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ランドルフside
授業の終わりを告げる鐘の音を聞きながら、俺は一目散に空き教室へと進んでいき、誰も見ていない事を確認してから入室して奴を待つ。
窓のカーテンは閉じられており、真っ暗なため少しだけ隙間を空けると有明の空程の明るさとなる、光が差し込むと、この空き教室の埃がよく目立つ……汚い場所だ。
「奴に協力を求めるのはやはり気が乗らないな…………」
俺としてもあまり気が乗らない策ではあったが、現状では最もデイジーを退学に追い込める可能性のある策はこれしかない、そのためにも俺が呼び出したとある男の協力が必要だった。
「ちっ……それにしても遅いな、何をやってる」
俺は一刻も早くローザと会って関係を深めたいというのに、暫し待っても奴は来ない……これが俺の苦手な理由でもある、奴は王子の俺でさえも待たせる傲慢な所がある。
苛立ちながらも頼れる者が奴しかいないために我慢して待っているとようやく教室の扉が開かれる。
「お待たせしましたなランドルフ殿……俺に頼みとは何事ですか?」
奴は少しの詫びと共に空き教室へと入り、汚れた椅子にハンカチを引き、汚れないように腰掛ける…その所作や態度に俺を待たせていたという謝罪の意志は一切含まれていない事に苛立が、これもいつもの事だと自分に言い聞かせ王子として寛容な心で許す事にした。
「アイザック…急な呼び出しだが来てくれて感謝している、頼みの件だが」
俺の言葉を遮るようにアイザックは手で制すると、プラチナに艶めき輝く髪を撫でながら端正な顔立ちで笑みを浮かべ、俺に話しかける、俺が女性であったなら頬を染める程の魅力を持つ男だが生憎男色ではない…。
こいつは俺と並ぶ美丈夫などと言われているが、不愉快極まりない…この学園でもこの国でも一番の男は俺だけでいいのだから。
「頼みの件、分かっているともランドルフ王子!いよいよ俺をデイジー嬢と会わせてくれるのだろう!」
遠からずも当たっている、元より俺がアイザックを苦手な理由でもあるのだから当然だ…アイザックは傲慢な性格で自分の婚約者には相応のレベルが必要だと考えている、故にこれまでアイザックに婚約を迫った女性達は皆が振られて悲しむ結果になっている、そんな男が目を付けたのは長年に渡って王妃教育を受けていたデイジーだ…公爵家のアイザックは俺とデイジーが婚約関係だった事を知る数少ない人物だ。
奴は何故かやたらとデイジーに会いたがっている、俺が思うに王妃教育を受けた彼女を口説き、自身の妻としようとしている……そんな大胆な考えを持っている男をなぜ俺や王家が放置していたのか……それはアイザックがこの国の公爵家の令息であるからだ…アイザック・マグノリア公爵家…この国の軍事の数割を握る有力貴族であり、王子の俺でさえ迂闊な扱いはできない。
だが、今回はこのアイザックの傲慢さが俺の救いになった。
「その通りだ、アイザック……今までデイジーと会うことを控えて貰っていたがもう結構だ」
「ほ!本当か!ランドルフ王子!!やっとだ………しかしなぜだ?今までは頼んでも会うことを止めきたのに」
「これは、まだ内緒の話だがな?デイジーはどうやら他の男と遊んでいる噂があるのだ」
「っ!!な………」
言葉を失っているアイザック、当然だろう俺の出まかせの噓だ…だが噂と言って明言は避けている、噓がばれても問題がないようにな。
「信じられないだろう?それでお前に頼みがある、デイジーと接触してお前から口説いて欲しい…噂が真実であれば見目麗しいお前になびかぬはずがない」
「………なるほど、それで俺に頼んでいたのだな…にわかには信じられない…王妃教育を受けた者だぞ?真実であれば幻滅してしまうな……」
「アイザック、信じられない気持ちもわかる…だが真実は分からない、頼めるか?」
「分かった…俺もその噂の真偽を確かめたい、早速デイジーと会ってくる」
「そうだ、くれぐれも俺の名を出さないでくれ、繋がっていると知れば警戒されるだろう?」
「あぁ、もちろんだ!」
アイザックは頷き立ち上がり、空き教室の外に誰もいない事を確かめてから颯爽と出ていく。
残された俺は拳を握って思惑の成功に喜び打ち震えていた。
これほど上手くいくとが思わなかった!アイザックは疑いもなく引き受けてくれたのは助かった……きっと王妃教育を受けていたデイジーが気になっていたからこそ、噂の真偽を自分自身で確かめたかったのだろう。
俺に捨てられたデイジーが復讐を考えているのならアイザック程の協力者はいない、俺の首を狙える権力者はこの国ではアイザックのマグノリア公爵家以外にいない、故に彼の口説きにあっさりとなびくに違いない。
そうなれば俺の思う壺だ、デイジーが俺に捨てられたと知らないアイザックはその時点で軽い女に見えるデイジーに幻滅して捨ててしまうだろう……再び捨てられたデイジーが耐えられるはずがない!心を病んで退学に一直線だ。
「完璧だ、我ながら………最高の策だ…」
男性としては悔しいがアイザックは見目が良く魅力的だ、女性としては手放させないだろう、そして俺への復讐を考えていればアイザック程の権力者は喉から手が出る程の協力者……デイジーがなびかぬ理由がない。
「あぁ………これで俺はローザと愛しい時間を過ごす事ができそうだ………迷いもなく過ごせる学園生活、そして彼女を妻に迎えた夜…楽しみばかりだ」
朝に悩んでいた事などすっかりと忘れて、俺は輝かしい未来にこぼれる笑いを止める事は出来なかった。
