿」
王家に仕える騎士団長––リエンへと、ヴィオラの父となったゼインが対面する。
互いに交える視線の中、本題をゼインが切り出した。
「簡潔に言おう。リエン殿はこのまま、王国が衰退していくのを黙っている気か?」
「それは、どういった意味でしょうか」
「私の息子が殺されかけた。まだ齢五歳にも満たぬ子供をだ」
「……」
「先日、廃妃となったヴィオラを娘に迎えた事で、貴族家が脅迫のために息子を狙った事まで分かった。この異常、貴殿なら分かるはずだ」
騎士団長のリエンは目線を下げ、拳を握る。
悔しい程の失態だった。
貴族家が腐敗し始めていることは知っていた。
しかし断ずる明確な証拠がなく、手をこまねいていた間に……幼い子供すら容易く狙うようになっていた。
一国の規律を重んじ、誰もが安心して暮らせる世を築く信念を持つ騎士団としては、ゼインの報告は情けなさが露呈するかのような羞恥だ。
「…………子供は無事であったか。ゼイン公」
「あぁ、息子のルカを守ってくれたのも。娘となったヴィオラなのだから」
「っ! ヴィオラ様が?」
ヴィオラの名を聞いて、リエンの目が見開く。
同時に、自らの情けなさを更に痛感した。
彼女が王妃時代、騎士団は予算増額や人員補充などの手厚い庇護を受けた。
なのに、廃妃という決定事項を覆せなかった。
守る事も出来なかった。
なのにヴィオラは、いまだに貴族家の悪意から騎士団以上に身内を守る。
それは剣を握って生きる騎士団にとって、力不足を痛感するには充分だ。
「そうか……あの方が……」
「なぁ、リエン殿。ヴィオラは人並み外れた力を持ち、貴族家と相対している」
「な……それは本当ですか? 王妃であったヴィオラ様にそんな力など」
「あるんだよ。理由はよく分からない。ただ……理由などどうでもいい。私が憂いているのは……戦場に身を置いてもいない彼女が、どうしてあんな力を身につけねばならなかったのかが重要だ」
「……」
「本来ならば子を抱いていたかもしれない。花を愛でていたかもしれない。ドレスに着飾り、令嬢として不安なく生きていく道だったはずだ」
本来の貴族令嬢ならば、それが当たり前。
ましてや王妃に、拳を握る人生などないはずだった。
だからこそ、ゼインはヴィオラが身に着けていた力に悲しみを抱く。
「彼女が身を守る術を身に着けねばならなかったのは……ひとえに我らが力不足であるからだ」
「……それは痛感しているよ、今まさにな」
ゼインの言葉に、リエンは文句もなく頷く。
本来、守るべき相手が……自分達よりも果敢に立ち向かっている。
悔しくないはずがない。
「ゼイン公……この話を俺にしたのは、何か手があるというのか?」
「あぁ」
「教えて欲しい。出来る事は協力する。こんな腐敗した世の中にしておいて説得力などないが、これでも国の規律を守るための矜持はあるつもりだ」
「分かっている。貴殿の性格ならそう言うと分かっていたからこそ。こうして来たんだ」
ゼインは言葉を吐きながら、リエンの目をまっすぐに見つめる。
そして、言葉を続けた。
「現在、ここまで貴族の腐敗が進んだのは……ひとえに貴族院が王家に並ぶ力を得たからだ」
「……」
この国における貴族院とは、貴族が所属して王家の決定、政策などについて監視、提言を行う事ができる組織。
元は王家の力が一極集中する事を避けるための機関だが、今はそれが王家を凌ぐ影響力となっている。
「現にルーク陛下は、貴族院の提言する増税案や悪法を受領してきた。それをヴィオラが止めていても無視してな」
「あぁ、分かっている。特にリア嬢が貴族院の提言に賛成意見を述べることから、ルーク陛下は貴族院に傾いているとも」
その腐敗の構図に、二人は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。
リア嬢と、貴族院が繋がっているのは目に見えて明らか。
それに気付けず、傀儡となっているルーク陛下に呆れながらも話を続けた。
「そして貴族院の代表は現在はムルガ公爵だ、彼の影響力は国王を凌ぐやもしれぬ。この貴族院の権威はもはや危険水域に達している」
「分かっている……しかし、此度のご子息の暗殺未遂の疑いでは貴族院まで切り崩すのは難しい。仮にムルガ公爵を捕らえたとて、頭が変わるだけで腐敗は収まらない。カビは消えない」
「だからこそ組織の一新が必要だ」
「っ!」
「今やヴィオラは公爵家令嬢に戻った。だから私は彼女に当主を譲り、ムルガ公爵を引きずり下ろした貴族院の代表にする」
ゼインの力強い言葉に、リエンは顔を上げる。
確かにそれならば腐敗した貴族達への刑罰の執行、制御なども可能となる。
王妃時代の活躍を知る団長にとって、ヴィオラが貴族院の代表となる事に否定意見はない。
しかし……あまりに無謀だとも思えた。
「貴族院の代表には、貴族からの過半数の賛成票が必要だ。難しいぞ」
「いや、この国の未来を憂いている貴族は多い。加えてヴィオラが無実の罪で王家より処罰を受けた事実が明るみになれば、同情票は容易く獲得できる」
確かに、ヴィオラが無実であると周知できれば可能性はある。
民からの同情、支持も高まれば貴族院も無視できぬ。
「リエン団長、次代の者達に国を引き継ぐためにも、我ら大人の役目を果たさないか」
ゼインの力強い瞳に、リエンは驚きすら感じる。
リエンが知る彼は決して勇猛な人間ではなく……どちらかといえば社交界で見かけても、隅にいるような人間だった。
しかし、今彼が見せる瞳の強さは別物だ。
「今からムルガ公の元へ向かうため……騎士団長である貴殿に協力して欲しい事がある」
元凶でもあるムルガ公爵を裁くに値する罪証を持つなら……騎士団長自らが、逃さず捕らえて勾留まで迅速な対応をできる。
それこそ……ムルガ公が他の貴族に対策を講じる前にだ。
リエンは理解したからこそ、この千載一遇の好機に騎士団長として頷きで返しt。
「分かりました。私も騎士団長として貴方に手を貸しましょう」
「あぁ、大人として……私らも役目を果たそう。リエン騎士団長」
「確かにそうですね。騎士団としても……ヴィオラ様から受けた恩を、返さぬままでは終われません……それに」
リエンは、自らの息子であり……ヴィオラと共に着いて行く選択をしたハースへと思いを馳せながら。
ゼインへと頷いた。
「息子にも、ちゃんと父親の背中を見せてやりたいですから」
「私も同じだよ、リエン団長。娘に見合う父になりたいんだ」
二人は互いの覚悟を統合し、ムルガ公爵の罪を裁くために動く。
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