授業の終わりを告げる鐘の音を聞きながら、俺は一目散に空き教室へと進んでいき、誰も見ていない事を確認してから入室して奴を待つ。
窓のカーテンは閉じられており、真っ暗なため少しだけ隙間を空けると有明の空程の明るさとなる、光が差し込むと、この空き教室の埃がよく目立つ……汚い場所だ。
「奴に協力を求めるのはやはり気が乗らないな…………」
俺としてもあまり気が乗らない策ではあったが、現状では最もデイジーを退学に追い込める可能性のある策はこれしかない、そのためにも俺が呼び出したとある男の協力が必要だった。
「ちっ……それにしても遅いな、何をやってる」
俺は一刻も早くローザと会って関係を深めたいというのに、暫し待っても奴は来ない……これが俺の苦手な理由でもある、奴は王子の俺でさえも待たせる傲慢な所がある。
苛立ちながらも頼れる者が奴しかいないために我慢して待っているとようやく教室の扉が開かれる。
「お待たせしましたなランドルフ殿……俺に頼みとは何事ですか?」
奴は少しの詫びと共に空き教室へと入り、汚れた椅子にハンカチを引き、汚れないように腰掛ける…その所作や態度に俺を待たせていたという謝罪の意志は一切含まれていない事に苛立が、これもいつもの事だと自分に言い聞かせ王子として寛容な心で許す事にした。
「アイザック…急な呼び出しだが来てくれて感謝している、頼みの件だが」
俺の言葉を遮るようにアイザックは手で制すると、プラチナに艶めき輝く髪を撫でながら端正な顔立ちで笑みを浮かべ、俺に話しかける、俺が女性であったなら頬を染める程の魅力を持つ男だが生憎男色ではない…。
こいつは俺と並ぶ美丈夫などと言われているが、不愉快極まりない…この学園でもこの国でも一番の男は俺だけでいいのだから。
「頼みの件、分かっているともランドルフ王子!いよいよ俺をデイジー嬢と会わせてくれるのだろう!」
遠からずも当たっている、元より俺がアイザックを苦手な理由でもあるのだから当然だ…アイザックは傲慢な性格で自分の婚約者には相応のレベルが必要だと考えている、故にこれまでアイザックに婚約を迫った女性達は皆が振られて悲しむ結果になっている、そんな男が目を付けたのは長年に渡って王妃教育を受けていたデイジーだ…公爵家のアイザックは俺とデイジーが婚約関係だった事を知る数少ない人物だ。
奴は何故かやたらとデイジーに会いたがっている、俺が思うに王妃教育を受けた彼女を口説き、自身の妻としようとしている……そんな大胆な考えを持っている男をなぜ俺や王家が放置していたのか……それはアイザックがこの国の公爵家の令息であるからだ…アイザック・マグノリア公爵家…この国の軍事の数割を握る有力貴族であり、王子の俺でさえ迂闊な扱いはできない。
だが、今回はこのアイザックの傲慢さが俺の救いになった。
「その通りだ、アイザック……今までデイジーと会うことを控えて貰っていたがもう結構だ」
「ほ!本当か!ランドルフ王子!!やっとだ………しかしなぜだ?今までは頼んでも会うことを止めきたのに」
「これは、まだ内緒の話だがな?デイジーはどうやら他の男と遊んでいる噂があるのだ」
「っ!!な………」
言葉を失っているアイザック、当然だろう俺の出まかせの噓だ…だが噂と言って明言は避けている、噓がばれても問題がないようにな。
「信じられないだろう?それでお前に頼みがある、デイジーと接触してお前から口説いて欲しい…噂が真実であれば見目麗しいお前になびかぬはずがない」
「………なるほど、それで俺に頼んでいたのだな…にわかには信じられない…王妃教育を受けた者だぞ?真実であれば幻滅してしまうな……」
「アイザック、信じられない気持ちもわかる…だが真実は分からない、頼めるか?」
「分かった…俺もその噂の真偽を確かめたい、早速デイジーと会ってくる」
「そうだ、くれぐれも俺の名を出さないでくれ、繋がっていると知れば警戒されるだろう?」
「あぁ、もちろんだ!」
アイザックは頷き立ち上がり、空き教室の外に誰もいない事を確かめてから颯爽と出ていく。
残された俺は拳を握って思惑の成功に喜び打ち震えていた。
これほど上手くいくとが思わなかった!アイザックは疑いもなく引き受けてくれたのは助かった……きっと王妃教育を受けていたデイジーが気になっていたからこそ、噂の真偽を自分自身で確かめたかったのだろう。
俺に捨てられたデイジーが復讐を考えているのならアイザック程の協力者はいない、俺の首を狙える権力者はこの国ではアイザックのマグノリア公爵家以外にいない、故に彼の口説きにあっさりとなびくに違いない。
そうなれば俺の思う壺だ、デイジーが俺に捨てられたと知らないアイザックはその時点で軽い女に見えるデイジーに幻滅して捨ててしまうだろう……再び捨てられたデイジーが耐えられるはずがない!心を病んで退学に一直線だ。
「完璧だ、我ながら………最高の策だ…」
男性としては悔しいがアイザックは見目が良く魅力的だ、女性としては手放させないだろう、そして俺への復讐を考えていればアイザック程の権力者は喉から手が出る程の協力者……デイジーがなびかぬ理由がない。
「あぁ………これで俺はローザと愛しい時間を過ごす事ができそうだ………迷いもなく過ごせる学園生活、そして彼女を妻に迎えた夜…楽しみばかりだ」
朝に悩んでいた事などすっかりと忘れて、俺は輝かしい未来にこぼれる笑いを止める事は出来なかった。
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